55.平和
「今の攻撃を......かわした、だと」
王の後方。爆発の範囲から脱出し、レイは後ろへ回り込んでいた。
「......危なかったな。 ははっ」
ニヤリと歪む口元。レイのオーラが禍々しく揺らぐ。
「確実に仕留める為の【氷の魔手】......あの状態からどうやって」
その時王は気がつく。レイの背中から生えている一つの光る根に。
「そうか、なるほど。 レイ、お前は、お前の中にもセフィロトの一部が......」
「そう、これはセフィロトの種子を急速で成長させた物だ」
爆発を察知したレイは体内に埋め込んであった種子を瞬時に成長させた。
そしてその根を伸ばし、王の後方、爆発の範囲から逃れることに成功。
「......部屋中に張った氷には、セフィロトの防御を阻害する意図があったんだね」
氷に覆われた壁や床。セフィロトの力ならば壊せなくはないが、それでも数秒のロスが発生し防御が間に合わなかった。
しかし、レイは瞬時にその意図を理解し己の中にある【生命種】を芽吹かせ、玉座へと巻き付け移動した。
「次は、僕の番だね?」
「お前のばんなど、ない!!」
床へ叩きつけるように【ヴリトラ】を振り下ろす。そこから爆炎が巻き起こり、王の周囲を囲む。
炎による防壁、まるで竜巻のように王の姿を覆う。
(――僕が言うのもなんだけど、王の魔力量は凄まじいな......まだまだ余裕がありそうだ)
――だったら。
爆発により部屋が開けた。外部からのセフィロトを発動させることが容易になった今、引き出せるマナの上限が無くなった。
(......ダガーへマナを収束。 【生命種】を付与し、更にセフィロトからマナを供給......)
それは、王が氷塊に込めた魔力の数百倍のオーラ量。
真っ紅に染まったダガーは、まるで血に染まったかのようにドロドロとマナを垂れ流す。
そして、レイは。
左手を王に向け、右手に持つダガーを構えた。
――このダガーがあの炎の壁に接触すれば、纏うマナが一気に魔力を喰らいつくし根が成長する。
そしてそのまま王の肉体へ到達し、奴の中で更に成長。中から【生命種】に喰い尽くされ死に至るだろう。
『まるで、魔族』
「だから?」
『彼を殺して、君は君でいられる?』
「もう、散々殺してきただろーが」
『そうだね』
「......なにもしないくせに、いちいち出てくるな」
幼き幻影が消えた、その瞬間。
炎の渦から横薙ぎに【ヴリトラ】が振り抜かれた。
それをレイは僅かな動きでかわすと、ダガーを振りかぶった。
そして、動きが止まる。
「え?」
ダガーを振りかぶったまま、固まるレイ。
「......な、なんだ?」
激しく動揺する。それもそのはずで、王が目の前から消えどこにも見当たらず、そればかりか場所自体が見覚えの無い場所だった。
そう、レイは一瞬で場所を移動させられていた。
薄暗い、しかし広々とした洞窟の中。
「どこだ、ここは」
横を見れば、巨大な扉がある。
厳重に封印が施されているようで、札が無数に貼り付けられ、楔で覆われていた。
「それ、魔界に通じる扉ですよ」
「!」
聞き覚えのある声。
振り向くと大聖女が立っていた。
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