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54.絶命

 


 王が【ヴリトラ】の名を呼ぶと、部屋が氷で覆われた。


 危険を察知した僕はその数秒前にセフィロトを使い、オーラにより冷気から身を守ることに成功する。


(......出口が氷でかためられている。 そんなことしなくても逃げないけど)


 ――レイは逃走経路を遮断されたと解釈したが、それは違った。

 レイが逃げない事を前提にこの氷の領域は展開されている。


 王が出口を固めたのは、この触れれば氷つき砕けてしまうほどの冷気を外に漏らさない為。

 最大火力の大技を見舞うための用意である。


 ヒュン、パシッ!


 レイがダガーを回し、逆手に持つ。それを交差させ、臨戦態勢に入った。


(......どうせ、こういう展開になるんだったら、この部屋に入る前にアマテラスも殺しておけば良かったかな。 まあ、多少の手間が増えただけだけど)


「ふ、どちらが魔族かわからんな、レイ」


「?」


「気が付かんのか? おまえ、今、笑っておるぞ」


 はっ、とした。気がつけば確かに、広角をあげ、笑みを浮かべていた。


「戦いを......殺し合いを楽しんでいる。 好戦的な魔族となんらかわらぬではないか」


「なにを言っている? お前を殺せば未来が拓かれる......それが嬉しいだけだ」


 僕は床に張った氷を蹴り、駆け出した。


『嘘つき』


 現れた幼き幻影をよこぎり、王へと向かう。


 ――狙うは、王の首。


 レイは眼が良い。それにより、ある程度のスピードならば後の先をとれる対応力がある。


 ――王がゆらりと剣を片手で構えた。


 空いたもう片方の手で印を結ぶ。すると、王の眼前に巨大な氷塊が出現した。


(――魔力出力の速さが尋常じゃない。 流石は王......!)


 と、その時。氷の床からレイの脚を掴もうと手が伸びてくる。

 そこらじゅうから這い出てくる【氷の魔手】


 レイは空中で反転し、ダガーで全てを斬り粉々に無効化する。

 しかし、王はそれを狙いすましたかのように。


「――吹き飛べ」

「!!」


 ――王が氷塊を、炎を纏う【ヴリトラ】で斬りつけた。


 氷塊は超高温の剣で斬られた事により、一気に蒸発する。




 ――ズドオオオオーンンンッッ!!!




 氷塊に凝縮された王の魔力。それが瞬時に解放され、その爆発は王の間を半壊させる程の威力だった。







【ヴリトラ】

 使用者の魔力を強化し、刀身の属性を変える竜の魔剣であり、宝剣。

 イオリが喉から手が出るほど欲しがっている。






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