第1話 私、転生しました。
「これで……終わりだ……『フレイムアロー』!」
「グアアアアアッ! くっ、しかし、このままでは終わらせん!」
「……っ!?」
「お前も道連れだ、賢者!」
……私の人生も、ここで終わりか……。
でも、私の命1つで、世界が救われるのなら
本望だ。
……ああ、でも、最後に、妻と娘の笑顔を見たかった……。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
……懐かしい記憶だ。
……これは、私の死ぬ直前の記憶。
……私は、魔王を倒して欲しいと国王に頼まれ、自分の命を持って魔王を倒した……。
……あの後王国はどうなったのか、それと妻と娘……それが気がかりだ……。
……ん? 私は、死んだはずだよな。
なら、この意識はなんだ……?
死んだはずなら、目覚める事は無いはずだが……。
……私は目を開けようとした、しかし、目は開かない。
……そうだ、私は、魔力で周りに何があるか、みる事が出来るのだった。
……まだ使えるだろうか。そう思いながら、自分の魔力を空気中に広げた。
問題なく使えるようだった。
……なるほど、ここは、研究所のような場所で、私は……えっと、木? ……私は、苗木なのか?
何と、私は、苗木だった。
どうやら、あの後、苗木に転生したらしい。
……。
って、そんなバカな事があるのか!?
と、何回も確かめるが、私はどう見ても木だった。
……まあ、考えても仕方がない。と、私は周りの様子をもっと丁寧に確認してみた。
……私は苗木、そして、周りにも、同じような苗木がある事がわかった。
……しかし、それ以上の事が分からない。
……窓がひとつあり、ドアがある、加えて、私と同じような苗木。研究所のような雰囲気。
……ダメだ、何もピンと来ない。
そうだ、魔法は使えないだろうか。
魔力を薄く広げる事が出来るなら、前世で使っていた魔法も使えるのではないだろうか。
……ふとそう思った私は、どのくらい前世の力が残っているのか確かめるために、防御魔法を展開した。
……二重、三重、四重、五重………………。
お、こんなに魔法を展開できるのか。
それなら、魔法については問題ないな。
……待てよ、それなら、浮遊魔法を使えば、この部屋から抜け出せるんじゃないか?
窓はガラス張り、防御魔法を展開しながら突き破れば、死ぬ事はないはずだ。
……そもそも、何で今私が苗木になっているか、苗木ってどういう状態が死なのかは分からないが、まあそれは考えないようにして、取り敢えずここを抜け出して、王国に行ってみようと思った。
……苗木が国王と話せるのかは謎だが、現状、私が苗木になっている理由を知っていそうなのは、国王のみ。
国王は、生産系の魔法しか使えなかったが、全ての魔法の知識が、私以上にあった。
私が魔王を倒すまで、その知識で私を支えてくれたのだ。
魔王が、最後の嫌がらせで私の来世を苗木にする魔法を使った……とか、そういう可能性もある。
……だがもうこれ以上私が考えても何も分からないだろう。
冷静になればなるほど今の状況が分からない。
国王に会えるか会えないかはともかく、国王に会う事だけを考えて行動しよう。
私は防御魔法を展開しながら浮遊魔法を使い、助走をつけて窓を破壊した。
パリーンという音が聞こえると同時に、鬱蒼とした森が広がった。
どうやら、私がいた謎の施設は森の奥にあるらしい。
地面に、ほんの少し傾斜があったので、私は傾斜を下るように飛行を続けた。
……王国、王国は……。
しかし、進んでも進んでも鬱蒼とした森は続いている。
私は次第に疲れを感じ、少し休む事にした。
……しかし、苗木でも疲れって感じるものなんだな……。
いや、もしかすると、精神的なものなのか?
私はそんな事を考えながら、目の前に、鬱蒼とした森が、一部 だけ晴れている空間を見つけ、日に当たりながら休む事にした。
……苗木になった影響か知らないが、何となく日光が、人間でいた時より心地よく感じる気がする。
この調子で王国に行けるのか、不安でいっぱいだったが、日光の力か、段々眠くなってきたので、私は一旦眠る事にしたのだった。
読んでくださりありがとうございます。
面白い、続きが読みたいと思った方は、
下の☆☆☆☆☆からぜひ評価と、
ブックマークをよろしくお願いします。