第2話
次の日。学校行くのさえだるさを感じたが、どうせあと一月しかない人生。二月で遊びつくしたから、学生に戻るのも悪くないなと思ったので、向かうことにした。
そして、昼休み。僕は昨日彼女が言っていた言葉を思い出して、何となく屋上に向かった。別に昨日彼女が言っていたことを守らなくてもよかったと思う。けれど、どうせ暇だし「まぁ、いっか」と思う気持ちが僕のどこかにあった。
今日も、彼女は室外機の陰に隠れるようにして座っていた。
「あ、ホントに来たんだ」
「来いと言ったのはどこのどいつだよ」
「まさか、ホントに来るなんて思ってなかったから」
自分で言っといてずいぶんと無責任な女だ。僕は、深いため息をついて言った。
「で、呼び出しておいて何の用だ」
「うん。ただそこにいるだけでいい」
「は?」
何を言ってるんだこの女は。と思ってしまった。呼び出しておいてなんだ?
「いいから」と彼女は言った後、黙ってしまった。
このまま何も言わず帰ってもいいかなと思ったが、あと少ししかない命。騙された気持ちで過ごしてみるのもいいのかもしれない。そう思ったから彼女の言いなりになることにした。
一度黙ってしまってからはお互い喋ることなかった。予鈴が鳴り、彼女が教室へと消えるまでその静寂は続いた。帰り際、彼女はこう言った。
「明日も、よろしくね」
よろしくね。じゃねーよと内心思いながら、こう言った。
「ああ、わかったよ」
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それから3日が経った。あれから、昼休みになると僕は彼女と屋上で黙って過ごすようになった。さすがに、こうも続くと好奇心というものが人は湧くものだ。その日も、彼女は屋上にいた。室外機の陰に隠れるように、ひっそりと座っていた。
「やぁ、今日もだね」
と、彼女は言う。
「そうだね。平井楓さん」
彼女の名前を呼ぶと、彼女は少し驚いた顔をした。僕は、話を続ける。
「平井楓。2年5組。クラスのいや、学年の“マドンナ”と言われる存在。男女双方から憧れられる存在で、誰からも好かれるような性格の人間。こんなとこで何してるんだ?友達の下に行かなくていいんか」
僕が喋り終えると、彼女は少しため息をついてこう言った。
「知ってるんだね、私のこと。阪上優馬くん。どうやって調べたの?」
「なんだ、俺の名前知ってるんかよ。どうして…」
「質問に答えて」
話を遮られたことに、内心舌打ちをしながら返した。
「そりゃ、有名な人間なんだから、少し興味を持ってみればすぐに調べもつくさ。それより、僕の質問にも答えてほしいな」
そう言うと、彼女はすっと立ち上がり、僕をじっと見つめながらこう言った。
「そうね、私は『私が私らしく生きる』ためのお手伝いを人にお願いするためにここにいるの」
「へぇ、面白そうだね。誰がその手伝いやるの?」
と興味なさそうに聞くと彼女ははっきりとこう返した。
「それをあなたにやってほしいの」
そう、これが僕の人生最後で、一番濃かった一月の始まりであった。