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その15

 会場の大広間では、すでに翼と奏子、大地と史緒が歓談していた。

 翔太が見たところ、“新顔”が男性7人、女性5人いた。

 その中には、今日は匂いがあるという、例の彼もいる。

 翔太は、顔見知りに手を振り笑顔であいさつすると、ターゲットの彼に近づいて行った。


 すると和歌菜が翔太の前を遮った。

「私から紹介してよ」

「…ありがとうございます」

「私も気になってるのよ、真里菜が変なこと言うし」

 和歌菜は歩を速めた。


「蒼也さん、ちょっとよろしいかしら」

 和歌菜に声を掛けられた男は、満面の笑みで振り返る。

「はい」

「ご紹介したい方がいるの。こちら…」

「存じ上げております。清流旅館の高橋翔太さんですよね?」

「あら、翔太くん、有名人なのね」微笑む和歌菜。


「一流企業の若社長はんにご承知おきいただけてるとは思いませんでしたわあ」

 多治見蒼也にググっと近寄り、両手で彼の右手を握る翔太。

「何でまた、ご存じなんですやろ? まれに雑誌の取材なんぞ受けることもありますけど、五代目が受け取りますさかいに」


「先日、会社の慰安旅行に最適な旅館を探して、旅館巡りをしていたんですよ。その時にお見掛けして。僕と同い年くらいなのにテキパキと取り仕切っていらっしゃって。それで宿の方にお聞きしておいたんです」

「それはまた、ありがたいことですわ。ご選定いただきました際には勉強させてもらいますさかいに」

 満面の笑みで蒼也の手を強く握る翔太。


「僕の手から何かわかりましたか?」微笑む蒼也。

「ああ。失礼いたしました」手を離す翔太。「ラッキーボーイさんやいうのが、わかりましたわ」

「どんなラッキーをもたらすのかなあ」蒼也が笑う。

「道しるべの相が出ておりますわ。あ…手相、顔相、占星術と四柱推命から易占、タロットまで、一通りのことは、たしなんでおりますんで」


「へえ…すごいなあ。占い師目指しているわけじゃないですよね?」

「女性客へのサービスですわ」大声で笑う翔太。

「じゃあ、占ってもらえますか? これからの運勢」

「あー、すんまへん。僕の範囲外ですわ」

 翔太は無表情にそう言うと、蒼也のもとを離れた。


 厳しい表情の翔太に駆け寄る紗由。

「どうしたの、翔ちゃん」

「あいつ、死んどるわ。今日は透明じゃなくて真っ黒や。生体のピカピカやない」

「は?」

「正確には、俺の知らん生き物や」

「多治見総研が彼に何かしたってこと?」

「奏子ちゃんの石の反応が見たいな…」


 そこへちょうど奏子が、龍と翼、二人の手を引いてやってきた。

「昔っから、その陣形変わらへんなあ」

 思わず吹き出す翔太に、奏子は告げた。

「一瞬だけ、SOS信号が出てたわ」

「僕の方は何も反応しなかった」翼が言う。


「私もまた匂いがしなくなっちゃったわ」

 大股で不機嫌そうに近づいてくる真里菜。

 後ろには大地と史緒もいる。

「大地くんは何か感じたか?」翔太が尋ねる。

「パーティールームに入る前に、具合が凄く悪そうな人の気配がしたのに、入ったら消えてたんだ」

「出たり消えたりなのね…」腕組みする紗由。


「このメンバーで固まってると、かえって注目されますぞ」

 ワゴンに飲み物と食べ物を乗せて押して来たのは充だった。

「充くん!」

“ボーイの格好似合いすぎ…”と全員が思った時、龍が咳払いした。

「そうだよ。あっちの女性陣もこっち見てる」


「恭介くん!」

“ボーイの格好似合わなすぎ…”と全員が思った時、再び龍が咳払いした。

「そうだね。ありがとう、二人とも」

 龍はシャンパングラスを手に取ると、女性陣のほうへと歩いて行った。


「奏子ちゃん、追いかけないの?」

 恭介が面白がって聞くと、奏子は恭介を見ずに答える。

「私もお見合いしてきます」

 背筋を伸ばし、新顔の男性陣のほうへ歩き出す奏子。

「えーっ!」

 全員が思わず大声で叫ぶ。

 龍を囲む女性陣と、自分たちのほうへ歩いてくる奏子に見とれている男性陣も、紗由たち一同に視線を向けた。

 

「今から作ってごらんに入れましょう」微笑む充。

「え? どうしたの、充くん」

 首を傾げる恭介の足を踏む充。

「いたっ!」

 充を泣きそうな目で見つめる恭介をよそに、充は手際よくシャンパングラスを重ね、3段のタワーを作った。


「まあ、きれい」史緒がうふふと笑う。

「あ。女の子たち、こっち来るわよ」紗由が言う。

「充くん…彼女たちナンパするつもりでしょ」真里菜が冷たい視線を充に送った。

「忍者は情報収集が仕事でござる」

 充はそう言うと、近づいて来た女性に一番上のシャンパングラスを渡し、その上に、どこから出したのか、赤いバラの花びらをふわりと乗せた。


  *  *  *



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