「強度行動障害(きょうどこうどうしょうがい)」とは
「強度行動障害」とは、自傷行為(自分の体を傷つける)や他害行為(他人に暴力を振るう)、激しい物壊し、激しいパニックなど、**ご本人の命や健康を脅かす行動、あるいは周囲の生活に深刻な影響を与える行動が、非常に高い頻度で起こるため、特別な配慮や継続的な支援が必要となっている「状態」のこと**を言います。
これは「病名」や医学的な「診断名」ではなく、厚生労働省が定義している福祉上の行政用語(状態像の区分)です。そのため、医師の診断書ではなく、自治体の福祉課などが「判定基準表」をもとに判断します。
とても大切なのは、これが単に「本人のわがまま」や「生来の脳の障害そのもの」だけで起きているのではない、という点です。
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## 1. なぜ「強度行動障害」の状態になるのか?
自閉スペクトラム症(ASD)や知的障害を持つ方は、もともと「自分の気持ちを言葉で伝えること」や「周りの状況を正しく理解すること」が苦手な特性を持っています。
そうした特性(光と影の、困難さの側面)を持つ人々が、以下のような「環境」にさらされ続けた結果、最後のSOSとして激しい行動が表れてしまいます。
* 自分のニーズ(伝えたいこと、苦しさ)を誰にも気づいてもらえない
* 変わらない「特性」を、周りから無理に変えようと強制される
* スケジュールが見通せず、次に何が起こるか分からなくて常に強い不安や恐怖を感じている
> **「困る人」は「困っている人」である**
> 周りから見て「困った行動をする人」に見える状態は、実は**「本人が環境に適応できず、何かに猛烈に困っているからこそ起こしてしまっている行動」**なのです。環境が安心できるものに変われば、穏やかさを取り戻すケースは少なくありません。
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## 2. 福祉制度における「加算」の仕組み
強度行動障害の状態にある方を支援するため、福祉の現場では「強度行動障害支援加算」という仕組みが設けられています。
これは、国や自治体から事業所(施設やグループホームなど)に対して、追加の資金(報酬)を支給する制度です。激しい行動に対応するためには、人手を増やしたり、刺激の少ない個室を用意したりといった「特別な配慮と環境整備」が絶対に欠かせないからです。
しかし、この制度には現在の福祉現場でいくつか大きな課題が指摘されています。
### 現状の3つの大きな課題
* **① 福祉の「情報戦」化**
「強度行動障害」という言葉や、その判定基準表があること自体が一般に広く知られていません。当事者家族が自らその名を探し当てて行政に直談判しなければ、裏メニューのように支援にたどり着けない、果てしない分かりにくさがあります。
* **② 横の連携がない「縦割り行政」**
家族だけで抱えきれず、命の危険を感じて警察や児童相談所に助けを求めても、「それはうちの管轄ではない」「家庭で解決してほしい」と梯子を外されてしまうことがあります。厚生労働省(福祉)だけでなく、文部科学省(教育)、国家公安委員会(警察)、医療などが一つの「チーム」として横につながって動く仕組みがまだ不十分です。
* **③ チェック機能の不足**
せっかく国から「特別な支援のための加算(補助金)」が施設側に降りていても、それが本当に現場の人員増加や本人のための環境整備に正しく誠実に使われているか、保護者や相談支援員に明確なフィードバック(いくらで何をしているか)が見えにくく、性善説に頼り切っているというブラックボックス化の問題があります。
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## 3. 社会全体で持ちたい「視点の引き出し」
強度行動障害は、専門家や施設の中だけで解決すべき問題ではありません。
私たちが街中や駅などで、激しくパニックを起こして叫んだり暴れたりしている人に出会ったとき、単に「危ない人」「迷惑な人(困る人)」と切り捨てるのではなく、「あの人は今、言葉にならない恐怖や不安のなかで、猛烈に『困っている人』なのかもしれない」という視点の引き出しを持つこと。
社会全体の理解が深まり、行政・医療・教育がチームとなって本人の「得意なこと(強みの側面)」を見出しながら環境を整えていくことが、本人と家族、そして社会全体の安全安心を守るために切実に求められています。




