エピローグ
◆ウラ◆
「あーあ、みんな帰っちゃったね」
ミラーハウス内に残された左右で色の違う靴を履き、うららはご機嫌だった。
「ふふ、わたしほどの幽霊だとね、大人の姿にだって変身できちゃうんだから。カチドキレンジャーのホラガイホワイトにだって、楽勝なのよ! かくれんぼは私の勝ちね! 最後までバレなかったもの!」
「そうだね。さすがはうらら。君には誰も敵いっこないよ」
優しい声をした男性が、小さい少女の頭を撫でる。
「ま、友達も増えたし、いっか。ね、くろさん、こむさん」
まだ幽体を維持できないのだろう。首からロープをぶら下げた体と、腹に穴が空いた体が、少女の後ろで蠢いている。
「これでもう、寂しくないだろう、うらら」
茶色いコートの男性が、カメラを手にして笑った。
次第に、警察が廃墟の遊園地に集まってきた。
明けない夜はないとでも言うように、
ひび割れた乾いた土に水が染み込むように、
夜の世界だった廃墟に光が、人が入り込んでくる。
ミラーハウスのひび割れた鏡が、警察官の姿を、光を、命を、まるで万華鏡のようにバラバラに、美しく、飾る。
その様を見守る4人の幽霊たちは、新たな来訪者に興味津々だ。
「さ、みんな。この人たちも一緒にさ、何して遊ぼっか?」
裏道カレイド…………完。
火曜日へ続く。
あとがき
どうもお久しぶりです。虹峰滲です。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。初めてのホラー小説を書いてみましたが、如何だったでしょうか。
この小説には殺人鬼と幽霊が出てきます。
殺人鬼は人を恨み憎しみ、未練タラタラですが、幽霊の方はというと、現世の悩みは持ち込まず、廃墟を悠々自適に過ごしています。
一方は生きていて、一方は死んでいる。その違いがあるのかもしれません。
生にしがみついているからなのか、生から見放されているからなのか。
生きている限り制約が付きまとうのは仕方が無いこと。それとどう折り合いを付けて生きていくかが肝要なのですが、優先順位は人それぞれですからね。
何のために生きているのか。生きていないのならば、気にする必要なんてないですよね。
今回のホラー企画には、もう一つ作品を投稿しています。そう、今回の謎解きツアーをドタキャンした二人は、そのもう一つの物語に関わっています。
そちらの方が文量も短く、勢い良く読めると思いますので、もし宜しかったらそちらの方も読んでいただけたら幸いです。まぁ、そちらはミステリーでもホラーでも無いような…笑
本文ともども長くなりましたが、この度は当UDLにお越しいただき誠にありがとうございました。
魅力的な設定で、書くのが楽しかったです。
この先、幽霊はもう出てこないと思いますが、まだこれからも檻原と沫河の寄り道は続きます。
ではでは。