表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/59

心霊カメラ

 私は、心霊現象とか心霊スポットといった、怖い話が大好きだ。

 友人が、新しくできた美味しいクレープ屋さんの話題で盛り上がる時、私は心霊写真特集の組まれた雑誌をめくり、休みの日には心霊スポット巡りを楽しむ。

 バラエティー番組の心霊特集だって、お笑い半分とわかっていてもきちんとチェックだ。


「ちょっと、叫んでばっかりいないで、ガンガン進みなさいよ!」


 廃墟となった心霊スポットに足を踏み入れたものの、一向に先に進まないタレントに腹を立てる。ああ、もし私があの場にいたなら、華麗に的確にリポートをしているものを!

 とまあ、こんなに心霊現象を愛してやまない私なのに、なぜだろう? 生まれてこの方、一度も幽霊というものに会ったことがないのだ。


「あそこのトンネルって、出るんでしょう?」

「昔あそこを通った時、肩が重くなってね、それからしばらく調子が悪くてさあ」

「えー、うそー。こわーいー」


 そんな話を聞きつければ、勢い勇んで噂のトンネルを訪れる。

 入り口でゆれる菊の花。暮れかかる空。不気味な音を立てる風。すごくいい雰囲気だ。

 ……だ・け・ど! 待てど暮らせど怪しい気配はない。時折私のわきを、車が大きく迂回してすり抜けていく。

 帰ってからスマホでとった写真を必死で確認するも、どこにも幽霊は写っていない。

 そんな私なので、学校新聞に載った心霊写真をみたときの衝撃は大きかった。


「ちょとなにこれ!」


 学校の廊下に男子生徒が四人並んでいる写真。一番右端の男子の二の腕のあたりから、ピースサインをした手がはっきり突き出しているけど、その手の主はどこにも写っていない!


「それ、こわいよねー」

「この学校の三年に、心霊写真バンバン撮る先輩がいるんだってー」

「いっつも古いフィルム? のカメラを持ちあるってるらしくてさ」

「知ってる知ってる! 心霊カメラでしょー」

 心霊カメラ! 灯台下暗し! この学校の先輩がそんなものを持っているとは。

 私は迷わずその先輩を尋ねた。


「先輩っ! お願いです。そのカメラ一日でいいから貸して下さい!」

「は?」


 先輩の机の上には噂の心霊カメラが置かれている。


「あんた、カメラに興味があるの?」


 青白い顔をした先輩が、クマの浮いた落ち窪んだ目で私を見た。


「はいっ!(その心霊カメラに!)」

「使い方わかる?」


 初めて見るフィルムカメラだけど、先輩の説明を聞くと、簡単そうだった。


「先輩、撮った写真はどこで確認するんですか?」

「だから、デジカメじゃないっての」


 なんと驚くことに、撮った写真は現像するまで見られないらしい。でもなんか、そんなところも心霊カメラっぽい気がする。


「あと二十枚くらい撮れるから、使っていいよ。できた写真はあんたにやる。俺、たいしたの撮ってないから」

「いいんですかっ!!」


 先輩の写真ももらえるとは!

 私はその日幸せな気分で心霊スポットを巡り、会心のポジションで心を込めてシャッターを切った。



 ☆*゜ ゜゜*☆*゜ ゜゜*☆*゜ ゜゜*☆*゜ ゜゜*



「師匠~~! 心霊写真が撮れませんー」


 できた写真は、全部なんてこと無い風景写真で、私は先輩に泣きついた。


「え? あんたカメラに興味があるわけじゃないの?」

「先輩が心霊カメラ持ってるってきいたんです!」

「あー、そんな噂もあるけど……いや、心霊写真はカメラじゃなくて、撮る人間の問題だから。残念だったね」


 ……。


 ……。


 ……。



「師匠~~! 弟子入りさせて下さい! 一緒に心霊写真撮りに行きましょう!」

「うるさい! ついてくんな! お前が来ると、霊が寄ってこなくなるんだよ!」


 どうやら先輩はかなりの霊媒体質らしい。一緒にいれば、少しは霊を感じられるようになるかもしれない。


「そんなー。私にも霊感分けて下さいよぉ!」


 迷惑がる先輩だけど、近頃では顔色が良くなったてきたと、学校中の噂なのである。



〈了〉


公募ガイド投稿作品「TOBE小説工房」お題カメラ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ