「あかつきの王国~黒鳥秘抄」冒頭
これは「小説スクール」の「物語の冒頭十枚を書く」という課題提出ように書き出したものです。
自分が一番最初に書いた小説「暁の王国」をいつか納得のいくかたちに書き直したいと、こねこねしているのですけれど、まあ、その一環です。
主人公の年齢を、冒頭部分ではだいぶ下げてあります。
成長モノにしたいなと思い、ライトは優しいけど争いごとの嫌いな大人しい少年。ヒロインのアレンを、貧しい農家の里親に男の子として育てられた正義感は強いけれど、荒っぽく喧嘩っ早い少年(実は少女)に、しております。
最後にはちゃんとライトをかっこ良くしてあげようと思うんですけどね……。
講師の先生からのアドバイスなどもらえたら、あとがきとして書き残そうかと思います。
おそらく一月くらい先かな?
「暁の王国」は私の過去作品にございますので、冒頭を読み比べるのもよろしいかと思います。
あちらは、本当に初めて書いたので、拙いですけどね。
青い空には、真っ白な雲が、ぷかりぷかりと浮かんでいた。
草原の中の一本道。
いく人もの旅人が行き来するその道は、踏み固められて黄土色に輝いている。
木々は緑の葉を揺らし、涼やかな木陰をつくっていた。
道の先にはリヴィエリという大きな町がある。
リヴィエリは、暁の大地を北から南へと分断する大河タタールのほとりにあり、河川港を持つ交通と流通の要所であった。
そのリヴィエリの町まであと少しというところで、突如現れた行列に、旅人たちは足止めを喰らわされていた。
女剣士アンジェは、内心「しまった」と思いながらも、平然とした顔をして、ただ黙ってその列に並ぶ。
ここで変に騒いだり、不平不満をいえば、命取りにもなりかねない。
黒の……トランダール軍による検問所。
かの軍が滅ぼした暁の王国の残党狩りだ。
暁の城を落としてから十二年が過ぎようというのに、まだ黒の王による残党狩りはこうして行われている。
最近では、暁国の残党が「湖の里」へ集結し始めているらしく、以前よりも頻繁に、そして厳しく残党狩りが行われるようになっていた。
「アンジェ……」
アンジェは、くん、と軽くマントを引かれて、後ろを振り返った。
アンジェの胸ほどの身長の男の子が、背後に隠れるようにしながら、ひょこっと顔だけだして、アンジェを見上げている。彼の手がきゅっとマントを掴んでいた。
「ライト。大丈夫だよ。心配ない」
アンジェが笑いながら頷いてみせると、唇を噛み締め緊張した面持ちだったライトが、ほんの少し笑顔をみせてうなずき返してくる。
が、次の瞬間その笑顔が凍りついた。
「ご容赦ください……!」
甲高い、老婆の声が響く。
行列の先では、黒い甲冑をつけた兵士が幼い女の子を掴み上げていた。
「まだ、この子はやっと六つになったばかりなんです。反乱軍のはずがないじゃありませんか!」
「そんなことは、わかっておるわ! だがこの子どもは、魔力持ち……メイジであろうが! メイジは黒の城で、検査と烙印を受けることが義務付けられているはず!」
子どもを掴み上げていた兵士に縋りついた老婆は蹴り倒され、黄色い大地に倒れ伏した。
「な……なに?」
ライトは、アンジェのマントを固く握りしめ、ますますアンジェの大きな体の影に隠れてしまう。
その時だった。
「ハアーーーーーッ!」
検問所に並んでいた列の中から、ライトと同じくらいの背格好の男の子が一人、掛け声とともに飛び出した。
少年の手には、彼の身長の半分ほど長さの大剣が握りしめられている。
「その手を離しやがれ! この……悪党が!」
と、叫びながら少女を掴み上げていた兵士めがけて、剣を振り下ろす。
「うわっ! 何しやがる!」
兵士は女の子を取り落とし、振り下ろされた剣を避けた。
「おまえ! はやく逃げな!」
少年はちらりと小さな女の子を振り返ったが、またすぐに兵士たちに向かって切り込んでいった。
――速い!
アンジェは、少年の身のこなしに舌を巻いた。あの年であの速さ、そして剣さばき。幼い頃からかなりの鍛錬をしているに違いない。
助け出された女の子が倒れた老婆のもとに駆け寄る。幼いながらも、泣いている場合ではないと感じたのだろう。老婆はよろけながらも立ち上がり、女の子の手を取り走り出した。
それまで彫像にでもなってしまったかのように固まり、事の成り行きを見守っていた人々も、一斉に回れ右をして一本道を走り出す。
アンジェも、ライトの手を引いて、この場を離れようとした。
しかし、ライトは兵士たちと切り結ぶ少年を見つめたまま動こうとしない。
振り返ると、少年の他にもう一人、初老の男が兵士たちと戦っている。連れなのかもしれない。
二人とも、腕は立つようだが、多勢に無勢だ。それに、いくら少年が強いとはいえ、子どもである。体力的にも、そう長く持ちこたえられるとは思えない。
斬り殺されるか、生け捕りにされるか。
とにかく巻き添えを食うのはゴメンだと、アンジェはライトの腕を強くひいた。
「行くよライト!」
それから声をひそめ、
「城に連れ戻されたいのかい?」
と囁く。
しかしライトは、座り込んだままだ。
「助けて!」
そして、ライトを立ち上がらせようとしているアンジェの腕を、逆に引っ張った。
「な……?」
「助けてアンジェ! あんたなら、あれくらいの兵士、あっという間にやっつけられるはずだよ!」
「なんだってぇ!?」
そう叫んだが、ライトは掴んでいたアンジェの手を突き放し、今度はその場に座り込んでしまう。
こうなると、案外ライトは手強い。
わがままいっぱいの、お坊ちゃま育ちなのだ。
ふう。
一つ溜息をつくと、アンジェはマントの下に隠してあった、ナイフを二本抜いた。抜き放ちながら、振り返り、走り出す。
そのまま、乱闘の中に突っ込んでいった。
アンジェはもともと二刀流である。
刀とはまた使い勝手が違うが、ナイフの扱いも出来ないわけではない。
跳躍すると、少年に襲いかかっていた兵士の真後ろに着地し、手にしたナイフを甲冑の隙間から滑り込ませる。
どうっと倒れた兵士は、自分に何が起きたかわかっていないに違いない。
アンジェがちらりと一本道に座り込むライトを見ながら「どうだ」というように顎を上げてみせた。ライトはニコリともせずに、じいっとこちらを見ている。
「邪魔だてするか!」
数人の兵士がアンジェにも襲い掛かって来た。
胸を張っていたアンジェはすぐに身を沈め、手にした二本のナイフで、同時に二人を下から突き上げた。
「兵士っていうのはさ……っ!」
ナイフを突き上げながら、アンジェはつぶやく。
「どうしてこう……っ!」
つぶやきと同時に、兵士がひとりずつ倒れていく。
「オリジナリティのないセリフしかいえないのかねっ!」
最後は大きな声で叫んでいた。
叫びながら、くるりとダンスでも踊るかのように旋回する。ナイフがひらりひらりと空を舞った。
アンジェの動きが止まり、その場にひざまずくと、彼女のまわりには兵士たちが数名うめき声を上げながら倒れている。
剣を構えている兵士のほうが、倒れているものよりも少ない。残った彼らも、アンジェの強さを目の当たりにして、ジリジリと後退していく。
背後で、椅子に座ってこの様子を眺めていた、指揮官と思しき男が立ち上がった。
彼はゆっくりと歩を進め、腰の引けた兵士の間を抜け、アンジェの前に立った。
「あんたが指揮官?」
「そうだ」
男は頭から真っ黒なローブを被っており、顔は下半分ほどしか見えない。
「ここは、退いてもらえないかい?」
アンジェの切っ先は指揮官の男の喉元を捉えている。
男は、両手を軽く上げた。
「どうやら、そうするのが利口なようだ。ヴェルトガ、負傷したものを、馬車へ」
指揮官の声に、その場にいた兵士たちは、剣を収めると、倒れた仲間を簡素な馬車の中へと運び入れていた。運び入れる間も、ちらちらとアンジェの様子をうかがっている。
馬は、木製の大きな四角い箱を曳いている。
おそらくは、捉えたメイジや、暁国の残党を押し込めるためのものだったのだろう。その箱には、窓すらない。
アンジェは指揮官の男に剣を突きつけたまま、目を離すことはなかった。指揮官の男も、アンジェへじっと気を向けていたのだが、その時、ふ、とそれがそれた。
おそらく男が注意を向けたのは、アンジェの主であるライト。まだ、道路の真ん中で座り込んでいるはずだ。
アンジェは自分の主人の姿を振り返りたい衝動に駆られたが、必死で耐えた。今、この男から剣先を外すことは出来ない
男の意識がまたアンジェに向く。
フードから覗く口元が緩み、まるで三日月のような形になる。
男の口元が、薄く笑みを刻んでいた。
【講評】
ここには載せませんでしたが、あらすじも書いて送りました。あらすじは、とても面白そうで、良いとのことでした。
ただ、これまでたくさんかかれてきたファンタジー作品とどこが違うのか? どこが新しいのか? が今ひとつ見えない。とのことです。そういうアピールポイントが出せないと、下読みの段階でバッサリということもあるそうですよ。
オノマトペの使い方。入れる箇所をよく考える。まだまだ改善の余地があり。
書き出しの一行は良い。
アンジェの紹介がもうひとつこなれていない。
検問所について、どういう構造でどういうシステムなのか。何人くらい兵隊がいるのか。など、映像として見えてくるように書く。
メイジの説明を入れる。
アンジェたちの出会う少年の奮闘ぶり、こういうところでオノマトペを駆使して、まさに見えるように。
ファンタジーや歴史物は、作者(神的)視点で状況を描写する手法も有りだが、小説の基本は視点者がアンジェなら、その感覚であったり、大変さ、心理などを描いて、読者が映像として見えるように書けるかがポイント。
できれば、自分がいい! うまい! と思った文章を書き写す。ストーリーを追うこと以上に、どう表現しているかをプロの作家の書いた作品から読み込むこと。これが大切なようです。
そして、書き始めたら「了」と書くまで書き上げること。(……やっぱりか!?)
書き上げたら少し置き、冷静に読み直し、信頼のできる人に読んでもらって直しをすること。
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小説家になろうというサイトですから、小説家を目指している方もいらっしゃると思います。
もちろん「私は私の道をゆく」という人もいると思います。そのやり方を押し通して、成功する人もいるかもしれません。
ただ、私のように努力型の方には、こういったアドバイスが書いていく上の助けになるのではないかと思い、簡単に講評も載せてみました。





