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教皇様の千年日記  作者: 深江 碧
四章 教皇様、村の若者と拳で語り合う
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教皇様、村の若者と拳で語り合う5

「「ほんとうにすみませんでしたっ!」」

 村の家の一軒一軒を周り、アグラダは若者五人に頭を下げさせる。

 その様子に、玄関の扉を開けた家の住人の方が戸惑う。

「し、司祭様。こ、これは?」

 家の庭にごみを勝手に捨てられた家の主は、困ったようにアグラダに視線を向ける。

 アグラダは笑顔で応じる。

「若者を更生させるのも、司祭の仕事の一つです」

(司祭様がお一人で更生させたのだろうか?)

住人たちは胸の中に疑問を抱えつつ、口には出さなかった。

アグラダは終始笑顔で住民と接していた。

 若者五人は内心、アグラダのことをタヌキおやじと心の中で罵っていたが、それも口には恐ろしくて出せなかった。

 村で最後の家、アレナスの家を訪ねた時だった。

 鍛冶屋を営むアレナスの父親は息子の顔を見るなり、拳を振り上げた。

「このバカ息子!」

 アレナスの頭を思い切りぶんなぐる。

 鈍い音がして、アレナスが頭を押さえてうずくまる。

 それにはそこにいた若者四人だけでなく、アグラダも目を丸くした。

「今までどこをほっつき歩いていた。しかも聞くところによると、お前が先頭に立って村のあちこちで悪さをしているってえ話しじゃねえか。あぁ?」

 どすのきいた声で怒鳴る。

 近くに立っているアグラダに気付いたアレナスの父親はへこへこと頭を下げる。

「このたびは、うちのバカ息子が司祭様に大変な迷惑を掛けたようでして、とても申し訳なく思っています。ほらっ、お前も謝らないか!」

「いでででで」

 アレナスの父親はアレナスの首根っこをつかみ、無理矢理頭を下げさせる。

 アグラダは何と返していいのかわからず、困った顔で笑っている。

「家内が亡くなってから、こいつを男手一つで育てたせいか、どうもこいつは言うことを聞かないバカ息子に育ってしまったようで。せめて家内が生きてれば、もう少しましに育ったかもしれないんですがねえ」

「痛てぇっての」

 アレナスは父親の手を逃れ、走って逃げる。

「あっ、待て。この野郎」

 父親がアレナスを追いかける。

 二人の追いかけっこは、いつまで経っても終わりそうになかった。

「あ~、我々は用事があるのでここで失礼します」

 そう断って、アグラダは他の四人の若者に目を向ける。

 若者四人はびくりと肩を震わせる。

「君たちも家に帰りなさい。これからはくれぐれも村の人たちを困らせないようにな」

 アグラダは若者にそう言い置いて、丘の上の修道院に帰って行った。

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