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第114話 ゼロデイ攻撃(未知の脅威)と、時限発動型マルウェア(ロジックボム)

【担当:キース】

脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?

開戦だ。



 王都でのハードウェア更新(装備新調)を終え、魔族領の最前線へと舞い戻った勇者一行。


 荒涼とした岩山を抜けた先、眼下に広がっていたのは、魔王城のすぐ手前とは思えないほど美しく活気のある石造りの大都市だった。


「……勇者様! 伝説のキースライン様一行ですね!」

「よくぞお越しくださいました! さあ、どうぞ中へ!」


 門をくぐると、武装した兵士の姿はなく、魔族の住人たちが色とりどりの旗を振って熱烈な歓迎を向けてきた。


「へっ、なんだよこれ……。俺たち、歓迎されてんのか?」


 ガルドが戸惑いながらも、出された果実酒の杯を受け取りそうになる。


「待て、ガルド。不用意なダウンロード(受け取り)は控えろ」


 慎也キースラインは鋭く制止し、目を細めて周囲の住人たちを観察した。当然、ハニーポットを疑っている。彼は自らの魔力探知と、エリスの浄化の力をフル稼働させ、街全体に「セキュリティ・スキャン」をかけた。


(……幻影カモフラージュではない。毒や呪いの反応(既知のマルウェア)もゼロだ。住人たちの生体反応も、作られたプログラムではなく『本物の感情』で動いている。……罠の兆候が、完全にゼロだと?)


「キースライン様。……信じられないことに、彼らからは一切の悪意や敵意を感じません」


 エリスも困惑したように小声で報告する。

 代表を名乗る年老いた魔族が進み出て、深々と頭を下げた。


「勇者様。我々は魔王の圧政に苦しむ、非戦派の者たちです。どうか今宵は、我々の街で旅の疲れを癒やしていってください。ささやかながら、宴の準備もございます」

「……」


 敵地での宴など言語道断。しかし、スキャン結果は「シロ」だ。さらに、連日の強行軍でガルドやナイルの生体ユニット(肉体)には疲労キャッシュが蓄積している。ここで安全な休止状態スリープを取れるなら、魔王戦に向けたリソース回復の絶好の機会となる。


「……分かった。厚意に甘えよう」


 慎也の決断に、住人たちから歓声が上がった。


 ――その夜。

 用意された豪華な宿屋の広間で、一行は豪勢な食事に舌鼓を打っていた。


 慎也自身は決して手を出さず、口にするもの全てにエリスの浄化サニタイズを徹底させていたが、それでも何も異常は起きない。ガルドやナイルはすっかり警戒を解き、ふかふかのベッドへと倒れ込んでいった。


「……キースライン様も、少しは休まれては? 私が見張っていますから」

「いや、私はシステム(周囲)の監視を続ける。……どうにも、嫌な予感がするのだ」


 慎也が窓から外を見下ろした、その時だった。

 深夜零時を告げる、街の巨大な時計塔の鐘が鳴り響いた。


 ――ゴォォォォン……!

 その重低音が響いた瞬間。


「……ッ!?」


 隣にいたエリスが、突然糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。


「エリス!? どうした!!」

「わか、りません……急に、魔力回路が……暴走ショートして……っ!」


 別の部屋からは、ガルドとナイルの苦しむような呻き声が聞こえてくる。

 食事に毒はなかった。呪いもなかった。慎也は超高速の演算で、この事象の「原因」を探り当てる。


(……『ロジックボム(論理爆弾)』か!!)

 慎也はギリッと奥歯を噛み締めた。

 敵の罠は、毒や幻影といった「既知の脅威シグネチャ」ではなかった。この街の空気中には、人体に無害な『単なる魔力の粒』が漂っていたのだ。しかし、深夜零時の鐘の「特定の音波」を受信した瞬間、体内に蓄積したその粒が結合し、致死性のデバフ・プログラムへと強制起動(実行)する時限式の罠だったのだ。


「……私のスキャン(検知システム)をすり抜ける、完全なゼロデイ攻撃(未知の手法)というわけか。……見事な手際だ」


 バタンッ!!

 宿屋の扉が蹴り破られ、雪崩れ込んできたのは、昼間あれほどにこやかに笑っていた魔族の住人たちだった。


 しかし、その瞳からは一切の感情が消え失せ、手には農具や包丁といった凶器が握られている。彼ら自身もまた、鐘の音をトリガー(実行条件)として、「勇者を殺すだけの傀儡ボット」へと強制的に書き換えられていたのだ。


「ギ……ガァァァァッ!!」


 群衆が、動けなくなったエリスたちに襲いかかる。

 慎也は聖剣を抜いた。だが、相手は一般市民(非武装のNPC)だ。広域殲滅魔法(AoE)を使えば、操られているだけの住人ごと吹き飛ばすことになり、エリスの精神的負荷トラウマは計り知れない。


「……クソッ。一般ユーザー(市民)を盾にしたDDoS攻撃(物量戦)か!!」


 かつてない未知の罠と、制約だらけの防衛戦。

 有能なる魔王軍の指揮官が仕掛けた「悪意のハニーポット」の中で、慎也は仲間を守りながら、絶望的な乱戦へと引きずり込まれていくのだった。


【総統通達】

読者諸君。我だ。

あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。


まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。


良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。


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