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第112話 戦略的ロールバック(帰還)と、職人によるハードウェアの再構築

【担当:キース】

脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?

開戦だ。



 魔王軍本隊との激闘を終えた峡谷。慎也キースラインは、ひび割れたガルドの盾と、折れたナイルの短剣を無表情に見つめていた。


「……致命的な損傷クリティカル・ダメージだ。これ以上の続行は、システム全体の全壊(パーティ全滅)を招く」

「やっぱり戻るのか、リーダー。ここまで来たのに、また王都かよ」


 ガルドが悔しそうに拳を握るが、慎也は一切の躊躇なく帰還魔法の触媒を取り出した。


「勘違いするな、ガルド。これは敗北ではない。不測の事態によって蓄積された『技術的負債ダメージ』を解消し、最終決戦に耐えうるだけの『ハードウェア性能』を確保するための、戦略的なロールバックだ。仕様を満たさない装備で突き進むのは、努力ではなく単なる無謀――すなわちバグだ」


 慎也の冷徹な判断に異論を挟む者はいなかった。発動した魔法の光が一行を包み込み、次の瞬間、彼らは見慣れた王都の転送門へと降り立っていた。


 王都へ帰還した一行は、まず真っ先に王城へと向かった。プロジェクトのスポンサーである王女への進捗報告ステータスアップデートを怠ることは、慎也の流儀に反するからだ。


 謁見の間。突如として帰還した勇者一行の姿に、王女は驚きと不安を隠せない様子で立ち上がった。


「勇者様! 戻られたのですか……!? 魔王城への進軍に、何か重大な問題が発生したと?」

「肯定します」


 慎也は淀みなく、現地のログ――戦闘状況のブリーフィングを開始した。


「魔王軍正規部隊との交戦。結果として敵部隊は殲滅しましたが、看過できないインシデントが発生しました。敵の管理者は極めて合理的であり、『勇者キースライン専用』の強固なファイアウォールを構築してきたのです」

「キースライン様、専用の……?」

「はい。私の魔力波長のみをピンポイントで識別し、その出力を強制的に削り落とす減衰結界です。ガルドらの装備の損壊も、メイン火力である私の処理落ちをカバーしようと、彼らに想定以上の負荷オーバーワークがかかったことが原因です。つきましては、王家直属の鍛冶工房をフル稼働させる権限(アクセス権)を要求します」

「分かりました。勇者様の判断を全面的に支持します。どうか、万全の備えを」


 王女の承認を得た慎也は、一行を連れて最高級の鍛冶工房へと直行した。


 そこには、慎也が以前から王室を通じて契約していた、この世界で最も腕の立つ「ハードウェア・エンジニア(老鍛冶師)」が待っていた。


「……また無茶な使い方をしてくれたな、勇者様よ」


 老鍛冶師は、運び込まれた破損装備を一瞥して鼻を鳴らした。


「マスター。単なる修理ではない。先の戦闘ログに基づき、ガルドの盾とナイルの短剣は、魔力伝導率よりも『物理耐性』を極限まで高めた合金へと換装しろ」

「相変わらず、注文が細かい男だ。だが、その方が腕が鳴るわい」


 老鍛冶師が不敵に笑うと、慎也はさらに懐から、一枚の緻密な設計図(仕様書)を取り出して机に広げた。


「そして、ここからがメインタスクだ。敵が持っていた『減衰の魔石』の欠片を解析して作った仕様書だ。私の防具の核に、この『動的周波数変調器(波長シフト・モジュール)』を新規に製造して組み込め」

「……なんだこりゃ? 小さな歯車と魔石の複合回路……? 自分の魔力の波長を、あえて常に変動させるのか?」


 設計図を覗き込んだ老鍛冶師が、怪訝な顔で慎也を見る。


「そうだ。敵の減衰結界は、私の『特定の魔力シグネチャ』を検知して作動する静的なフィルタだ。ならば、このモジュールによって私の魔力が体外へ放出される直前に、その波長を常に不規則なサイクルで変動ホッピングさせ続ければいい。敵のシステムは私を『排除対象キースライン』として正しく認識ロックオンできなくなる。私個人に対するメタ対策への、完全なる逆メタ対策ハードウェア・バイパスだ」

「……なるほど。相手の網の目をすり抜けるために、常に波長を書き換え続ける『動的な偽装カモフラージュ』というわけか。面白い。お前さんの頭の中はどうなってるのか知らんが、この職人人生のすべてを賭けて、最高の『対減衰装備』を仕立ててやろう」


 老鍛冶師が即座に炉に火を入れ、修理と強化が始まる。慎也はその様子を監視しながら、一方でエリスと自分の「魔力回路」のセルフメンテナンスを行っていた。


「エリス。合体魔法の反動による魔力回路の負荷オーバーヒートはどうだ。損傷部位(エラー箇所)があれば今のうちに申告しろ」

「大丈夫です、キースライン様。少し魔力枯渇気味ですが、王都の聖堂で一晩休めば(リチャージすれば)、完全に修復できます」

「よろしい。各自、装備の更新が完了するまでの間、適切な休止スリープをとれ。生体ユニットの疲労蓄積は、判断ミスという致命的なエラーのトリガーになる」


 慎也は工房の片隅で、新しく打ち直される盾と短剣、そして自身のモジュールの熱を見つめていた。


 間に合わせの装備で妥協せず、あえて手間と時間をかけて「完全な状態」を作り直す。その妥協のなさが、この過酷な異世界で生き残るための、彼にとっての絶対的な論理ロジックだった。


「……魔王領への再突入時には、一切のハードウェア的懸念を排除する。次は、奴らの計算を完全に上回るスペックを見せつけてやるぞ」


 鍛冶場に響く鎚の音が、次なる勝利への「ビルド完了」を告げるカウントダウンのように響いていた。


【総統通達】

読者諸君。我だ。

あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。


まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。


良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。


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