調査団の現状
翌朝、リュシストラトス調査団の面々は、思い思いに過ごしていた。
ジョナサンは団長室にこもっていた。
グロリアはデスクに置いたぬいぐるみをなでていた。
ユキナリは相変わらずの無表情で、ブルー地区にできたというトレーニング施設のチラシを眺めていた。
メレディスは書類仕事に追われていた。
アリーナはただひとり、渋い顔で考えごとをしていた。
彼女はその表情のまま、思わずうーむとうなった。
「どうしたんですか?」
ぬいぐるみをなでる手を止めて、グロリアはそう尋ねた。
アリーナは、一層眉をひそめて答えた。
「『どうしたんですか』って。
あなたたち、もう少しこの状況に危機感を持ってくださいよ」
「依頼は低規定に来ていて、この調査団も評判になっています。
いいことずくめじゃないですか」
グロリアの言葉に、アリーナは首を振った。
「それはある程度、こちらで依頼を選んでいるからです。
あなたも知っているでしょう。
しかもジョナサンは、『このメンツで十分だろ』と、人員を増やすつもりもなさそうです。
あまり依頼を断り続けるのも、調査団の信用にかかわりますよ
まあ、ジョナサンの言い分もわかりますけどね。
今から人材を募集、採用、教育となると、人的資産的コストがかなりかかります。
現状で業務が回りきっていないのに、これ以上の負担は背負えません」
アリーナがため気交じりにそう言い切ると、不意に事務室のドアがガチャリと開いた。
「俺がどうしたって?」
そう言いながら突如現れたジョナサンに、アリーナとグロリアはぎょっとした。
アリーナは頭を抱えながら、彼に言った。
「まったく、あなたは地獄耳なんですから。
あなたはこの調査団を、一体どうしたいのですか?」
「別に、現状で大丈夫だと思うが?」
「次から次へと依頼が来て、こなしきれていないのです。
これは由々しき事態ですよ」
「そうかな?」
「そうです。
そもそも一体、あなたはなにしに来たのですか」
「団長室にいるのに飽きちまったんだ」
「では、少しでも仕事をしてください。
どうせ団長室で、くだらない妄想でもしていたのでしょう」
「ちぇっ」
そう言ってジョナサンがふてくされた瞬間、ドアノッカーが鳴った。
「おっと、お客さんだ」
「私も行きます」
ふたりは競い合うように廊下を進み、ドアを開けた。




