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社畜11日目


 突然だが、俺は死亡フラグと言う物について常々考えていた事がある。


 ゲームの中の死亡するキャラクターに憑依したとして、果たして『原作』の死亡フラグにだけ気を付けて居れば良いのだろうか?と。


 答えは否。あくまで『原作』は二次元の出来事であり、登場人物の人生を一つ一つ紐解く歴史書では無く、現に公爵家である以上王位継承権は下位であるものの俺も有しており、つまり政治的な死亡フラグやそもそも俺が取る行動一つ一つが積み重ねとなって死亡フラグとなる場合もある。


 現に俺は余程大きな不正でなければ自身の領内で行われている汚職を見逃しているからね。


 理由として、プレイヤード公爵家の一人息子と言う立場は権力と言う点で言えば強力ではあるものの、一人間としての立場としては非常に危うい。


 明確な後ろ盾が実家以外に存在しておらず、悪徳貴族としてのレッテルが貼られている以上、外患誘致罪やら国家反逆罪やらをでっち上げられでもすれば真偽に問わず処断される可能性が高く、プレイヤードと言う泥舟には気を抜けば『原作』には存在しない死亡フラグが沢山張り巡らされており、そんな中を何もせずとも沈む船を舵取りしなければならない。


 何故今になってこんな事を考えているのかって? それはもちろん単純な話。


 ―――目の前にその『原作には無かった死亡フラグ』が確実にあるからだよ!!



 話は少し前に遡る。


 奴隷商の滞在地点に向かった俺は、その地点が一種のブラックマーケットになっている事に気が付いた。


 明らかな盗品と分かる高価な美術品。誘拐されたらしい見目麗しい非合法奴隷の少年少女。それ以外にも違法薬物だの、禁術書(グリモア)だの、怪しげな物しかない。


 念の為にと仮面と外套を持って来たのは正解かもしれん。

 

 本来なら取り締まらなきゃいけないんだろうが、このブラックマーケットがどのような繋がりを持っているかが分からない以上、下手に潰して虎の尾を踏むのも馬鹿らしい、と思ってたんだよ。


 目の前でオークションに出品されかけている一人の少女を見てその認識は脆く崩れ去る。


 乱暴に連れ去られた為か所々薄汚れては居るが、その人物の持つ商品価値からか思いの外丁重に扱われているらしい。


 触れずとも理解できる絹糸の様に滑らかな金髪、宝石のように澄んだ碧眼、同い年くらいの少女でありながらも高貴さを感じさせる出立ち。彼女との直接の面識は無いし、前世の知識にも該当する人物は居ない。だが今世の知識(・・・・・)には彼女の正体に至る物があった。


 彼女の髪飾りに刻まれた家紋。それは…………彼女が隣国の公爵令嬢である証。


 視界から入ってきた情報を脳が処理するのに数分掛かってしまう程の衝撃、それ以上に『何故此処に居るのか?』と言う混乱から完全に当初の目的が吹き飛んでしまった。


 『マルグリット・フォン・フランシス』


 彼女はつい先月隣国の王太子の婚約者として選ばれていた筈。世界情勢を伺うついでに拾っていた情報がこんなところで役に立つとは…………心底役立って欲しくなかったが。


 思考が逸れそうになったが、マルグリットが此処に居る経緯はどうでもいい。あり得ない事象である以上、何らかしらの意図と陰謀が背後に存在しているのは確定。


 憶測でしかないが、相手側の狙いとしては他の次期王妃候補を輩出しようとして争っていた家の誘拐か、或いは身内の手引きでわざと誘拐させ、プレイヤード領で売り払う事によって『王太子の婚約者を誘拐した不届き者』のレッテルをこの国に貼り付け、彼女の奪還を口実にこの土地を奪いに掛かる事だろうか?


 問題はそれを無視出来ない事。確かに俺がこのまま見て見ぬ振りをして立ち去ればこの件を有耶無耶にする事も出来なくないかもしれないが、しかしながらそれはあまりにも希望的な考えであり、俺が仕掛けた側ならそもそもこちらの貴族とも内通し、プレイヤード公を嵌める策を確実に用意する以上、不幸な事故で済ませられる案件では無い。


 見過ごすと言う選択肢は無い。だが先に挙げた不安要素が存在する以上助けるにしても取れる手段が強行策しか取れないだろう。


 政治的圧力は掛けるには手順が足りない。考え無しに家名と背景の圧力をチラつかせれば逆手に取られるだろう。


 オークションに出品されてから競り落とすのも却下だ。そんな事をすれば彼女が俺の奴隷になったと言う瑕疵が付いてしまう。そうなればそれを口実に隣国から責められるし、最悪戦争だ。


 全てを丸く収める事は恐らく不可能。だったら規模の大きさを考えると………………考えんの面倒くせぇしもういっそマルグリット嬢を誘拐(パワープレイ)すっか。


 仮面と外套のフードを目深く被り、俺は心底嫌そうな顔をしながら王家の魔力を指先へと纏わせ、彼女を捉えている檻に手を伸ばしていった。


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