封印
ヒックは、ミシの路地裏で途方に暮れていた。
(ロッシーって…どんな、なんだよ。誰?)
街へ出て、通り行く人に、ロッシーという人を知っているか?と聞くヒックだったが、知っていると言う人は、居なかった。
(有名人じゃ、ねぇのか…)
すると空が割れ、サトゥルーナが、飛び出して来るのが見えた。
「あ!あの黒髪の女!」
するとサトゥルーナは、すぐにヒックの元へと飛んで来る。
そしてヒックを攫い、すぐに空へと飛び上がる。
「どこ?!ここにロッシーは居るの?!」
「そのロッシーって奴、俺、知らないんですけど…」
サトゥルーナは、辺りを見渡し、時空フィールドを発見する。
「あそこだわっ!いい?ズルワーンと言う男は、あなたの持つ魂と、魔竜騎の魂を1つにする事で、9つの世界を1つにして全てをやり直し、あの男だけが最初からやり直せるように持っていくつもりよ!全ての世界は無くなるの!良い?!覚えた?!だから絶対に渡しちゃダメよ!じゃあね…」
サトゥルーナは、大きな時空フィールドを確認し、その中にある小さな村へと、ヒックを投げ込む。
「うわおあああああああああああああっ!!」
ヒックは、叫びながら村の中へと落下し、地面へと上半身が埋まる。が、無傷だった。
「え?あんま痛くねぇ…」
するとすぐに時空フィールドの中は、外部から消えて見えなくなる。
しかし村の中からは、外が見えていた。
サトゥルーナは、グレイを迎え撃つつもりでいた。
時空フィールドの存在を、悟られる訳には行かないからだ。
すぐにグレイは、追って来た。
だがヒックの気配が、あまりしない事を気にする。
「ん?ここには、居ないのか?そんな筈は…」
そこへサトゥルーナが来る。
「ちょっとアンタ!一体なんなのよ!何故ヒックを狙うの?!」
「え?僕は、ヒックの代わりなんだ。ヒックが居なくなった時、この世界を調律する」
「代わり?!じゃぁ何故、ヒックを襲うの?!」
「さぁ、深くは覚えて無いけどね…。でも、何かの『代わり』なんて、嫌でしょう?普通に!」
そう言ってグレイは、サトゥルーナに向かって攻撃を仕掛ける。
それをサトゥルーナは、避けながら時空フィールドから引き離して行く。
「んー、ここは…魔法も科学も無い、原子的な世界だな。これなら…」
そう言ってサトゥルーナを攻撃しながら、街を見下ろすグレイ。
「いっぱい要るな…けど、使えそうなのは…1つか…」
「よそ見してんじゃないわよ!!」
サトゥルーナは、魔人を出してグレイを攻撃する。
ヒックは、それを村の中から見上げていた。
声が聞こえていた。
胸のペンダントから、2人の会話が。
(俺の、代わり?)
魔人の攻撃を、余裕で避け。
グレイは、街から1人の街人を浮かび上がらせる。
「な、なんだ?!」
そして、グレイは呟く。
「C2R…」
そうするとサトゥルーナ、ヒック、そしてヒックのすぐ隣りにある、小さな家の窓が光りを放つ。
「な、なんだ、これ…胸が…あつ…い…」
「な、何なの…これ…は…」
そしてヒック、サトゥルーナ、家の中から光が飛び出す。それは、ハート型の宝石となりグレイの目の前へ現れる。
それをグレイは掴み、砕く。
すると街人は、魔竜騎へと姿を変えて行く。その表情は、怒っている様にも見える。
その魔竜騎は、ナイトモードにも関わらず、空に浮かんでいた。
「やれ…」
グレイが、操作している魔竜騎は、サトゥルーナへと襲いかかる。
空で戦う黒髪の女を見ていたヒックだったが、先程の光が気になり家の中を覗いて見る。
そこにはロッシーが居た。
「…」
ヒックは、その少女を見た瞬間、心臓の鼓動が止まりそうになる。
「…ロッシー…だ…」
すると村の小屋から、1人の村人が出て来る。
「こちらへ来なさい…」
恐る恐る、村人の家へと行くヒック。
中へ入ると村人は、ヒックへ座る様に即す。そして、すぐに尋ねる。
「君は…ヒック君だね?」
「いや、俺はロランです」
「ヒック君…だね?」
「いえ、ロランですよ?」
その間も、必死に戦うサトゥルーナの声が、ペンダントから響いて来る。
「いや、君はヒック君、なんだよ?」
「いや、俺はロラン君だって」
村人は、ヒックの頭をはたく。
「いってぇな!いや、あんまり痛くは無いけど…」
「ああ、すまんすまん。叩いたら直るかと思って」
「痛えな!直るワケ、ねぇ…だろ…」
その時だった。
あの時、時空間で、ヒックと交わした約束の一部が蘇る。
「そうだ…俺は…ヒックだ…。ロッシーを…守る…」
ヒックの目の中に、白い炎が小さく燃えていた。
すると、ペンダントからグレイの声が聞こえる。
「ん?ヒックの気配がする。やっぱり、ここに…」
「あんたの相手は、こっちだって言ってるでしょう?!」
サトゥルーナの声がする。
「いいかヒック?あれは、魔竜騎。人の心と心が繋がった時、それは強いチカラを産む。人の身体は進化し、心も進化して行く」
「はぁ…」
「お前にも、その魂がある。強い絆が…」
「へぇ…」
「私達は、この世界を守る。お前達を育てなければならない…」
「守る…」
「先程の反対。失恋をし心を失い、肉体だけとなった存在。フォルス。そこへお前達、ユニリンクする者の魂を渡す。それがC2R」
「うん…」
「お前、何も分かってないだろ」
「はいっ!」
また村人は、ヒックの頭を叩いた。
魔竜騎と交戦しているサトゥルーナは、そろそろ限界だった。
そこへ空を割って、1人だけのズルワーンが飛び出して来る。
もう1人のサトゥルーナの魂を食べたズルワーンは、ヒックのチカラを蓄えていた。
そしてズルワーンは、グレイを時空フィールドへと閉じ込める。
「な、何?!」
突然の事に、流石のグレイも驚く。
内側から出る事の出来ない、時空フィールドへと閉じ込められるグレイ。
そこへサトゥルーナもグレイに向かって、時空フィールドを張る。
「こんなもの…すぐに…」
グレイは、ダブルで重ねられた時空フィールドを割ろうとする。
「行くぞ!」
ズルワーンに、そう言われたサトゥルーナは、時空フィールドに包まれたグレイを、時空を割って運び出す。
ヒックのペンダントから、声が聞こえなくなる。
「…脅威は…去ったな…ありがとう。ヒックの母よ…父よ…」
村人が呟いているのを、不思議な顔をしてヒックは眺めていた。
サトゥルーナとズルワーンは、世界から世界を渡りヒック達からなるべく距離を取ろうする。
そしてヒックがいる世界から、3つ目の世界。惑星グランへと封印するのが限界だった。
その世界の森の中で、時空フィールドを何重にも重ねがけし、グレイを封じ込めるサトゥルーナ。
時空を連続で超え、時空フィールドを発生させ過ぎたせいで、サトゥルーナに宿るヒックのチカラは、もうほとんど残って居なかった。
「これで…」
一安心するサトゥルーナ。気付くと1人だった。
「クソババァ!ここから僕を出せ!許さないぞ!」
「フン!そこで大人しくしていなさい!坊や」
ズルワーンは、その間に、どこかへ行っていた。
しばらくして戻って来たズルワーンと共に、次の世界へと行くサトゥルーナ。時空間の途中であった。
ズルワーンが、サトゥルーナを時空フィールドへと、閉じ込める。
「な、何をするの?!」
「ふふ、私はお前のあとを着いて行っただけだ。チカラが残っている…」
「あんたはっ!!」
時空フィールドを破ろうとするも、そのチカラは、サトゥルーナに残ってはおらず。そのまま気を失ってしまう。
「ふっ、そこでずっと眠っているがいい…」
そう言ってズルワーンは、ヒックが居た世界へと廻って帰り、待たせていたフォルと魔竜騎ズルワーンの元へと辿り着く。
「待たせたな…フォル…さぁ、奴らを、追うの…だ…」
「え、ズルワーン…様っ?!」
ズルワーンも連続世界移動のせいで、チカラを使い過ぎていたのか倒れてしまう。
手には光る板が、握られていた。
そしてフォルと魔竜騎ズルワーンは、ヒックとロッシーが、居る世界へと、進んで行く。





