逃避
魂のズルワーンと、幼いズルワーンは出会い。その魂は1つとなる。
幼いズルワーンに、記憶のインストールが始まる。
2つの魂は、1つになり、そして、魂のユニリンクが始まる。
(いいか、ズルワーン少年。今、世界は危機に陥っている。それは全ての世界、全ての時空を巻き込んでの事だ。過去・現在・未来。全てが奴の手に渡ってしまう前に、何としても防ぐ必要がある。その為には、ズルワーン。君とは別の世界にいるズルワーンと共に、世界を回らなければならない。フォルヒックトゥーナという少女と共に。嫌かもしれないが、ズルワーンと共に行動してくれ…いいな…)
「僕は…君で…」
(私は…君だ…)
そしてズルワーンは、眠りについた。
「ちぇ!ズルワーンのやつ、何が、君には関係ないだろ。だ。いいぜ、1人でも森に行ってやんよ!」
そう言ってロランは、森へと歩き出す。
しかし森へ行く途中に、ラケシスやルーナ達と出会う。
「あれ?みんな何処行くの?」
「あら、ロラン!ダメじゃない。1人で森へ来ちゃ…」
そう言って、ラケシスはロランの手を握る。
「だってぇ、俺も見たかたっんだもん!花!」
「もう…花なんて興味ないくせに…」
そう言って一行は、森の中へと入る。
ルーナ達が、森へと来た理由は、悟が居るノートPCの充電が、残り少ない事だった。
ルーナは、この世界に電気は無いのか?と尋ねたところ、ラケシスが森に電気を貯める花があると教えてくれた為、森へとやって来たのだった。
ルーナは、黄色い花の上に、充電コードを垂らす。
すると黄色い花は、電気を放ち、萎んで行ってしまう。それを見たルーナは、心を痛めた。
「私のワガママのせいで、花が枯れてしまったわ…」
「いいえ、大丈夫よ。ルーナ。このお花達は、危険だから普段は嫌われているの。でも、こうやって役に立てる事があると分かったのよ…嬉しいはずだわ…」
「ラケシスさん。ありがとう…」
「それに、また雷雨が来たら、電気を貯めて元気になるの。気にしないで大丈夫よ!」
そう言ってラケシスは、ルーナに向かってウインクをした。
ラケシスの家に帰る途中、フォルは村を見たいと言い出す。
するとロランは、
「じゃ、俺が案内してやるよ!」
と言い、フォルの手を引き村へと走り出す。
充電が完了した悟も、
「見たい!」
と言い出すのでルーナは、あとを追うことにした。
ヒックは、何か浮かない顔をしたままルーナ達へと着いて行く。
しかしズルワーンは、ヒックが着いていれば安心だろうと思い、ラケシスに魔法を教わりたいので、2人は家へと帰って行った。
しかし、これが間違いだった事に気づくのは、後になってからだった。
フォルは、村を見たいと言ったものの、平凡な村で、何も無く、すぐに飽きて帰りたいと言い出す。
するとロランは、ちょっと待っててと言い、フォルの家へと尋ねて行く。
昼寝が終わったフォルが、家から出て来る。
それを見てフォルは、驚いた顔をする。
それはルーナも悟も同じだった。
「ヒ、ヒック?!あの分魂ってやつ!大丈夫なの?!」
「え?ああ、コイツの場合、特殊だからな。同じ名前だろうと、似たような魂だろうと別だ」
「ビ、ビックリするじゃない…じゃ、じゃあ…ズルワーンは?どうなのよ?」
「ああ、それも俺が時空フィールドを張ってる。直接接触する距離まで来なけりゃ大丈夫だ。あのオッサンの場合、出る予定の場所すぐに、同じような魂が居たから危なかった」
「ラケシスさん…大丈夫なのかしら。また戻る事は出来ないの?」
「1周回ってくりゃ、また行けるけどな…」
「1周ってな…に」
ルーナが、そう言った時だった。
突然、大きな地鳴りがし、地面が激しく揺れ始める。
すると村のあちこちから、灰色の大きな鎧を着けた手の様な物が、沢山生えてくる。
「な、何なの?!ヒック?!」
「これは…!?」
ルーナは、悟を閉じて抱え、ロラン、そして2人のフォルを連れて、逃げようとする。
しかし村の真ん中の広場に居た、ルーナ達は、その手に囲まれてしまう。
村人達も、異変に気付き、森へと避難している。
「か、囲まれているわ…」
小さなフォルは、泣いている。ロランも泣きそうになっていた。しかしルーナとフォルが、2人を守ろうと周りを囲む。
「お前ら、絶対にその中から出るんじゃねぇぞ!!」
そう言ってヒックは、ルーナ達の傍に何かバリアの様なものを出す。
「怖いよぉ~」
「フォル泣くなよぉ!」
「大丈夫よ、2人共…ヒックが何とかしてくれるわ…」
「ママ…パパは…」
(…ズルワーン…)
ルーナは、子供達と、悟を絶対に守る為、抱き寄せていた。
ヒックは、空へと飛び上がり辺りを見回していた。
「何処に居やがる…」
地面から2m程の巨大な騎士の様な物が、数十体出て来ている。
そして、それはヒックの張ったバリアへと進んで来る。
「…ッチ」
舌打ちしたヒックは、下へとすぐに降りて来て、バリアへ迫る騎士を、殴り、蹴って跳ね返す。
そうしていると、1人の少年がバリアの方へと走って来る。
幼いズルワーンだった。
「フォル!ロラン!」
逃げている途中に、2人を見かけ心配し、走って来ているのである。
それを見たルーナは叫ぶ。
「来てはダメよ!危ないわ!!」
しかし、ズルワーンはこちらに走って来るのを止めなかった。
するとルーナの子供のフォルが、バリアの中で立ち上がり、バリアの外へ出て、ズルワーンへと駆けて行く。
「フォル!戻りなさい!」
ルーナは、すぐに追いかけようとするが、幼いフォルと、ロランを置いて走る事に迷ってしまった。
「ヒック!あの子達を守って!!」
「チッ!待ってろ!!」
その時だった。
走るフォルに灰色の騎士の手が迫る。
しかしフォルは、手の平から火炎放射をし、その灰色の騎士を弾き飛ばしてしまう。
「な?!アイツ、スゲーな…」
「フォル…。早く!そのままどこかへ逃げて!!」
フォルは、ズルワーンへと到着すると、森へと走って行ってしまう。
そしてヒックは、バリアの側まで来る。
「いいか、ルーナ。良く聞け。狙いはお前の、その悟ってガキだ」
「な、なんでよ!?」
「俺と同じ理由だろ。多分…。少し違うだろうけどな…」
「何が言いたいの?!」
「このまま次へ行く。いいな?」
「え?!ズルワーンとフォルはどうするのよ!」
「さっき言ったろ、1周してくりゃ戻って来れる。このままここで、周りを危険に晒し、めちゃくちゃにされてもいいなら話は別だ?どうする?」
「ヒック…あなた…」
「分かったわ。行きましょう。ズルワーンとフォルを、信じるわ…きっと2人も私達を信じてくれるはずだもの…でも、この2人は…」
「連れてくしか、ねぇな!!」
そう言ってヒックは、バリアの真横を割って、時空の穴を開ける。
「さぁ!早く入れ!」
「フォル、ロラン!行くわよ!」
そしてヒックも、灰色の騎士の攻撃を弾きながら、時空の割れ目へと入って行く。そして、その間際。
「ヒック…か…僕はグレイだよ…」
という声を聞くのだった。





