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時空魔竜騎アースガルンプロット.  作者: 一ノ元健茶樓
魔竜騎の章
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鼓動

 

 ズルワーンとフォル、魔竜騎ズルワーンは森の中で立ち尽くして居た。

 先程まで交戦していた紫の魔竜騎ナスラが、突然、目の前から消えた為だ。


 フォルは直ぐに、森の上へと上昇して辺りを見回した。すると工場地帯の近くに、巨大な影が三体あるのを確認する。

 その中に魔竜騎ヒックの姿を確認し、フォルはズルワーンへと報告する。


「ズルワーン様!魔竜騎のロランがいます!」


 それを聞いたズルワーンは、少し怪訝な顔になる。


「分かった、少し様子を見ながら我々もそちらに向かおう…」


 そう言ってフォルとズルワーンは、魔竜騎ズルワーンの肩に乗り、森の中を工場の方へと進んで行く。


 一方、リュウロー、サラン、ギルバート、ナスラ、魔竜騎ヒックにロランとフォルは、サランがあの一言を放った後、沈黙を保っていた。


(な、なんなの…あの紫…きゅ、急に出て来たわよ…どっから…)

(わ、分からない。全く気づけなかった。それに…あの顔…めっちゃ怖いね…)

(あれは…恋に怒れる乙女の顔だわ…)

(な、なんだいそれ…)

(まぁ見てなさいよ…すっごいわよ…)


 ヒックの中で2人はこの様な会話をしていた。

 それはギルバートにしか聞こえていない。

 しかし、それを聞いてギルバートは沈黙を破る。


「ナ、ナスラさん!あなたは一体何をっ!」


 そう叫びながらサランをお姫様抱っこして、魔竜騎リュウローの口を飛び出すギルバート。

 そこへ魔竜騎ナスラが近付いていた。

 それを捕まえようとする魔竜騎リュウローを、魔竜騎ナスラは後方へと蹴り飛ばす。


「邪魔よ」


 という、一言を添えて。


 そしてナスラはギルバートを捕まえようと、空中のギルバートへ手を伸ばす。

 まだ上手く飛べず空を走る事しか出来ないギルバートは、サランを抱えて逃げようとするが、ナスラの手に捕まってしまいそうになる。

 ギルバートはサランを、ナスラの手から遠ざけようとするが、そこへ魔竜騎ヒックが寝転んだまま近付き、魔竜騎ナスラを蹴り飛ばす。ナスラは先程、自らが蹴った魔竜騎リュウローの側へと吹き飛ばされた。


(やったわね!)

(片足だけなら何とか…)


 ギルバートとサランは、魔竜騎ヒックの胸へと着地する。


「大丈夫かい?サランちゃん…」


「は、はい…大丈夫です」


「なら良かった。それにしたって、一体なんなんだ…この状況は…」


「その姿は、なんなんですか?」


 サランの質問にギルバートも「分からないんだ…」と答えた。


 魔竜騎サランとリュウローが起き上がり、こちらへと歩み寄る。

 硬直するギルバートとサラン。

 そこへ声が聞こえる。


(ちょっとそこの金髪仮面!あんたの役目は私達を動かす事なのよ!?空を走り回る事じゃないの!)

(そ、そうなんだ。この状況を打破しようと、僕らはユニリンクしたんだけど、どうしても2人で上手く動けなくて困ってる。それを君が外側から、強制的に動かして欲しいんだけど…)


 2人の声を聞いてギルバートはまた(忘れていた)という顔をする。


「分かった。君たちが僕達にチカラを貸してくれるんだね。どうすればいいんだい?」


 突然立ち上がり、背を向け1人で話し出すギルバートに驚くサランは声をかけた。


「ギルバートさん?急にどうしたの?」


 突然すくと立ち上がるギルバート。


(ただ心の中でイメージしてくれればいい。その子を守りたい、その気持ちで僕達を動かしてくれればいい。君になら出来るはずだ…)


「分かった!やってみよう!っと、その前に…サランちゃん、ここは少し危ない。離れて隠れてよう、僕が安全な場所まで連れて…」


 そう言って後ろを振り向き、サランに手を差し出すギルバート。


 しかし

 そこにサランの姿は無い。


「く…よ…?!」


 驚きのあまり声が出ないギルバートは、直ぐに辺りを見回した。

 が、サランの姿は無かった。


(上よ!)


 ヒックの中のフォルが叫ぶ。

 ギルバートは直ぐに上を見た。

 するとそこには、もう1人のフォルが、、サランを大きな金平糖のような形をした、半透明の魔法牢に閉じ込めている。

 サランは何か叫んでいるが、その声は聞こえない。


「サランちゃん!!」


 ギルバートは叫びながら空へと駆け上がる。


「うおおおおおおっ!」


 そしてフォルへと向かって体当たりするが、余裕で避けられる。

 ギルバートは空中で勢いがつきすぎて止まれずに、空を駆け上がる。

 それを気にもしないでフォルは、ズルワーンの方へ戻って行く。


「こちらの女で良かったのですか?宝石が刺さったのは、あの仮面の方では?」


 魔竜騎ズルワーンは森を進み、近くまで来ていた。頃合を見計らって出て来たのだが、ズルワーンが宝石の反応を探りサランを奪還するようにしたのだ。


「ああ、何故かは分からないが、この娘から宝石の反応がある…それに奴の胸に宝石は無い」


 そう言ってサランが閉じ込められている物体の中へ、手を入れて、ズルワーンが持っている宝石の欠片をサランヘと押し当てる。すると宝石は光り輝きサランへと吸い込まれてしまう。

 ズルワーンは少し不思議そうな顔をする。


「えっ…」


 ギルバートを見ていて気づかなかったサランは、突然の事に驚き、そして意識を失ってしまった。それを空中で見ていたギルバートは、フォルとズルワーンへと向かって空を走る。


 しかし今回はリュウローへと放った、あの一撃と同じ方法をとる様だ。

 握り拳に、光が宿る。


「しかし奴は何なのだ…魔導師か?操縦者となっているのか?まぁ、どの道、問題は無いが…それよりも、この娘は…」


 ギルバートが向かって来るのを気にもせず、サランの方を見るズルワーン。

 ズルワーンがサランへと近寄り、何かを唱える。

 するとサランは、すぐに気を取り戻す。


 ギルバートはそれを見て、怒りの形相となり拳を振りかざして突撃する。

 が、しかしフォルが即座に割って入り魔法防御壁を作る。

 ギルバートは拳を、その壁へとぶつけて激しい光を飛び散らせるも、強力なチカラに弾かれる。


 それはギルバート自身に反射し、余った勢いで壁に突撃して、そのまま弾かれてしまう。


 弾かれた勢いで墜落するギルバートは、フォルに捕まっているサランと目が合う。

 聞こえないがサランの口は動いていて、何かをギルバートに向かって叫んでいる。

 遠のくサランの瞳には

 涙が浮かんでいるのが見えた。


 すると突然


 魔竜騎ズルワーンが、ギルバートへ向かって体当たりをして来る。

 宙に浮いているだけの状態のギルバートは、それに当たって更に、勢い良く地面に向かって吹き飛ばされる。そしてギルバートは、凄まじい勢いで大地へ叩きつけられた。

 そしてズルワーンは、そのギルバートの上を通り過ぎ、同じく大地へその巨体を擦る事となる。


「大丈夫か?!フォル!フォルッ!!」


 ズルワーンとサランは先程の位置に浮いているが、魔竜騎ズルワーンが突然、後方より吹き飛ばされて焦っていた。そしてフォルも巻き添えを食らった様なのだ。


 魔竜騎ズルワーンを吹き飛ばしたのは魔竜騎ナスラだ。ズルワーンとサランの後ろに赤い目をした顔が見える。


「コイツは…何処から…っ!?」


 振り向いたズルワーンは咄嗟に、魔法牢と共に空へと退避しようとする。

 しかし奇襲を突いた、魔竜騎ナスラの方が早い。

 ナスラの巨大な手に弾かれて、ズルワーンも森の中で、大地へと勢い良く叩きつけられる事となる。


「…くっ、サ、サランちゃん…」


 ここまで無理を押して、頑張って来たギルバートの疲弊は激しい。

 そろそろ限界が近い様だ。

 起き上がるのがやっとで、その場から動けないでいた。

 泥と血だらけの全身、ボロボロの顔、その目は仮面に覆われ見えないが…虚ろだろう。

 しかし顔を上げて、サランが何処に居るのか探している。


 後方でズルワーンが起き上がる音がする。

 その時ギルバートの横に、魔竜騎リュウローが大きな音を立てて足を着く。

 どうやら後から来た魔竜騎リュウローと、魔竜騎ズルワーンとフォルが交戦している様だ。


「ズルワーン様は?!」


 魔竜騎リュウローと交戦しつつ、ズルワーンを心配して自身が飛ばされて来た方向をみる。すると魔竜騎ナスラがサランの魔法牢を掴み、魔竜騎リュウローと魔竜騎ズルワーンが交戦する方へと走って来ていた。


 吹き飛ばされた青白髪のズルワーンは、フォルが無事なのを、魔竜騎ズルワーンが動いている事で確認し、その場でただ傍観している。


 そんな激しく魔竜騎3体が、交戦している足元に居るにも関わらず、ギルバートは動けずにいた。

 その激しい音も、衝撃も、そしてサランの事さえも、その意識から遠のいて行く。


 ギルバートは上を向いたまま後ろへ倒れ込み、目は閉じられ、その顔から仮面は消えて、マントも消える。

 胸には宝石が刺さった穴がある。

 血は流れておらず、黒く固まって胸に黒い穴を作っていた。


 魔竜騎ヒックの中の2人は、ギルバートの意識が消えたのを感じとる。

 そして三体が交戦しているのも見えている。

 しかし魔竜騎となった2人だが、上手く動かせない魔竜騎には…いや、魂の形しか持たない2人には、この状況をどうする事も出来ない。このまま飛び込んで、ギルバートを危険な目に合わせる訳にもいかず、ただギルバートの無事を祈りながら、傍観する事しか出来ない。


 魔竜騎ナスラの拳が、魔竜騎リュウローの装甲へ、メリ込む程の拳を叩きつける。

 しかし、その瞬間に魔竜騎ズルワーンがナスラへ拳を叩き込む。

 三つ巴の交戦は、激しさを増して行く。


 魔竜騎ナスラへ向けられた攻撃により、握っていたサランがナスラの手からこぼれる。その金平糖の様な魔法牢は、大地へと落ちると少し転がり、気を失うギルバートの横までサランを運んだ。


 気を失っているギルバートを見たサランは、中から何度も魔法牢を叩き、ギルバートの名前を呼ぶが、その声は外へ一切聞こえない。


 その時、サランの上から魔竜騎の足が降って来る。


「アンタは…私のギルバートに…近づかないで…」


 その足は、魔竜騎ナスラのものだった。

 ナスラは足にどんどんチカラを込めて行く。

 魔竜騎ズルワーンは、魔竜騎リュウローと交戦していて動けない。

 サランの魔法牢にヒビが入る。

 ガラスにヒビが入るような音が響く。


「潰れなさいよ…ギルバートは…渡さない…」


 ナスラの赤い目が、より一層強く光る。サランはギルバートから目を離さない。

 魔竜騎ナスラに踏まれヒビが入る魔法牢の中から、壁を叩いてギルバートへと向かって何かを叫んでいる。

 金平糖の様な形の魔法牢の全体に、ヒビが入り小さな欠片が辺りに飛び散る。


 ナスラの足は、チカラを弱める事は無い。


「…ググッ…グァッ!!消え…ろぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 魔竜騎ナスラは魔法牢、いや、サランへ向けて全力で足を踏み込んだ。


 その一瞬。


 全体が崩れるより先に、叩いていた壁が割れて、サランは前方へ飛び出す。


「ギルバートが!大好き!!」


 サランの声が世界に響く。


 魔竜騎ナスラの足と割れた魔法牢、それと大地の隙間。

 転がる様に飛び出したサランは、手を強く大地に着いて、その手を後ろへ弾く、それと同時に、足を交互に全力で蹴り出し、身体を前進させる。


 その先に居る、ギルバートへ向う。全力で。


 そしてナスラの足と大地の間を、転がり出たサランは、横たわるギルバートへと飛び込む。


 その手は、すぐに2人を繋いだ。


「ギルバート!ギルバート!!」


 胸に何か血が全身を巡る様な、温かく熱いものを感じ、それはサランの鼓動を早くして頬を染めさせる。

 その熱と、鼓動はギルバートへと伝わり、ギルバートの意識を揺り起こす。


 砕けて弾けた魔法牢の欠片が、魔竜騎ナスラの踏み込みの風圧で飛んで来る。


 それは綺羅綺羅と宙を舞い。

 胸のときめきを加速させ。

 世界が2人を包み込む。


 目を開けたギルバートは輝く夜空と

 その綺羅綺羅と


 涙で笑顔な

 頬を染めた瞳の輝きが


 輝く世界と同化して。


「綺麗だ…」


 とただ呟いた。


 手を感じ、その温もりを握り返した。


「ギルバート…」


 そして2人の心の全ては、通じ合う。


 今、本当の世界が2人を迎え

 2人はそれを受け入れる。


 握った手を一旦、離し。


 2人は小指を近づけた。


 そして、その小指を絡めて、胸に響く言葉を世界へ放つ。




「…ユニリンク……」




 2人は輝き、空を舞う。




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