工場
青く光るロランから、聞き慣れない自身の名を言われ、ロッシーは困惑する。
「ロッシー…ロットバニル…って、私の、事?」
ヒックの身体は、青い炎で包まれている。その中から出てきたのは、ロランと名乗る少年だった。
「君に重大な話がある。こんな機会が来るとは思っても見なかった。両腕が切り落とされる、というよりヒックの身体に異常が起きる事は、元々予測されうる事だったのに…僕もバカだな。これならヒックの方が…」
と言いながら。ロランは少しハニカミ笑っている。
「ねぇ、ヒックは自分がロランだって言ってたわ。中で眠って居るのはヒックだって。だから名前を変えてるって」
ロッシーは少し戸惑いながら質問をした。頭の整理が追いついて居ないようだ。
「そうだね。それじゃ僕達二人ともロランになってしまうね。そうなんだ。僕達はヒックの身体と魂に居候させてもらっている。そんな感じかもね」
まだハテナ?顔のロッシー 。
それを見て詳しく話を続ける。
「ヒックっていう人は特異点だったんだ。とても良い人で、僕達の世界を旅して回ってくれて。色々と歪みを直してくれていた。でも、ある日、それに気づいた科学者が居た。そう。あの青白髪の男だ。名はズルワーン・ロットバニル。君の父親だよ。ロッシー」
「え!?は?!いったい何を言って…」
ロッシーは飛び上がり、目を丸くしてロランを見ている。
「ズルワーンというのも沢山居る存在だけれど、君の父親となるズルワーンは、あの青白髪の男ただ1人だ。そしてアイツは世界を、いや、万物創世、全てを書き直すつもりなんだ。フォルヒックトゥーナという女性、ただ1人の為に…」
話をただ聞いていたロッシーだったが、さっぱり意味が分からずに、ただ呆然として聞くだけだった。。。
「おっ昼ごはーん♪お昼ごっはーん♪」
サランはいつも、重機の梯子を降りて来る時に、この歌を歌っている。昼と言っても夜勤なので夜中なのであるが…。
下ではリュウローが待っててくれている。
食堂へ向かう途中、ギルバートが後ろから追いかけて来て、サランを呼ぶ。
「サランくぅぅぅぅぅんっ!!!」
サランとリュウローは、一瞬ギクッ!となり。聞こえないフリをしながら早歩きをする。後ろは絶対に振り向かないという暗黙の了解がある。
ギルバートの足音が早くなる。
走って来る。
2人も走りだす。
ギルバートは叫ぶ。
「待ちたまえ君たち!僕の声が聞こえているだろう!何故走る?!待ちたまえ!」
2人は振り返らずに、食堂へと入って行く。
食堂には工場で働く者の、長い列が出来ている。そこへリュウローとサランは紛れ込み姿を隠す。
この日もギルバートは、あの木を蹴って叫んだのだった。サランの名を。
「サランちゃああああああああああん!!!!」
身震いするサラン。
そしてサランへのハードルが上がる、喫煙所の男達。。。
(サラン…ちゃん…)
ギルバートは事務所へ向かう途中、同僚の事務員、ナスラに会った。
「あっギルバート部長補佐、探しましたよ。部長が今、外出中なんですけど、お客様がいらっしゃってますので、ご対応お願いします」
「あ、ああ。そうなのかい?お客様…そんな予定、聞いていないが…了解した。私が対応しよう。余計な手間をかけさせてしまったねナスラ君。あ、これ、さっきそこの自動販売機で買ったんだ。コーヒー、飲めたかな?あげるよ」
そう言われてナスラは、頬を染めながら下を向いて
「あ、ありがとうございます…」
とだけ言いコーヒーを受け取った。
客人が待っている部屋のドアを、ギルバートはノックをして中に入った。
「失礼いたします。私、ギルバートと申します。只今、部長が席を外している為、お客様のご対応は、私が承りますが宜しいでしょうか?」
ソファーに座っている客人は、ギルバートを見て
「ああ、構わないよ。私の名はズルワーンだ。よろしく頼む」
と言いながら、光る板のような物を白衣のポケットから取り出した。
「失礼します」
とギルバートは向かいのソファーに座って、何やらズルワーンと、図面の様な物を見ながら話している。
ギルバートは驚いた顔をして、ズルワーンを見て固まっている。
「そ、そんな事が可能なのですか?!本当に…」
「あぁギルバート君、キミが望むなら、だけどね…」
そしてまた、2人は、話を再開する。
ドアの外にはナスラが真剣な顔で
立っていた。





