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時空魔竜騎アースガルンプロット.  作者: 一ノ元健茶樓
魔竜騎の章
21/129

トライアングル

 


 ロッシーは泥のように眠っていた。疲れていたのだろう。だが目の前は明るくなって来ている。深い眠りだったのか、寝てから時が経った意識はない。


「う、うぅ、、、んっ」


 目の前が明るくなるにつれて、ロッシーは起きなければならない、苦しみに襲われる。

 いつまでも寝ている訳にもいかない。重い瞼をどうにか少し開ける事が出来た。滲む視界、、、青い、、、何だか青い、、、。

 ロッシーの思考はまだ眠っていたが、その異変に、思考は飛び起きた。

 そしてロッシー本人も飛び起きた。


「わっ!わわっ!!あ、青い青いっ!!何これ!?何これ!!?青い火事?!ヒック?!大丈夫?!ねぇ!!!」


 ロッシーは四つん這いで、ヒックの近くに慌てて近寄り、叫んでいる。


 と、いうのもヒックの両腕の黒い切り口から、大量の青い炎のようなモノが、大量に噴出し、ヒックの身体全体を覆い、炎の頭は、背の高い木の中程まで伸びていた。

 その青い炎が辺り一面、森を照らし、朝の様な明るさを放つ。

 ロッシーは考えていた。


(な、何なの、この火は…てか、火、よね?あんまり熱くないっていうか…少し冷たい…ううん。なんだか寂しい、みたいな。。。)


 その時、一瞬、炎の揺らめきが荒々しくなった。そしてロッシーは声を聞く。


「初めまして、ロッシー。ヒックがいつもお世話になっています」


 ロッシーは突然の声に戸惑い、辺りを見回すが、声の方向は明らかに、青い炎からだった。

 声がする青い炎の方へ、顔を向けると目の前に、歳は15歳位だろうか?腰に剣を携え、身体には木で出来た、練習用の防具を付けた、薄らと青く光る男の子が立って居た。


「だ、、、誰っ?!どっから来たの?!」


 少年は何も言わず、人差し指だけを、眠っているヒックへと向ける。


「僕はロラン、今まで魔竜騎として君とユニリンクして来た。知ってるよね?」


「え、あ、、、うん。。。うん?えーと、、、あ、あんまり、、、知らないかも、、、」


 突然の事に、ロッシーはあまり頭が冴えていない様子。


「僕は彼の身体の中で眠っていた。通常そのまま、彼が死ぬまで眠り続け、僕も同じく眠ったまま、死ぬはずだったのに、アイツがヒックの両腕を切るなんてするから、僕は彼が眠っている間に、こうして腕から漏れだし目覚めてしまった」


 口をあんぐり開けて、聞いているロッシーを見ても、気にせずにロランは話を続けた。


「でも、この緊急時に出て来れて良かった。いや、あの人がこんな時の為に、こう出来る様にしてくれてたのかもしれないね。そして僕は君に、大切な事を伝える為に出て来たんだ。起きてくれて良かったよ。ロッシー・ロットバニル」



 時を同じくして、ヒック達を追う為に時空移動をする、ズルワーンとフォルと魔竜騎ズルワーン。


「どうですか?ズルワーン様?」


 尋ねるフォルを、見ていないズルワーンが答える。


「ヤツめ、あの女が残したチカラで、時空転移した様だ。時空の歪みが通常の振動と似ていて、振動が読み取りにくい。なかなかに、時間がかかりそうだ」


 そう言うとズルワーンは、片手に収まる程の、四角い透明な板の様な物に映る、グラフを見つめ続けている。


「ズルワーン様、時空の切れ目にぶつかりそうです!しっかりと何かに捕まるか、魔竜騎の口の中へ退避お願いします!」


 そう言いながらフォルは魔竜騎の頭、先頭へ走り魔導シールドを展開する。


「ありがとう、フォル」


 シールドを張ったフォルを少し流し見て、また手の光る板に視線を返す。


 何もない真っ暗な空間を移動していた魔竜騎ズルワーンは、突然、何かにぶつかった様な大きな衝撃を受ける。

 フォルとズルワーンは足元が揺れた為、少しよろめく。

 フォルのシールドが、魔竜騎ズルワーンの頭部全体を覆い、その外を黒い透明な、ガラスの破片の様な物が乱れ飛び、世界は急に微かな光を取り戻す。


 空は割れ、黒い空間から、魔竜騎ズルワーンが飛び出して来る。


 そして上空へ停止して、この世界を見渡す。

 一行を月明かりが照らし、その下には工場の様な施設が、辺り一面に広がっていた。


「あれはなんでしょう?ズルワーン様」


 フォルも見た事が無い施設なのだろう、ズルワーンに尋ねる。

 ズルワーンは、顔を上げて工場の様な施設を見下ろす。


 プラント8、煙突から漏れ出る光と煙。外へと順次、規則的に運ばれてくる、魔竜騎と同じくらい大きい人型の何か。


「ふむ、これはこれは。ここは少し厄介そうだが面白い。ヤツらの事は後回しにしよう、君たちの休息も必要だ、どこか休める場所に、身を隠すので移動してもらおう」


 フォルは、ヒック達の事を後回しにする。と言うズルワーンに驚きながらも「はい」と答え、魔竜騎ズルワーンを工場から離れた、山の裏の谷間へと移動させた。



 ― その時と同じくして ―


 工場内に休憩のベルが鳴り響き、アナウンスが流れる


 〈ライン3から5は、夜間休憩、02:45より作業再開、以上〉


「はぁ~、休憩休憩っと!」


 そう言いながら、シールド付きヘルメットを外す、この少年はリュウロー、歳は18で、この機兵製作工場に務めて2年。右腕パーツラインの、関節部溶接担当として働いている。今から45分休憩に行きます。


「あーん!毎日毎日まぢだりぃ~」


 そう言いながら梯子を降りて来る、この少女サランも、歳は同じく18で、この機兵製作工場に務めて2年、右腕パーツラインの関節部、重機操作担当として働いている。今から45分休憩に行きます。


 2人は食堂で食事をしている。

 2人は幼なじみで同じ村出身。

 貧しい家族を支える為に、16の時、村を出て2人でこの工場へ、出稼ぎにやって来た。

 家族に会えないのは寂しいが、2人で何とか毎日楽しく過ごしている。

 今のところは、特に何も問題はない。


 1つを除いては。


「やぁ、御二方。今日も元気に働いているかい?サラン君、隣、いいかな?あ、僕のお肉を少しあげようか?食べる?」


 その1つが、コレである。


 彼、ギルバートは作業着で無く、工場の制服を着ている。歳は21。リュウローとサランより少し年上で、見た目は美形、工場の両腕パーツ製作管理部2課で、右腕パーツライン管理部の、部長補佐をしている。彼も只今45分休憩中です。


「サラン君、仕事どうだい?ラインが厳しいなら、僕の管理部にすぐ移動させてあげるからね。いつでも言っておいでよ。はい、お肉」


 と言いながらまだ口を付けていない箸で、チキンの真ん中1番大きい所を取り、サランの食べている、豚カツ定食の空いている所にそっと置く。


「サランはダイエット中なんですけど。ギルバート部長補佐」


 それを見ていたリュウローが、口を挟む。

 リュウローを睨み、チッと舌打ちをする。


「そ、そうなのかい?サラン君?」


 と汗をかきながら、サランを見つめて答えを待っている。


「まぢ、肉サンキュ!って感じっす。ギルバート部長補佐。ダイエットは明日からしまっす☆」


 そう言って、チキンを口に運ぶサラン。


「デブるぞ」


 チッと舌打ちしたリュウローが、サランを睨みながら、放つ一言。


「は?!チキンはヘルシーだろが!バッカじゃねーの?!マヂ意味ワカメだし!」


 チッと舌打ちしたサランが、対抗する為に放つ一言。

 その言い合いは少し続く。


 それを見ていたギルバートが、またチッと舌打ちし、机をバンッと叩き立ち上がる。


「失礼する」


 自分のチキンステーキ定食を、食堂の返却口へと返して、何処かへ行ってしまった。


「ありゃ…また」

「な、なんなの…あの人」


 2人はそれを何も言わずに、見送った。

 いつもの事なのだ。


 そしてギルバートは1人、工場の外で、木を蹴っている。木の向こうは高さ3mくらいの壁になっていて、人は殆ど来ない場所だ。電灯も無く、月明かりだけがギルバートを照らす。


「な、なんなのだ!アイツらは!私を無視して、いつもイチャイチャとっ!楽しそうに田舎者めっ!!アイツら許さん!!いやっサランちゃんは許す!」


 そんな事を叫びながら、木を蹴り続けている。

 これは1年程前から、何度も繰り返されている作業で、お決まりの場所、お決まりの木なので、木の根元より少し上がすり減っている。


 そしてギルバートは、月に向かって叫ぶ。


「サランちゃあああああん!!!」


 ギルバートは、気付いていないが、この木の奥壁の向こうは、プラント7工場の外で、喫煙所になっている。

 喫煙者一同は思った。


(またアイツか。。。サランちゃんて、そんなに可愛い子なの…?)と。


 そしてサランはいつも叫ばれた後で、寒気が来て身震いする。


「うわっ…」


 それを見たリュウローが声をかける。


「お、またか?なんなんだろな、それ。まぁ、大丈夫だろ。お前丈夫だし」


「ちょ、心配しろしー!」


 2人は笑う。

 作業再開のベルが鳴る。


 2人はまた作業へと戻った。。。





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