涙の塊
フォルは空を割って突如として現れた物体と、少女に驚いていた。
が、その物体と少女も同時に驚いていた。
ヒックとロッシーは、意思疎通を喋らずに出来る。
(ちょおおおおっと!ヒックさん?!?!なんか着替えてるけど、あの赤い服の子が!目の前に!いるんですけどぉぉぉぉぉぉっ?!?!)
(いいいいいいいいいいいっ?!?!な、なんでフォルが!ここに!居るんだよっ!!!!んなワケねええええええええだろ!)
こんなに相手が、焦っているとは考えていないフォルは、杖を構えて戦闘態勢に入りながら、その正体不明の者達を問いただす。
「あなた達は何者なの?!私の名は、魔道ノ君人フォルヒックトゥーナ!エゲリアの者なの?!それとも敵?!」
ロッシーは、頭の中でクエスチョンマークが乱立している。が、ヒックは少し思い当たる所があるようだ。
ヒックが、魔竜騎状態のままフォルへと語りかける。
「驚かないでいて欲しい、俺だ、ロランだ、、、」
フォルは、想像もしていなかった答えに狼狽し構えていた杖を下ろし、こう続ける。
「本当、なの、、、?」
怪訝そうな顔を浮かべ、魔竜騎のヒックを見つめている。
「それなら信じさせてやる。見てろ」
そう言ってヒックは、眩いパチパチとした光を放ち、人の形へと戻る。
それと同時に、ロッシーもパチパチとした光を放ち、いつもの服へと戻った。
光の中から現れたロランを見たフォルは、息が止まり、見開いた目からは、また涙が出て来そうになる。
「ロラ…」
「うっわああああああああああああっ!」
人となったヒックは、飛ぶことが出来ずに急降下している。
そして、魔竜騎ヒックの頭に乗っていただけのロッシーも、同じく落ちて行く。
「うっぎゃあああああああああああっ!」
「おい!ロッシー!早く飛行の魔法を…って!なんでお前も落ちてんだよ!!」
「だって私、飛ぼうと思って飛んでたんじゃないし、さっきは頭に乗ってただけなんだもん!!どーやって飛べば良いのよぉぉぉ!!」
その時、下にあるエゲリアと対立していた敵軍の基地が、仲間の成果なのか、破壊され大爆発を起こす。
その爆風が、上へと上がる。
「なんじゃこりゃああああああああ!」
「どうなってんのよおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
その真上から急降下しているヒックとロッシーは、爆風に巻き込まれ、また上に吹っ飛んでから下に落ちて行く。
ケンカしながら落ちて、吹っ飛んで行く2人を引きずった顔で見ているフォルは。
「…えぇぇ」
とだけ呟いた。。。
数分後、、、
「アナタ、魔導師なんじゃないの?空も飛べないなんて低脳も良いとこだわっ。私のロランに何かあったらどーするのよ」
「あ、あの…少し、離れっ…ぐぇ!」
フォルは、ヒックの身体に抱きついて離れようとせず、離れようとすると、凄いチカラでヒックを締め付ける。
「あ、あの…私、帰りたいんですけどぉ…っ!!」
知らない土地に到着早々、不幸に会い、なんだか良く分からないが、不快なモノを見せられてるロッシーは、右手を天高く大きく上げて発言する。
「…」
「…」
2人は、ロッシーを無言で見つめる。
「…んくぅっ!!!」
いたたまれなくなったロッシーは、振り返り森の中へと走って行ってしまう。そこにはロッシーの涙とおぼしきキラキラが、残っている。
ロッシーが、森の中へと消えて行くのを見ながら、ヒックは叫ぶ。
「夕飯までには帰って来いよおぉぉぉぉぉっ!!!!」
(というか、この状態で夕飯が作れるのだろうか…)
と思いながら、下を向くと腰に巻きついたフォルが、ゴロニャンゴロニャンと言いながらクネクネしている。
- 2時間後 -
日が暮れる頃ロッシーは、何故か野生の動物や山菜、毛皮などを持って帰って来た。
山育ちの性なのかもしれない。
「いやぁ!うめぇなぁ!この肉、最高だぜ!ありがとよロッシー!」
テンション高く、スプーンを振りながら感謝するヒック。
「ボンクラ魔導師にしては、なかなかやるわね。美味よ!」
何故か、その場に立ち上がり、上から目線で褒めて来るフォル。
「…ズズッ」
野生の動物の肉が入った山菜鍋を、テンション高く平らげる2人に比べてロッシーは、1人黙々とスープを啜っていた。。
「おい!どうした?!そんな食べ方じゃ、身体に栄養が吸収されないぜぇ~?!」
「そうよ!ロラン、私が食べさせてあげるからねん!はい、ア~ン♡」
「いや、そーゆのはイイで…ん!んががががっあづっ!あづいっ!!ぉぼっ!!!」
拒否するヒックの口を左右から強く押して、無理矢理開かせ、鍋からダイレクトにすくったスープを口に流し込み、その熱さで悶えるヒック。
そしてスープの進撃は、目や鼻にも飛び散り、悲惨な事になっているが、フォルの目はハートになっていて何も見えてなさそうだ。
「おい、ぶお!ロッ!んぐ!助け!ングガガガガガッ」
食べ終えたロッシーは、毛皮を頭から被り、耳を手で抑えながら寝てしまった。
「帰って…本が…読みたい…」
と小声で呟きながら。
翌日3人は、フォルの案内でエゲリアへと向かう事になった。
相変わらずフォルは、ヒックに腕組みをして離れようとしない。
ロッシーは、寝たからか、慣れたからか、少しこの状況に慣れて来ている。
「ねぇ、2人は前から知り合いなの?」
ロッシーは、2人に問いかける。
するとフォルが、歪んだ顔でロッシーを睨み答える。
「はぁ?!前から知り合いぃ~?んなもん、こおおおおんな、ちっさい時からの幼馴染で、許嫁なのよ!私とロランは!」
「ロランって、ヒックの、事、よね…?」
ロッシーは、そう言いながら、また頭にクエスチョンだった。昨日から疑問に思っていた質問を投げてみるも、想像通りの
「当たり前でしょ!」
という返事が、フォルから返って来るだけだった。
そして逆に
「あんたは誰なの?!ロランの何なのよ!」
という質問をされてしまう。
「私と…ヒックは、その、なんて言うか、何なの…?」
困り笑いをしながらヒックに助けを求めるが、ヒックは空を見ながら口笛を吹く、という古臭いとぼけ方をして、誤魔化そうとしている。
が、フォルも気になるようでヒックへと詰め寄る。
「ロラン!この女は誰なの?!浮気なの?!てかヒックて何?!あの時、死んだんじゃなかったの?!ねえ!!」
「え、死んだ?」
ロッシーは、ビックリして口から言葉が出てしまったようだった。
「そうよ!ロランは、あの時、青白髪のメガネ男に、胸を貫かれて倒れて、、、死んでいたのよ!それがあんな風に、また私の目の前に出て来てくれるなんて…夢みたい、ううん。夢なんじゃないかと思って、離れたくなくて、、、私」
フォルの目には、涙が集まって大粒になろうとしている。
「そのロランと俺は、同じだ。でも俺は、ヒックでもあるから、そのロランとはやっぱり少し違うのかもしれない」
何を言ったのか、良く理解出来なくて、涙を貯める事を辞めたフォルの目から、重力に逆らえない大粒の涙が、意思とは無関係に頬を伝った。。。





