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仕事終わりにヤニ吸ってたらどこか残念な年上女性に執着されてた件  作者: 熊鏡
プロローグ

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4/27

第4話


 あれから数日。俺と水上さんは休日特に会うなどはせず、平日のヤニ吸いだけに留めていた。

 そんな折。


 :真壁さんってゲームとかしてる?

         ゲーム?ケプラとはやってるよ:

 :ケプラやってるの!?今日帰ったらやらない?

                   おけまる:

 :じゃあ退勤後に喫煙所で!!!

                     りょ:


 ケプラは友達とよくやるゲームだ。

 ケプラと呼ばれる人化した軟体動物がインクを弾薬にした銃とか武器で対戦するゲーム、

 TPSではあるがエイムの重要性が他ゲームより低いし、ルール関与をしっかりすればキルレが低くてもチームを勝ちに導けるのがいい。

 まぁエイムがあって悪いことは無いのでそこは人によって理解とか心情が分かれるとは思う。


「今日は友達とゲームやる予定もないし、ちょろっとやるだけでいいか」


 ま、そんな長引きはしないだろ。

 いつも通りの昼休みにタバコを吹かして、今日も午後の地獄(勤務)に備えてエネルギーチャージを済ませていた。


 ——————————————


 仕事を終わらせていつも通りの帰り道。

 喫煙所の中に入ると、今日は水上さんの方が早く終わったようで。

 据えた目でタバコを吸っていた。


「お疲れ様」

「お疲れ様ー」


 ここ数日でわかったことといえば、意外と水上さんはフランクで緩いこと。

 パクチーを蛇蝎のごとく嫌っている事。

 ニンニクマシマシの家系ラーメンが大好きなことだった。

 家系は割と好きなので個人的には親しみやすさがあって嬉しい。

 と、考え事もそこそこに。オイルライターに火を灯して、タバコに火をつけた。

 口腔に充満する煙を肺に入れて、上を向いてため息と共に吐き出す。


「ふぅうううううう⋯⋯」


 ああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ⋯⋯

 こ の た め に 生 き て る 。

 肺から血を巡って脳みそに充填されたニコチンが幸せをくれる。

 肺にへばりつくタールも、身体を犯す物質も知ったことでは無い。

 ストレスが心を殺す前に、俺はこの心を護っている。

 好ましいといえば水上さんのスタンスだ。

 仕事終わりの一服。その一吸い目を慮ってくれる。

 落ち着くまで話を広げない。

 まじでたすかる。


「今日はちょろっと吸って戻ります?」

「まぁー今日はケプラが主役ですからねえ」


 と、続けてから。ハッとしたように水上さんはこちらを振り向いた。


「オデ。敬語禁止。言ッタ」

「うす。すいません」

「すいません???」

「ごめん」

「イイヨ」

「アリガチョ」


 そのまま二人でケラケラ笑ってしまう。


「真壁さんはガチでやってる感じー?」

「全然。友達とゲラゲラ笑いながらやってるくらい」

「あねー。フェスとかはちゃんとやるみたいな?」

「そそそ」

「あるあるだねー」

「あるあるっすねー」

「⋯次はないぞ」

「怖すぎだろ」


 ちょっと漏れるくらいは許せよ。


「敬語。ダメ」

「うい」


 しかたないにゃあ。

 そうして、ふたりでタバコを吸い終わり、灰皿で揉み消した。


「っし!一旦解散!!」

「じゃあまた後で!フレコ送っとくんで」

「おけー」


 と、雑談もそこそこにそれぞれ帰路に着き、トークアプリを開く。

 俺の方からフレコを送ってあるので、ゲームを開いて申請をチェックする。

 そのままフレンドになり、ケプラを開いた。

 トークアプリの方もチェックして、通話していいのかと聞く。


                 通話してい?:

 :いいよ!


 リプライを確認して、通話ボタンを押してスピーカーモードに。


『お!繋がったー?』

「繋がった繋がった」

『おけー。どする?やっぱゾーン?』

「まずはね」


 ゾーンバトル。お互いのチームが自分の色のインクでステージを塗って、最終的にステージの占有率で勝敗を決めるモードだ。


「水上さんゲームだと名前“ミズキ”なんすね」

『真壁くんは“レン”なんだね』

「わかりやすいんで」

『確かに』


 俺が選んだ武器は近〜中距離用のガトリングみたいなやつ。水上さんはスタンダードなハンドガン形式の武器だった。


『じゃあれつごー!!』

「うーす」


 いざ一緒に戦ってみると…


「一人やった」

『こっちも一人やった!』

「もう一人やった」

『ナイス!』


 めっちゃ戦いやすい。前衛つよすぎ神です。


「前衛強いと戦いやすいな」

『こっちも中衛強いと助かるよー』


 まぁーじで助かんなぁ。

 強い前衛いるだけで中衛はめちゃくちゃやりやすくなるし。捲らせない立ち回りも楽になる。


『いやーこれは気持ちよく終われるかもしれませんなぁ』

「勝って(気持ちよく)終わろう」


 さてさて。頑張っちゃいますか。



 ————————————


「『ナァーイスゥ!』」


 時間はもう午前一時。そろそろ寝ないと明日の仕事に響いてしまう。


「じゃあそろぼち解散かな」

『そうだね。明日に響いちゃうし』


 と、やけに名残惜しそうな水上さんの声に後ろ髪を引かれてしまい、こちらから少しだけアディショナルタイムを切り出した。


「…一服したら切りましょうか」

『んへへ、いいの?』

「まぁ」


 水上さんとタバコ吸わないと、平日も終わった気しないし。

 確かな本音は隠しつつ、仕方ないので。と憎まれ口を叩く。

 換気扇の下まで移動して、スイッチを入れる。使い古した蓋付きの灰皿を開けて。オイルライターに火を点ける。咥えたタバコに火を灯し、肺に煙を取り込んで、吐き出す。

 たったこれだけで何となく楽になるのだから安いものである。


「『ふぅーーーーー…』」


 と、吐く息がかぶる。


『仲良しじゃあーん』

「気が合いますね」

『ふふん。でしょう?』


 そういえば、少しだけ敬語を混ぜる分には見逃してくれる様になった。

 ちなみにあからさまに距離を取ると殺される。南無三。


『なんならデートとかする?』

「酔ってます?」

『酔ってません!!』

「…男女が二人で出かけることをデートというなら前回の飲みも立派なデートでは?」

『まぁそれはそう。つまり一回も二回も変わんないってワケ』

「ほんと?」

『ほんとほんと。おねーさんうそつかない』

「ダメそーーーー」


 煙を吐く息がため息と重なる。全く困った人である。田舎から出てきた純粋な男を騙くらかさないでほしい。


『本気だよ?』

「は?」

『騙す気とかないよ。本気でデートしたいから誘ってんの』

「はぁ」

『うわ信じてなーい!』

「だって喫煙所から始まった関係じゃないすか」

『まぁ、君視点はね』

「は?それはどういう」

『教えてあげなーい』

「それはずるでしょうが…!!」

『かわち』


 最悪だこの年上。


『じゃあタバコ吸い終わったから私は寝るねー』

「俺もっす」

『おっけ。ほいじゃ』

「はい。おやすみなさい」

『ん。おやすみー』


 ピッ。と電子音が鳴って、それとともにタバコをもみ消した。


「はぁああああああああああ……」


 思わず蹲ってしまう。まじでどういうこと?どうすればいいの俺?


「狡すぎだろ」


 ああ、ちくしょう。勝てる気がしない。

 まだ、寝られる気がしなかった。



 —————————


「ぅあああああああ……!!!」


 めっちゃ距離詰めちゃった!めっちゃ距離詰めちゃったぁ!!!大丈夫かなぁ!?引かれてないかなぁ!?

 年内に堕とすとか豪語しといて距離感ミスって負けるとか恥ずかしすぎるもんさぁ!?


「でも、これで本気って伝わったよね?」


 髪型変えてカラー入れたのも。タバコを吸い始めたのも。おしゃれに気を使うようになったのも。全部全部全部あの時から。

 喫煙所から少しずつ距離詰めようとして全然できなくて泣くかと思ったけど真壁くんから助けてくれた。

 ああ…好きだなぁ。タバコに火をつけている時の据えた瞳も。雑に見えてこちらを気遣ってくれているところも。仲良くなったら意外と遠慮がないところも。


「ぜんぶ、すき」


 早く私の虜(もの)になってほしい。いいや。してやる。何をしてでも!

 だから。待っててね。


「絶対骨抜きにしてやるから」


 今日は、よく眠れる気がした。

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