エピローグ
「それで、どうなったの?」
「伯爵夫人は告発されて、伯爵は領費の使い込みが発覚。ご令嬢のエリザベス様は修道院にお入りになさるそうよ」
「あら~~」
クレアはイリスに顛末を話す。
「伯爵家を乗っ取ろうとして、伯爵家そのものを没落させてしまったのね。しかも、お嬢様はもう家を再興する気もない」
「そう。自ら修道院入りをご希望されてね。幼馴染の令息達が必死に引き止めなさったけど、ご意志は固かったわ」
「なんだか、方々がひたすら気の毒なお話ね」
「そうね」
イリスとクレアは揃ってため息を吐く。
「最初あなたに降霊を依頼したのは何だったの? お母様と話をさせて欲しいだとか」
「要は私のことを本物だとは思ってなかったようなのよね。だから、適当に話を合わせてくれると思っていたみたい。それを伯爵攻撃の材料にしようとか画策していたのに、私が降霊を失敗したと言うから計画が狂ったようなのよ」
「なるほどねえ。ともかく、リズが解放されて良かったとみるべきかしら。あと、レイルズ女史のご遺体が無事にご両親の元に戻ったことも」
「ええ。ご両親は悲しまれていたけど、取り戻してくれたとお礼を言ってらしたわ」
リズは再び本来の平民に戻った。母が心配するから、と働く先は酒場を止めて探したところ、ダリア夫人が息子の持っている商会で勤め人を募集しているというので、そこに行くことになった。
リズの母は実は伯爵家にいた頃からこっそりと内職として繕い物をしていた。それを現在も継続している。
「はあ~~」
イリスが大きなため息を吐く。
「この話には致命的に欠けてるものがありますわ」
「欠けてるもの」
「頼りがいのある男性。つまり、スパダリですわ!」
「ああ~」
イリスの言葉にクレアは同意して頷く。リズに入れ込んでいたベニーも、エリザベスに侍っていた令息達もこれといって何かをしてくれることはなかった。なんとも頼りがなかったのである。
「あの騎士様どうなったの?」
「さあ。でも、もうリズの前には現れないでしょうね」
「リズにはきっともっといい男が現れますわ!」
「そうね」
クレアはうなずきつつ、最後にリズと会った日のことを思い出す。
リズは、働くと言っていた酒場に働けなくなったと詫びを言いに行ったのだ。クレアはなんとなくそこについていった。
そこで、リズにかつて淡い恋をしていたらしき平民男子とリズが再会したのだが……。
彼も、スパダリとは言えないな。とクレアは思い返す。その男子はリズが伯爵家に引き取られると聞いて逃げるように去ったらしい。それを改めて詫びて、またいい仲になろうとあわよくば思っていたらしいのだが。
リズからしてみれば、一度逃げられた時点でもう圏外なのだ。挽回するには、相当のことをしなければならない。
リズはなんだかんだしっかりしているので、最終的にはそういう男達をふるいにかけられるだろう。クレアはそう信じている。
「はあ~あ! どこかに美女を颯爽と救うイケメンがいないものかしら!」
「そうねえ」
クレアは同意しながらくすくす笑う。イリスの言葉は自分のことを勘定に入れてのものではなかったからだ。どこか他人事なその調子を笑う。
彼女達は今日も平和に有閑を満喫している。




