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第50話 絶対終焉

 私の絶叫が地下施設に響き渡った。


 聖也は、自分の腕の中で伽耶が血を吐いて倒れ込んだこと、そして、その伽耶を貫いたワイヤーが、自分のシルバーコードと酷似している事実に、頭が真っ白になっていた。


「な……なぜだ!?お前は消滅したはずじゃ……!」


 聖也が信じられない表情で、陽炎の鎧に問う。


「聖也、失望したぞ。俺が、お前にどれだけ時間をかけて、記憶と、技能を与えてやったと思ってるんだ」


「…なんだと?…クソが…頼んだ覚えはない」


 聖也は脇で倒れている伽耶に目を向けた。


「はぁあ…はぁあ…はぁあ…」


 かろうじて、伽耶の息遣いが聞こえる。


 彼は、小刻みに荒い息の荒い姉の姿をみて、致命傷ではないことに、とりあえず安堵した様子だった。


 次に擬似ブラックホールに視線を移した聖也は、さらに目を見開く。そこには上から下まで縦に一条の亀裂が走っていた。


「なんだ…あれは!?」


 ブラックホールの切れ目から,大量の霊体が滝の様に流れ落ちていく。その中には苧麻の布の残骸も数多くみられた。


「まさか、奴は…陽炎の鎧は、こいつら霊体のエネルギーを吸い取って、そのカスを排泄はいせつしていたのか!?」


 …そうか!奴は切り刻まれた苧麻の布をも,取り込んで、急激な再生を果たしたというわけか…


 聖也とアランの分析が私の耳にこだまする。だが、もはや、陽炎の鎧が復活した理由など、どうでもよかった。私の意識は、自身のキャパを大きく超えていた。


 あのシルバーコードも大蛇として銀次が使っていた技なので、それを陽炎の奴も使えるのは理にかなった理屈であった。


 もう…遅かったのだ。私はこの身体に流れる榊一族の血統にあらがえなかった。そして、伽耶が一命を辛うじて取り留めたことを知る前に…もっと言えば、彼女が,陽炎のシルバーコードに貫かれた瞬間に…リミッターが外れたのを自覚した。


「シュイィィィィーンン!!」


 崩れかかっていた白銀の翼が、みるみるうちに光沢を纏い、七色に輝き出す。


 砕け散った白銀の破片が、命の灯火を燃料にして燃え上がり、不吉なほど美しい極光オーロラつむぎ出したのだ。


 …友美さん…そっ…その翼の輝きは!?…知ってるぞ!昔、リチャードに聞いたことがある!…まさか!?…


 アランが驚愕きょうがくした。私が無意識に発した光は、目に捉えられる全ての命を…危うくは、己の命さえも無にする究極の光だった。


(これは…リチャードの最悪な実験データだ。この七色の光は、自らの命を起爆剤とするリーサルウェポン!…。


 銀次の復活を待って、封印術を得ようと思ってたが、どうもそんな悠長なことを言ってる場合ではなさそうだ…)


「陽炎…このクズ野郎…。貴様に実際の消滅より、確定的な精神の死を与えてやる。覚悟しろ!」


「ほう……これは面白い!その光……霊子の根源に触れている。だが、無駄だ!空間の法則を書き換える俺には無力………えっ!」


 私は陽炎の鎧との距離を一瞬でゼロにした。


 加速ではなく『短縮』。空間そのものを折り畳み、陽炎の計算を置き去りにして、左の強烈なアッパーカットを奴のみぞおちに打ち込んだ。


「ぐっ…ぐっうぇーっっ!!」


 たまらず喘ぐ陽炎に、間髪入れずに打ち込んだ頭上からの右のハンマーパンチが奴の頭部を粉砕した。


「大成!友美のやつ、一瞬で陽炎の野郎との距離を詰めやがったぞ!」


「ああ…。しかも、あれは俺の技か!…だが、威力が桁違いだ」


 …座標移動だ…友美さんは、この土壇場で陽炎の鎧の技を模写したんだ…


「アラン、盗んだってことかっ!…バカ孫のやつ…いったい、どうなっちまいやがったんだ…」


「きっ…貴様ぁぁ…榊友美ぃ…」


「ほう?頭部を粉砕したのに、まだ喋れるのか…まぁ、人のカタチに具現化されている身体なんぞ、ただの飾りに過ぎないが、視覚的にグロいぞ…お前」


 陽炎の鎧は、伽耶を貫いたシルバーコードを引き寄せ、その先端を私めがけて突き出した。


「調子に乗ってんじゃねぇぞ!猿真似は所詮、猿真似。本家には程遠いってことを教えてやるぜ」


「お前、何か勘違いしてないか?アトミック・デスが霊子の統合構造をゼロ化にすることを目的とするなら、いくら空間の法則を変えたところで,同じなんだよ」


「フン!いいか、榊友美!お前がいくら結合構造を無に変えようが、俺がその法則ごと変えればいいだけのことだ!」


 …やはり、そうだ!鶏が先か、卵が先って話じゃない…友美さんの、あの翼の輝きは…


「おい…アラン。さっきから何を言っている?それにお前、さっき、知ってるとか言ってたな?リチャードから聞かされていたとは、どいいうことだ!」


 …聖也…それは…


「俺も聞きたいぜ…バカ孫の身体に、何が起こってやがる」


 …分かった。だが、事態は急を要する!手短に話すぞ。おそらく、友美さんは自分の命と引き換えに、陽炎の鎧を自らの身体に閉じ込め、一緒に消滅するつもりだ…


「なっ…なんだと!!冗談じゃない…おい!アラン、銀次だっ!銀次を覚醒させるぞっ!シーカーズ・センスで奴に呼びかけろっ!!」


 …よし!分かった!…それしか、手立てはなさそうだ…


「チッ!バカ孫がっ…」


 大成が、時空の断層を発動させ、私の真横に現れた。


「大成!」


「よう!バカ孫…てめぇ、なに考えてやがる」


「大成…なにしに来た?早く皆んなで昭和ロードに戻ってくれ」


「馬鹿か、お前は…。一人でカッコつけてんじゃねぇぞ。今、アランが銀次にコンタクトを取っている。お前が、犠牲になることはねぇ…」


「駄目だ。それじゃあ間に合わない」


「なんだぁ?…誰かと思えば大成じゃねぇか。…ったく、雑魚のくせに、いつまでも、俺に纏わりついてんじゃねぇぞ…」


 そう言うと、陽炎の鎧は、大成に向かってシルバーコードを放った。


「大成ーっ!!」


 刹那!私は大成をはるかに後方へ殴り飛ばした。


「ぐわあぁーっ!,…バカ孫っ!てめぇーっ!」


「ハッハッハーッ、こりゃ傑作だ。助けに来てくれた自分の祖父をぶっ飛ばすとはなぁ!」


 私は、その挑発には乗らず、そして再度、陽炎の鎧と向き合った。


「お前、さっき、わたしの翼の光……霊子の根源に触れているって言ってたな。意味を分かって言ってんのか?」


「…なんだと?」


「友美!早まるなっ!今、アランが銀次をっ!」


 聖也の叫び声が聞こえる。


「銀次だと?…てめぇら、こそこそと,なにやってやがるんだ…」


「気にするな…お前が知ったところで、どうこうなるものでもない」


「なんだと?…榊友美…」


(霊子の根源…ゼロ化を超える、絶対的な無!究極の封印…わたし自ら人柱となって、陽炎の鎧!お前を封印する!)


「いくぞっ!陽炎おぉーっっ!!お前の存在そのものを、この世から!…いや、宇宙から抹殺してやる!


「バカ孫っ!…よせっ!!」


「これが……私と、お前との……次元の差だ!くらえっ!ディバイン・ファランクス・ゼロ……絶対終焉アブソリュート・エンド!!」


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