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第八話 天使と悪魔は有言実行

(へぇ、勝負と来たか。どうやって戦うのかな?)


(これから十年の間、私とあなたはノアの姉ポジションになる。それで十年間たった時ノアくんにどっちが良かったかを聞く。それでどう?)


 それを聞いた悪魔は鼻で笑いながらケタケタと顔を歪ませる。


(面白い趣向だ。良いだろう、これで僕がノアの姉にふさわしい事が分かるだろうね)


(それじゃ早速、勝負開始よ!)


(ちょぉっとまった! 御二方ぁ!)


(何かお姉ちゃんに用?)

(どうしたんだい?)


 天使は微笑みながら、悪魔は興味を持った顔で小首を傾げる。


(いやさ、俺無視して勝手に勝負始めないでくれる?)


(ん? もしかしてもうどっちがいいか決まったの? ノアくん)


(んな訳あるか! 俺たちまだ初対面なんだけど!?)


(ああ、そうだとも。それがどうかしたのかい?)


(問題はそこじゃないくて変な勝負始めないでっていう話。そして十年って長くない!?)


 二人は本気で困惑した顔になってしまった。すると天使がノアの前に立ち、突然抱きしめてきた。


(ごめんなさい! きっと辛いことがあったんだわ。それでノアくんはおかしくなっちゃたのね。でももう大丈夫、お姉ちゃんがついているからね)


(なっ! それは、そうだったのか)


(変に納得しているけど違うから!)


 ノアは頬を赤らめながら天使の手を振り払う。そしてノアは二人を睨みながら声を荒らげる。


(二人してなんなんだよ! ていうかお前、天使名乗っているくせに羽根ないじゃん!)


(ノアくんを困らせてしまったらごめんなさい、でも私は君の味方だからね。私の名前はミネル……じゃなかった。ミナーヴァ、どうか覚えてくれたら嬉しいな)


 天使もといミナーヴァはノアに向かって耳元に優しく囁くように語りかけてきた。ノアは顔を赤くしながらも(分かった)と短く返す。


(うん、ありがとう。これからもよろしくね)


(ああ、分かった。よろしく)


(ちょっとお二人さん? 僕も居るからね! 忘れないでね! あっ、ちなみに僕の名前はルサルカだからね! 僕、これでも華奢な女の子だからね!)


(分かってる分かってる)


(それホントに分かってるのかなぁ!?)


 すると突然視界が白く輝く。だんだんと見えなくなっていきやがて視界は真っ白になる。


(今度は忘れないでね。ノアくん)


 そんなミナーヴァの呟きを残して。




「ノア様! しっかり、私ですわ! イリスですわ!」


「ん? なんだイリス」


 なぜかイリスが目の前にいた。しかも目じりには涙を浮かべている。


 辺りを見渡すと、どこなの庭かな……っとこの豪勢な感じはカルタニア城だな。


「どうしたんだ。イリス?」


「どうしたんだ。ではありませんわ! ノア様はずっとなに話しかけても反応がなかったんですもの!」


「そうだったのか。心配かけて悪かった」


「ノア様が死んでしまったのかと思いましたわ。もしノア様が死んでしまったら私があとを追うまでですけど」


「絶対に追ってこないでね!」


 なるほどさっき三人で話していたからこっちでは意識があるなくなっていたんだな。とノアは考察する。


「そういえばセシルは?」


「はい、セシル、様は治癒術師を探しに行きましたわ」


「俺、今感じたからね! セシルに様付けするの躊躇(ためら)ったの分かるからね!」


「そんな事ありませんわ」

 

 イリスはなに事も無かったように話す。その強情さにノアは呆れて。


「あくまではぐらかすと。まっいいか、なるほどね治癒術師を、か」


「なので今からセシルを呼び戻しますわ」


 イリスが指を鳴らすと突然セシルが現れる。これは転移魔法の下位互換。瞬間移動である。


「あれ、ここって」


「どうやら心配かけたようだな。セシル」


「――ッ!」


 セシルはすぐに振り返ってノアを見るとすぐに涙目になりながら抱きついてきた。


「ノア、心配しましたよ〜」


「わりぃわりぃ」


 ノアは頭を掻きながらはぐらかす。そしてさっきの天使と悪魔を思い出した。


「ミナーヴァとルサルカ、か」


「何か言いましか?」


「いやなにも言ってないよ」


「本当ですか〜」


 なんかセシルが日に日に色っぽくなっている気がするが気のせいだろうか。


「ノア様。起きてすぐで申し訳ないですが、日雇いの賃金を精算したいですわ」


「ああ、おけおけ。金貨一枚でいいぜ」


「分かりましたわ」


 と言いながらポケットから小さな財布を取りだし、中から金貨二枚を手渡してくる。


「イリス、金貨一枚で良いんだけど」


「サービスですわ」


「そうか、そういう事ならありがく受け取っておくよ」


 軽く微笑み合ってセシルの方に視線を向ける。


「セシル、帰るぞ」


「はい! 私たちの家へ!」


「あ、私もついて行きますわ」


「どゆこと?」


「ノア様を堕とすために一緒に暮らせるかアメリアに相談したら許可を貰ったので私もノア様の家で暮らしたいのですが、ダメでしょうか」


「アメリアってヤンデレ両親の代理で出た人か、俺は別にいいが。セシルは」


 ノアはセシルに視線を向けると笑っていたが完全に怒っている。


「別に、構いませんよ、私は」


「ホントに?」


「えぇ、ノアの浮気性が浮かび上がるだけですし」


「これ絶対に怒ってる!」


「あら、そんなに私とノア様が一緒に生活されたら困るのですか? もしかして自分には魅力が無いから取られてしまうとお考えで?」


「はぁ? そんなんじゃありませんよ。馬鹿にしないで頂きたいです!」


「だからなんで二人すぐケンカ始めるだよ!」


 まったく二人の怒りの沸点の低さにはいつも苦労する。まぁ、可愛いからいいけど。



 結局イリスはノアの家に住むことになったのだが。


「ノア様ぁ〜、これからずっとずっとずーっと一緒にいられますわ」


「そ、そうだな。あのさイリス、もうちょい離れてくれないかな?」


「嫌ですぅー」


「さいですか」


 これが昼夜問わずやって来るとなると結構キツくないかと後の心配する。それに問題はこれだけでは無い。


「なぁセシル。いい加減、機嫌を治してくれないか?」


「別に悪くなんてしていませんよ。ノアはイリス様とイチャイチャしてればいいじゃないですか」


「さいですか」


 こちらもかなりご立腹のようで。これからの生活が果たして辛くなるのか楽しくなるかは、楽しくなるに決まっているとノアは心の底から思っていた。




 家に着いてから小一時間程だった時だった。


 突然コンコンと、家のドアをノックした音が響き、ノアは「はーい」と言いながらドアを開ける。


「ここに住まわせてください!!」


 家を訪ねてきた少女二人組がそんなことを言い出す。ノアはその顔に見覚えがあった。その人とは。


「なんでミナーヴァとルサルカがここにいるだよ!」

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