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眠るオリビア嬢

 オリビア嬢の部屋にはクラーク卿と私、ルイ、ウィリアム副団長、五番隊長マリアが入り、四番隊長アーロは扉の外で待機していた。

 オリビア嬢は天蓋付きの大きなベッドで眠っている。クラーク卿に案内され私とルイはベッドのそばまで近づいた。五隊長マリアは扉の横に立ち部屋全体を見回している。ウィリアム副団長は私とルイの真後ろに立っている。


 オリビア嬢は綺麗な顔で眠っていた、呼吸も正常のように思われる。眠っている彼女からは以前感じた恐怖なく、屋敷に入るときに感じたモノも今は落ち着いていた。


 「オリビアはもう数日、目を覚ましておりません」


 クラーク卿がオリビア嬢を見ながら言った。その姿は我が子を優しく見守る父親の顔をしている。そして、寂しげである。

 今日はクラーク卿の様々な表情に触れた。家庭教師としての顔しか知らない私にはとても新鮮であった。当たり前たけど彼も人間なのだと思った。

 

 「水分はとっているのですが食事がとれずこのままでは……」


 原因について、ルイが聞いたがクラーク卿は首を振った。国中の医者を呼んだが誰も原因を突き止めることができなかったらしい。騎士団の医療部隊ならと思いウィリアム副団長を見るが彼は背筋を伸ばしして周囲を確認しているようだ。馬車であんなにオリビア嬢を心配している様子であったが今はそれを一切見せない。

 ウィリアム副団長はクラーク卿の兄であるが二人は兄弟らしい会話がない。貴族と騎士という距離を保っている。凄い違和感を感じる。


 そもそも、平時に医療部隊を動かす権利は私にもウィリアム副団長にもないからここでウィリアム副団長に願っても意味はない。そう思いながらオリビア嬢の顔を覗き込むと、オリビア嬢の目が開いた。余りの予想外のできごと私は心臓がとまるかと思った。

 

 私と目があうと目を大きく開き、閉じた。そして掛け布団を頭から被った。心なしか震えているようにも見える。


 目が覚めたら王子がいたのだから驚いて当たり前か。


 クラーク卿は娘のオリビア嬢が目を覚ました事声が出ないようである。口をあけてベッドを見る。


 「オリビア」


 クラーク卿が娘の名前を呼び近づこうとしたとたん、オリビア嬢はベッドから出る。そして、開いていた窓から飛び出していた。二階であるのに一切躊躇がなかった。私も慌てて、後を追った。後ろから声がしたが気にせず窓から飛び降りた。二階の高さというのは思ったよりも低く問題なく地面に着地できた。

 そして、すぐオリビア嬢を捜すと屋敷の影にいた。


 「オリビア嬢」


 声を掛けながら近づくとそこには足を真っ赤に腫らし動けないでいるオリビア嬢が私を睨んだ。その目は私の知っているオリビア嬢のものではなかった。まるで知らない人間を見ているようである。


 この感覚を私は知っているような気がする。


 「お前は誰だ。俺……」

 

 大声な声を出すので慌てて両手オリビア嬢の口を塞いだ「う……もぉ……」と文句を言いながら暴れるので、仕方なくみぞおちに一発入れると静かになった。

 ふぅとため息をついて額の汗を拭う。

 

 すると背後から殺気を気配を感じた。


 ヤバい


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