オリビア嬢の茶会
クラーク侯爵家の庭園は広く、一年中美しい花が咲くように庭師を多く雇い入れ手入れさせている。特にバラは力を入れ、いつでもバラで囲まれた茶会ができるよう専用の温室を作らせた。私はここで月数回茶会を開くのをとても楽しみにしている。
茶会には同じ王都に住む貴族の子息や令嬢を招待している。本日の茶会も数人の貴族を招いた。
「本日はお招きありがとうございます」
私が数名の令嬢と話をしてると一番遅く訪れた伯爵家のリリー嬢が挨拶にきた。この方は他国の王族と婚約が決まり近々移動するらしい。最近はそれを鼻に掛けているようで気にくわないが茶会に招待しないわけにいかなった。私は推薦できるが選ぶ権利はない。
家の繋がりだから仕方ないのよね。
「こちらこそ、足を運んで頂いて嬉しいわ。これから他国にお移りになるでしょ。お忙しいじゃなくて」
私は座ったまま笑顔でリリー嬢に返事をした。その中に“茶会に来なくてもいい”という意味を込めたのだが彼女には通じていないようで「使用人が準備をするから大丈夫」と上品に口元を抑えて笑っている。その目が座って挨拶する私に“そのうち立場が逆転する”と言っているよう苛立ちを感じた。
「そういえば、オリビア様のお父上は大丈夫でしょうか。ルカ第二王子殿下の家庭教師を解雇させられてとか。私心配で心配で……」
胸を抑え、眉を下げて訴えるこの女を殴ってやりたかった。こんなに人が多くいる所で言うことではないでしょう。なにが心配ですって。嫌がらせでしかないわ。だからこの女を茶会に招待したくなかったのよ。
「それは王子殿下にお考えおわりなんですわ」
私の怒りが頂点に達しようとした時、横にいた子爵家のエリー嬢が同意を求めるように私の顔をみた。彼女はよく私の話を聞いてくれる礼儀正しい令嬢である。この中で一番付き合いが長く仲が良いため誕生パーティーの事は伝えてあった。
「だって、オリビア様の誕生パーティーに参加して下さるでしょ」
エリー嬢は両手を合わせ微笑んでいる。彼女の心遣いをとても嬉しく感じた。お父様が家庭教師を辞めさせられた後すぐに王子殿下たちが私に誕生パーティー参加して下さると伝えられた。気持ちが舞い上がってしまい考えていなかったが確かにそうである。きっとこの件はお父様の解雇と関係しているに違いない。
「ええ。私の誕生パーティーにはルイ第一王子殿下とルカ第二王子殿下が参加して下さるわ」
私の言葉にリリー嬢は口元を抑え目を大きくしている。周りの令嬢たち「すごいですわ」と口々に言い始めた。この件は正直私自身も驚いている。様々な茶会に顔を出しているルイ第一王子殿下はまだ分かるが、ここ数年ご自身の誕生祭でしかお姿を見せて下さらなったルカ第二王子殿下まで参加くださるのだ。
「きっとルイ第一王子殿下かルカ第二王子殿下がオリビア様を気に入っていらっしゃるですわ」
自分のようにはしゃぐエリー嬢の言葉に他の令嬢たちも「そうですわ」と賛同しはじめた。誰かが「オリビア様は誰をお慕いしているのですの」と言った。どちらも美しい王子であるが、個人的な付き合いがないため正直性格がわからない。しかし、結婚するなルカ第二王子殿下だ。ルイ第一王子殿下と結婚は王妃になることを意味する。
王妃の仕事なんて嫌だわ。誰かのために自分の時間を使うなんてごめんよ。
「ルカ第二王子殿下ですの。以前一度だけお会いした事がありますの」
お腹のあたりで両手を組み、恥ずかしそうに下を向くと「キャー」っと声が上がり令嬢たちが勝手に盛り上がり始めた。私がルカ第二王子殿下に好意を持っているというのが噂になりご本人のお耳に届くといいと思った。
以前お会いした際は私も幼かったのでよく覚えていない。しかし、私が積極的になりすぎて、ルカ第二王子殿下は照れてしまったという話を聞いた。だから今回は違う方向から好意を伝えたいと思った。
当時、照れていらっしゃたという話ですから私を好意的に見てるのは間違いないですわ。
気分がとてもよくなったところで紅茶を口に運ぶと突然、頭に激しい痛みを感じることそのまま視界が真っ暗になった。




