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騎士団による調査

 

 夜も更け、窓から月あかりが入り、蝋燭がゆらゆらとランプの中でゆれている。


クシュン


 騎士団トーマスは突然のくしゃみと寒気がして、書類の手をとめる。それに気づいたようで横の机で仕事をしていた副団長ウィリアムは声を掛ける。


 「いや、大丈夫」

 

 心配ないと手を上げる。それに頷くと、自分は前あった書類をまとめ揃えると、書類持ってトーマスの机の前に立つ。


 「それで、これが報告書です」

 

 分厚い書類束をトーマスの机の上に置くと、トーマスは書類をパラパラと捲り始める。

 

 この半年ウィリアムが独自にハリー・ナイトについて調査をしていた。本来は監視をしたかったが、そんな暇はない。トーマスとしても協力したかったが騎士団長も暇でない。そのため結局ウィリアム1人が貧困地域を調査したのである。


 「ハリー・ナイトは、貧困地域出身とありますが、貧困地域ではあまり知られていないようですね」 


 これが二人にとって不思議であった。騎士団へはいることのできる実力者であるならばそれなり名が売れていてもいいものである。貧困地域を徹底的に調べたがハリーの幼少期が一切不明である。

 

 本来、新兵に対して身辺調査をすることはい。王族護衛任務を担う隊や隊長格になればそれなりに調べられるが今回のハリー・ナイトほど念入りに調査されることはない。

 

 ハリー・ナイトが調査された理由はただ一つ第二王子であるルカが探していたからだ。


 「貧困地域にハリー・ナイトがいたという証言はとれています。本来ならばその程度でよいのですが今回は事情により更に彼の幼少期を調べましたが一切でてきません。あるのは入団1ヶ月前のです」


 トーマスはウィリアムの説明にため息をついた。トーマスの目の前の書類には調査方法や調査した対象、地域など事細かに書かれている。

 「ある意味ルカ第二王子殿下には感謝しなければな」

 

 トーマスの言葉にウィリアムは頷く。確かに、ルカがハリー・ナイトを探さなければ彼が不可解な人物であることはわからなかった事を二人は理解している。


 「入団条件に詳しい身辺調査が必要ですね」

 「それは検討課題だ」

 

 時間や費用がかかる事安易に決めることはできない。しかし、我が国に守る騎士が自国を裏切るなどあってはならない。

 

 トーマスやウィリアムにとっては頭の痛い案件である。


 「その件はおいおい考えると致しましょうか。ハリー・ナイトですが本格的に調査しますか」

 

 騎士団の捜索部隊に正式にハリー・ナイトについて指令を出せばすぐ彼の事がわかる。しかし、新兵の身辺調査に部隊を使うなど前代未聞である。相応の理由が必要になる。


 「難しいな。根拠が弱い」

 「根拠ですか」


 難しい顔をするトーマスにウィリアムはにこりと笑う。しかし、その目は鋭い。

 

 トーマスの目の前にある書類の最期のページを開き指を指す。その文字を見てトーマスは眉をひそめた。

 「捜索部隊の出動を許可しよう。〇番隊だ」

 

 捜索部隊は調査・情報収集に特化した部隊である。そして王族に事前許可なく動かせる唯一の集団が〇番隊だ。つまり、騎士団はもとより貴族や王族に知られずに調査を行う事ができるのである。しかし、それは事前許可が必要ないだけであり報告書義務はある。

 

 この報告書で処罰されることもあるので安易に使えるものではない。

 

 組と部隊を数名に分けた集団である。基本は実力で別れるのであるが組は騎士同士の特性や相性も考慮して組まれたものである。集団での実力を示したのが組の数であり、番号が小さいほど実力の高さを示す。

 

 今回の案件はそれだけ重要であるとトーマスは感じている。

 

 ウィリアムはトーマスの意図を理解したように、頷き挨拶をするとすぐに部屋を出ていたった。


 ウィリアムがいなくなり、静かになった騎士団長室の椅子に寄りかかった。トーマスの重みで椅子が沈む音がする。


トーマスの疲れた顔をランプの光が照らしていた。


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