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優しいルイ③

残酷なシーンがあります。注意して下さい。

 

 現実はうまくいかないもので、ルイがアイラの帰国支援をする前にトーマス騎士団長がアイラを逃がしてしまったのである。



 玉座の間



 玉座の間に国王が座り、玉座より下の段の斜め左側にクリスティーナ宰相が控える。反対側にはルイとルカがいた。本来は参加する事はないが摂取と法務大臣が不在の為である。


 玉座の間の中心には紐でつながれたトーマス騎士団長が座り、その横には険しい顔したウィリアム副団長立っている。


 この光景がルイは信じられなかった。


 第一王子である自分がアイラ帰国支援をしたのならば命までは脅かせれることはないが平民出身であるトーマス騎士団長では極刑は免れない。彼もそれは理解しているはずである。

 

 「トーマス・ピーターソン。あなたはルカ第二王子陛下の婚約者であられるアイラ王女を城の外へ連れだした。そのままアイラ王女は所在不明にしました。違いはありませんか」


 クリスティーナ宰相の淡々話す言葉、トーマス騎士団長は言葉なく頷いた。


 「理由を話してください」


 「閉じ込められては哀れに思いました」


 それだけでトーマス騎士団長がアイラの帰国支援をするなどありえない。そんな理由で逃がすなら我が国には奴隷が1人もいない。騎士団の人間がそんな甘いではない。


 なぜだ。


 必死にトーマス騎士団長がアイラを逃がした理由を考えた。どう考えても自分と同じようにアイラに好意があったとしか思えなかった。自分の愛しく思う人を同様に愛し命をかけてくれた彼に敬意の念を抱く。


 しばらくの沈黙が続くと国王か口を開いた。

 

 「第二王子の婚約者を行方不明にしてしまった罪は重い」


 トーマス騎士団長は覚悟を決めた様に国王を見つめる。


 国王の冷たい響く声に嫌な予感がして、慌ててルイは自分がアイラの帰国は支援しようと思ったことを国王に進言しようとしたが言葉が出なかった。混乱していると国王の言葉が続いた。


 何とか彼を助けたかった。


 「更に、逃げたソーワ王国のアイラ王女にも罪がある。よって、トーマス・ピーターソン、騎士団長の身分剥奪及び斬首刑とする。ソーワ王国王女アイラ・モーリー逃走のため、ソーワ王国を侵略する。この作戦については追って会議を行う」


 覚悟を決めていたトーマス騎士団長が大声でうたえる。


 「全ては私一人の罪です。アイラ王女を無理やり私の独断で逃がしました。王女は知らない土地に連れて行かれ自力で戻るのとはできません」


 「罪人トーマス・ピーターソンの斬首刑、今執行する」


 ルイは必死に声を上げようとするが一言も言葉がでない。身体中から嫌な汗が出てきてた。


 国王はトーマス元騎士団長の話に耳を傾けずウィリアム副団長を見る。“やれ”と目で指示してる。

 

 クリスティーナ宰相が国王を見るが何も言えない。

 他のものも同様である。

 国王の命令は絶対である。


 裁判で唯一、国王の判決に意義を唱えることのできる王妃と摂取はいない。


 ルカは表情を動かさずに事の成り行きを見ていた。ルイは耐えきれずに目を瞑ろうのしたがそれをできなかった。動くことさえできない。


 ウィリアム副団長は口を頑く結び覚悟をきめる。トーマス元騎士団長ももう何も訴える事はなく静かにその時を待った。



 ウィリアム副団長の剣が正確にトーマス騎士団長の首に下ろされる。


 

 赤い血がウィリアム副団長の顔につく。



 トーマス騎士団長の首がゴロリと床に落ちると、後から体が横に倒れた。




 ポタリポタリ…


 ウィリアム副団長の剣から落ちる血が静まり返った玉座の間に響く。


 ルイが国王を見ると国王は裁判開始の時と変わらない表情をしている。


 その表情がとても憎かった。


 関わりが少なく何考えているか分からず威圧的な父は幼いころからルイにとって恐怖の存在であった。


 しかし、怖がっている場合ではない。


 国王は玉座の間から退出するのをじっとルイは睨んでいた。


 そんなルイをルカが引っ張って一緒退出する。


 ルイを自室の椅子に座らせるとルカは何も言わず退室しようとした。それをとめるためルイは乱暴に服をひいた。

 「僕に何をした。裁判中言葉が出なかった」

 「失礼ながら私がふさがせて頂きました」


 魔法陣か?


 いくつかの石版の魔法陣を発動させるくらいしかできないルイはそんな魔法陣があるのかと驚いたが今はそれどころではない。


 「僕が話せればトーマス騎士団長が助かったかもしれない。本当は僕がアイラ逃走を支援しようとしてた。しかし、その前にトーマス騎士団長が逃がしただけなんだ」


 必死にルカに訴えるが伝わない。


 「そうですか。しかし、結果は罪人トーマスの行いです」


 ルカは冷たく言い放つと部屋を出て行った。


 ルイは目の前のテーブルを力いっぱい叩いた。何度も叩いたため手が切れ血が出る。


 「罪人トーマス、何を。彼は素晴らしい騎士団長である。それなのになんて言い方だ。父も父だ、なぜ、なぜ」


 全てを呪った。


 もう何も信じられなかった。


 ただ、あの国への侵略はなんときても止めなくてはならない。アイラの帰る国を守らなくてはならない。




 ルイは守る方法を一つしか思いつかなかった。



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