表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/153

人捜し①

 ルイは朝食後、いつも城の内部にある室内演習場で剣術を練習すると言うのでついて行った。


 騎士の演習場に比べたら小さいが一人で練習するには十分の広さであった。彼は毎日ここで練習をしている。

王族の剣術のメインは自衛であるためそれ専門の教師に習うがルイはここでルイの護衛騎士に指導してもらうこともあるそうだ。

 演習場に着くと私はルイに手合わせをお願いした。この時のルカの実力を知っておきたいと思った。男子としてこの時代で生きていくには剣術が必要である。そして、何を話せばよいか分からなかったのもある。


 ルイは驚いていたようであるが承諾してくれた。


 ルイは腰にあった剣を抜き手に持つと私の前に立った。その迫力に呼吸するのを忘れそうになる。漫画で見たことのあるシーンだ。しかし実際に対面すると迫力が違う。心臓が高鳴るのを感じた。


 カラーだし、生身の人間だ。当たり前だけど当たり前じゃない。


 焦る気持ちを無理やり、落ち着かせると私も剣を抜き、それからギュッと剣を両手で握った。剣は重くコントロールが難しかったが何度か素振りをする。

ルイはその様子を黙って待って見ていた。

何度か素振りをするとかたちにはなったので、ルイに剣を向ける。ルイは私のその様子を見て頷く。どうやら私が剣に慣れるのを待ってくれたようだ。優しいと思った。


「いくよ」


 ルイの声が聞こえたと思ったら、私は地面にお尻を付きルイを見上げていた。ルイは私が倒れた時点で剣をしまった。私の剣はルイに落とされて地面に落ちていた。


一瞬で勝負がついた。


必死に剣をふったが、剣が切るのは空気だけ私から一度当てることができない。ルイが剣を私の剣に当てた時があった。その時、私の剣は手から離れてしまった。そこからバランスを崩し倒れるまで数秒であった。


 ルカは弱い。それはそうだ。


 彼は家庭教師による学習から逃げていた。ルカは家庭教師にルイとの学力差を比較されると劣等感から全ての事をやらなくなった。それに剣術も含まれている。

 ルカは王族であり騎士ではないから敵を倒す必要はない。しかし、自分の身は分で守らなくてはならない。


 かなりの重さがある剣をルイは自由に動かす。それはまるで手足のようだ。単純に凄いなと思った。

 それは、彼が努力してきた結果だ。自分はその時なにをしていただろう。


 この時点でのルカは将来の事を全く考えていない。第二王子だから摂政になり、国王になったルイを支える立場になることを知ってはいるがそれがどういう事が理解していない。“小学校低学年にお前は将来官僚になるから勉強しろ”と言っているようなものなので難しいじゃないかと私は思う。でもルカはある事件をきっかけに勉強するようになる。


 ルカの未来について考えていたら大切な事に気づいてしまった。なんで忘れていたのだろう。これから起きる悲劇を私は知っている。このままじゃ私の推しメンが不幸になる。


 とりあえず、騎士館に行って事件のキーになる人物を探さなくてはならない。

 考え込んでいると目の前でルイが心配そうに私を見て声を掛けてくれた。私がずっと立ち上がらないから不安になったようだ。慌てて立ちあがり剣を拾うと腰のしまった。


「流石が兄上です。また手合わせお願いします」


 ルイは頷くと授業があるからと笑顔で部屋に戻って行った。ルカは数年ルイの事を避けていた。それにルイが傷ついていない訳はないのに何も聞かないでくれた。

 私にとっては好都合であるがその意図はわからない。最低限の関わりを望んでいるのかもしれない。ルイとはもう少し心打ち解けるようになりたいと思う。


 今のルカは幼い子どもではない。三十年以上の経験値がプラスされた上にこれから起こる事を知っている。何でも出来るような気がした。


 事件まで後二年しかない。気合をいれて騎士館に向かうが、数十分歩いたところで迷ったことに気づく。

 ルカは王子だから城の内部地図は頭に入っていると思っていたのが大きなミスだった。ほとんど部屋で過ごすルカは城をよく知らなかったのである。

ため息がでると共に頭痛がした。

 自分の住まいで迷わない程度に知識はつけてほしい。


「ルカ第二王子殿下ではありませんか」

 

 後ろから聞き覚えがある声がして振り返る。そこに一般的な男性より大きく子どものルカからした巨人のような男が立っていた。巨人は金色の髪を刈り上げて、騎士団の制服を着ている。


 騎士団長トーマス・ピーターソン。


 心臓が高鳴るのを感じた。彼は私の推しメンである。そのため彼の事は詳細に記憶している。彼は平民の中でも貧しい部類にはいる農村出身である。

 我が国の騎士団は完全に実力主義である。国を守る騎士団を名前ばかりの王族や貴族がトップにたち崩壊させてしまったら大問題だからだ。

 王族や貴族が騎士団に入団することも可能であるが騎士団だけは身分で優遇される事はない。一般の者と同じように試験に受かる必要がある。また入団したとしても身分で待遇がよくなることもない。実力がなければ平民出身の隊長に怒鳴られることもある。だから、騎士団の殆どは平民出身なのである。

 実力主義の騎士団は当然実力があれば好待遇を受けられる。本隊に入団できれば貴族並の生活ができる。ただ少しでも鍛錬を怠ればすぐに下に追い抜かされるため贅沢をしている暇などない。

 その中でも騎士団長というのは飛び抜けた存在だ。剣術など実技以外にもマナーや学力なども問われる。そのため今までではそういったことが学習できる身分のものが騎士団長になっていた。

 騎士団長になる為に必要な学力は新兵になれば全員がつけられる環境は整えられている。しかし、実技の演習をしながら学ぶというのは並大抵の努力では不可能である。

 トーマス・ピーターソンは新兵入団時、読み書きも出来なかったはずである。


「トーマス騎士団長おはようございます」


 現実の彼を目の当たりにして心臓の早くなる。大好きな方が話して動ているのだ。今すぐ悶えたくなるのを必死で抑えた。

そして挨拶をした。それだけ手が汗ばみ、更に心臓が早くなるのを感じた。しかし、それを悟られないように笑顔をつくる。


「騎士館に何かご用意でしょうか」


 騎士館?


 適当に歩いていたら目的地に着いていたようである。

 トーマス騎士団長が近くまでくると膝を付き丁寧に訪ねてくる。その彼の姿に見惚れしまう。気持ちが落ち着かないが必死に冷静なふりをする。


 流石漫画の世界だと思う。平民出身であっても美形なのだ。ルイも美しいが少年である。騎士団長は美しいおじ様だ。騎士団長は私の好みのタイプであった。そのため彼の死は何度も何度も読んで涙したのをよく覚えている。


 私は推しの誕生日は盛大に祝う派であるが、トーマス騎士団長の場合は命日にガチ泣きしながら線香をあげていた。

 そんなトーマス騎士団長が生きていることに心踊る。絶対トーマス騎士団長を失いたくないと思う。


「ハリー・ナイトはいますか」


 私の言葉に騎士団長は目を大きくして私の顔をじっとみた。王族であるルカの顔を凝視するのは失礼なことだ。それは彼も知っているはずであるが凝視してしまうほど驚いたのであろう。

 理由はきっと私がハリー・ナイトの名前を口した事であろう。ハリー・ナイトは今年入団したばかりの新兵である。入団試験を一回でクリアしたのだから優秀である。だが、身分が低い。

 ハリー・ナイトのナイトは騎士と言う意味を持つ。つまり入団してからつけられたら名前である。

 それは彼が孤児であることを意味する。身分が低ければファミリーネームがない事がよくある。しかし、騎士になるとファミリーネームが必要になるため大抵は家長の名を使う。


 トーマス騎士団長はそんな彼を第二王子が気にするのだから心穏やかでいられるはずがない。彼が何か問題を起こしたのだと思うだろう。


「ハリー・ナイトをお探しですか。第二王子殿下、自らお越し頂くという事は彼に何か問題がありましたでしょうか。彼は入団の緊張からか朝の演習で倒れ自室におります」


 顔を青くしたトーマス騎士団長が丁寧に説明してくれた。確かにトーマス騎士団長の言う通り必要であれば呼び出せばよい。

 王族からの呼び出しは何より優先される。それをせず自らしかも新兵を探しにきたとなれば騎士団長であるトーマスは生きた心地がしないであろう。

 つい自分で動いてしまった。

軽率な行動をしてしまったと反省はするが後悔はしていない。それほどハリー・ナイトに会う事は今とても重要であると思う。多分…。


「そうですか。では部屋に案内して下さい」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の小説と似ている設定だったので、勉強になりました。 これからの展開が気になります。いい作品だと改めて感じました。 [一言] これからも書き続けて下さい!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ