野生児は草を食(は)む
新しいキャラが登場します。
大工のマティスさんです。デカいです。麻奈がますます小さく見えます。
町に着き2頭を駐車場の受付前に止めると、空かさず係の人が手綱を受け取りに来てくれた。
荷馬車を外したニゲルとシエルは、それぞれの馬場で遊ばせてくれるみたい。
案内カウンターの奥にアランさんを見つけた。此処の偉い人なのに、来る度に従業員と話をしているのを見かける。
私に気付いたアランさんがニコニコ顔で出てくる。
「こんにちは、麻奈さん。近頃は寒さも和らぎましたね」
「こんにちは。本当ですよね、もう少ししたら庭に植物を植えようかと思うんです。もう毎日が楽しくて」
アランさんは私の顔を見てますますニコニコしている。お爺ちゃんがいたらこんな感じなのかな。
「それは良いですね、なら今日はその準備ですか?」
「そうとも言えるんですけど。アランさん、私に大工さんを紹介してください」
「大工?」
「はい、水車小屋と鶏小屋が欲しいんです。何方かいませんか?」
「そりゃー、いますよ。ただ麻奈さんに紹介となれば厳選しなければ。……少し無愛想ですが腕が確かな男がいますのでご紹介します」
アランさんに連れられて、商業街から川を挟んだ北側の工人街に来た。商業地と比べると道幅が少し広いが人通りは少ない、間口も大きく開いていてどの建物の中からも、鉄を叩く音、木を叩く音、水が勢い良く蒸発する音が響き活気が伺える。
リズミカルな音に誘われ、あちらこちらと覗き込んでしまう。
そんな私を見ながら、アランさんは一つの建物の前で足を止めた。
「麻奈さん、此処ですよ。初めに言っておきますね。此処の親方は、とても偏屈で顔も厳ついのです。初めて会う者は皆脅えます。子供などは例外なく泣きますよ。覚悟は良いですか?」
「おう、アラン! 人ん家の前で、ずいぶんな言い草だな! 俺に喧嘩売ってんのか! 買ってやるぞ、ほら来い(怒)」
2メートル位だろうか、頭に手ぬぐいを巻いた無精ひげの男が青筋を立てて出てきた。
「ほんとだ、厳つい」
「ついでに、ムサイでしょ」
「うん」
「何だと!! 表に出ろ!」
「は~ 此処は表ですよ。麻奈さん、親方のマティスです」
アランさんとマティスさんは幼なじみで、何時もこんな掛け合いをしているのだとか。二人は仲良しなのね、怒鳴っているのにマティスさんの両手は腰に当てたままだもの。
「でッ、その子は何だ、隠し子か?」
「それは素晴らしい! 是非とも娘に欲しいね。だが残念だ。実に残念だ」
イヤイヤ こんな娘はやめた方が良いよ。面倒くさいよ。
「ふん。で、何だ。俺は忙しいんだ、用件を言え」
「初めまして私、麻奈・藤倉といいます。水車小屋と鶏小屋を作って欲しくて来ました。お願いできますか」
「アァー 子供が依頼だと、アランどういうことだ! 親は如何した!」
「子供じゃ有りません!成人しています!」
「マティス、彼女は神域にお出でになった方です。此方では色々と不便でしょうから麻奈さんの意向に沿った物を作ってあげて下さい」
「…ああ… そうか。まあ中に入れ。アメニー、お客だ! 茶を頼む!」
「お邪魔します」
「鶏小屋と水車小屋だったな。どのくらいの箱を造る?」
ハコ? ああ、大きさかな?
「鶏小屋は5羽くらいで、水車小屋は… ええっと、図案を描いてきたんですけど、見てもらえますか」
米は当然で、行く行くは餅米を作って餅も搗けたらなぁ~ と、思っているが、搗く以外に回す機能も欲しいの。
テーブルの上にカバンからスケッチブックを出して開いた。
「通常は水車が回って軸が上下しますよね、で此処に横棒を通して、こう力が掛かると…横に… で、此処に車輪を…… 速度は、羽の枚数で……」
「ほぉー 仕組みは分かったが、片方は粉屋と同じ用途で分かるが、こっちは何のためだ?」
「遠心力を使って、色々と遣りたい事が有りまして」
「えんしん……?」
あ~ 遠心力が分からないかぁ~ 絵を描いて説明してみるか。
「まあ、なんとなく分かつた。一部の壁は引き戸みたいに外せるようにしろとか変わった注文も有るが、兎に角作れば良いんだな」
「はいお願いします。臼や樽も作って欲しいです樽は4種類お願いします。サイズはこちらの紙に…」
一通りの注文が終わると、マティスさんが材木置き場に連れて行ってくれた。
「やたらと触るなよ、倒れても知らんからな」
ほわぁ~ 良い匂い
「材木はこの赤杉を使うぞ。水に強いからな。鶏小屋も同じで良いか?」
「はい、構いません。後、厚みが有って、 しならない板は無いですか? 何でも良いんですけど」
「何でもっと言ってもな…」
「本当に何でも良いんです。ちょっと足下の悪い所ろに駆けたいだけですから」
「なら、これはどうだ。節が多くて家具に向かなくてほっぽってあるやつだからくれてやるぞ」
長さも丁度良い、幅もある。
「ください! ありがとうございます。あと、その角に纏めてある物は必要な物ですか?」
「これは製材課程ででた不要物だ。乾燥させて薪にするが」
「なら、あの木の根っこの部分下さい!」
「あんな物、如何するんだ? 好きに使ったら良い、好きなだけ持って行け」
やったね!私にとっては宝物だよ。木材の切れっ端など、色々貰ってしまった。
今日も良い買い物が出来ました。
板は厚みの分重く、ニゲルの引く馬車には長すぎた。後日、運んで貰うことにし、切り株だけ持ち帰った。
小屋に帰ってから黙々と、切り株の加工をしながら一日が終わる。
あ~♡ 本当に幸せ。
朝起きて、2頭を小屋の前に離している間に掃除と餌の用意。その後自分のご飯を用意するけど……
無い。青物が無い。
冬が過ぎ、春になったが、この時期この領では葉物野菜が不足していて手に入らない。有る野菜と言えばジャガイモ・タマネギ・カボチャ・萎び始めたニンジンと豆類。
「葉物が食べたい…」
食べたい! 食べたい! 食べた――い!
私は2階に上がり、ビニール素材のズボンにダウンジャケットを着ると台所に降りた。水筒に温かいお茶を入れ、籠とスコップ・シャベル・ハサミを荷馬車に載せる。
「では、しゅっぱーつ!」
町までの途中、道端にしゃがみ込み地面をホジホジ。
まずはタンポポ。スコップで根っこごとほじくり返す。道から奥の物は、若く柔らかい葉を沢山毟る。花も毟ってサラダで食べる。
ヨモギも見つけたからこれはパンケーキにしよう。アカザはほうれん草の親戚筋、味噌汁の具でも良いしチャーハンに入れてもいい。オオバコの葉は一年中有り、あく抜きしてベーコンとタマネギと一緒にバター炒めもおいしの。
「ふふふ… 葉っぱ、葉っぱ。有るところには有るよね~ さあ、明日は海の物を取りに行くぞぉー!」
夢中になって摘んでいく。そんな私から少し離れた場所で、いつの間にか馬たちもシロツメクサをモシャモシャと食べていた。
マティスさんは是から大活躍です。
色々と造ってくれ(^∧^)




