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04


「じゃあとりあえず適当な本屋行くか」


「うん!」



ここら辺には本屋なんてないしどうせなら電車で街の方まで行こうと歩いていると……



なんだか一ノ瀬のテンションがさっきから高い。 そんなに嬉しいのだろうか? しかも俺で。



「なぁ一ノ瀬、本好きなの?」


「え? うん! 漫画だけど」



…… ああ、そっちか。 オタクっぽいって思ったけどやっぱりそうなのかな?



「どんな漫画?」


「私お兄ちゃんがいるからお兄ちゃんの漫画読んでたらすっかり少年漫画にハマっちゃって。 あはは、オタクかも。 あ、でももしかしなくても見た目でそう思われてるかも……」



一ノ瀬自身そう感じているようだった。



「だったら美容室とか行って髪型とか変えて堂々としてみたら? そんな悪くないと思うけど?」


「あばばばばッ! わ、私如きが美容室だなんて…… 恥ずかしいよ」



一ノ瀬は両手と顔を振りながらそう言った。 んー、素材がいいって事は本人からしてみたらわからないらしい。



「わ、私も吉原さんみたいに可愛くて綺麗だったらなぁなんて思うけど…… あ! 私なんかが何言ってんだろう、私と吉原さんとじゃ月とすっぽんだもんね。 吉原さんに失礼だね!」


「いや、別にそこまで卑屈にならなくても……」



駅に着き電車のドアが開くとなんと満員…… 東京でもないのになんでこんな時に満員電車なんだよ。



「す、凄いね人が……」


「やっぱやめるか?」


「ううん! 行く」



一ノ瀬はキツキツの電車の中へ入っていく、俺も後を追う。 だけどドカッと一ノ瀬はぶつかられ俺に寄りかかる。



「うわぁ、やっぱ狭いな。 大丈夫か? 一ノ瀬」


「だ、大丈夫。 私消力シャオリー使えるから」



消力シャオリー…… それは人間が反射的に力む所を敢えて脱力する簡単そうだけど超高等技術……



「え? そんなのも読んでんの? でも確か消力って壁があると上手く使えないんじゃなかったっけ?」


「はうッ! そ、そうでした。こんな時は三戦さんちんでした。 ん? え? 渡井君も読んでたの?」



三戦さんちん……こんな時は足場を安定…… とかって狭い中でやめてくれ……



ええ、はい。 まぁ嗜む程度には……



一ノ瀬は目をキラキラさせていた。 少年漫画を読んでいるって言ってるだけはあるのかな? にしてもこんな満員電車の中でそんなにはしゃがれても。



「でね! でね!」



一ノ瀬は目をキラキラさせて前のめりになり満員なのもあるせいか物凄く俺と密着している。



「い、一ノ瀬、わかったから。 電車降りたら話そうぜ? お前近すぎ……」


「え?」



そう言った途端一ノ瀬はポカンとして俺との距離を確認する。 そしてまた見る見るうちに真っ赤になる、胸を思い切り俺に押し当てていたのだ。 一ノ瀬との会話でわかった事は漫画の事よりも思ったより一ノ瀬は胸が大きいという事だ……



「お、おおおおお恥ずかしい、わ、私ったら…… こんなんだから……」


「だ、大丈夫。 キツすぎてよくわからなかったから」



そうは言っても一ノ瀬はやっぱり恥ずかしいのかしゅんとなる。 浮き沈み激しい奴だな。 自分と話が合っちゃうと嬉しくて周りが見えなくなるタイプなのだろうか?



でも俺もなんとなくだけど一ノ瀬の反応は見ていて面白いけど。



混んでいた電車から降り古本屋へ着くと一ノ瀬は一目散に中へと入っていった。



一ノ瀬がなんか買いたい物でもあるんなら俺は立ち読みでもして時間潰そうかなと思い本を手に取りしばらく立ち読みをしていると一ノ瀬がこちらへ向かってきた。



「渡井君ごめんなさい! なんか私だけはしゃいで中に入って行っちゃって」


「別に気にしてないよ。 俺はただの付き添いだし一ノ瀬が満足出来ればそれで良いよ」


「渡井君神ですか!? うう…… 私如きのためにすみません」


「はははッ、大袈裟だな。 てかもういいの?」


「うん! バッチリ」



どうやら目的の本も買ったらしく一ノ瀬は満面の笑みだった。 まぁここまで喜んでるなら来てよかったな。



そして本屋を出た頃にはもういい時間だ。 学校終わりに来たから当然か。



「こんなに遅い時間まで渡井君を引っ張り回しちゃうなんて……」


「そうだなぁ」


「あううッ…… すみませぬ…… 」


「どうせならどっかで夕飯食べてくか?」


「は、はいいッ!?」



一ノ瀬は目を丸くしてとても驚いた。




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