03
一ノ瀬の手を引いて校舎を出てここまで来れば大丈夫だろうと思い立ち止まった。
「わ、渡井君…… 」
振り返ると一ノ瀬は耳まで真っ赤になりながらしゅんと下を向いていた。 ヤベッ、咄嗟の事とはいえ俺ってとんでもない事したような……
「あっ、悪い一ノ瀬」
俺はサッと手を離した。 すると俺が掴んでいた所にもう片方の手を当てた。 もしかして痛かったかな?
「ごめん、つい力入っちゃって」
「ううん、大丈夫」
「なんか変な事に巻き込んじゃったな、あとでお詫びするから一ノ瀬も部活あるんなら戻っていいよ?」
「…… よくわからないけど私今戻ったらいけないような気がする」
「なんで?」
「ええっと、なんとなくなんだけど吉原さんから避けるために私の事ここまで連れて来たんだよね?」
「うーん、なんかそう言われると…… まぁそうなんだけど」
「だったら私も今日は部活サボっちゃいます!」
「ええ? それでいいのかよ? 一ノ瀬からしたら俺の事なんて別にどうでもいいだろ?」
「う…… こっちもそう言われると…… ううん! やっぱりどうでもよくない!」
「へ?」
一ノ瀬はモッサい髪から顔を覗かせてこちらにフン!と息巻く。 やっぱこいつちゃんと見ると可愛いなと思い俺も一ノ瀬を見つめる。
すると途端に一ノ瀬の顔が真っ赤になって俺から顔をそらした。
「あわわわッ!」
何がしたいんだろうこいつは…… でも俺になんだか協力的みたいだけど。
「ええと、とりあえずありがとな。それとごめん。 なんか茶番じみた事までさせちゃって部活までサボらせてさ。 じゃあ今度こそ帰るな」
あ、なんかさっき教室で一ノ瀬が言ったような事俺まで言ってら。
「あ、あの! 待って!」
俺が家の方向に向かって歩き出すと一ノ瀬が俺を呼び止めた。 なんだ? と思って振り返る。
一ノ瀬は呼び止めたくせに俺が振り返るとビクッとしていた。 そしてなんだか言いたげだ。
「えーと、えーと、その…… さっきお詫びしてくれるって言ったよね?」
「え? 言ったは言ったけど……」
なんなんだろう? なんでか知らないけど改めてそう問われると少し不安になってくる。 しかも一ノ瀬は要領を得なくモジモジしながら喋るので余計にソワソワする。
「だからその…… あれです」
「あれ? あれって何?」
「いや、やっぱり……」
なんかソワソワを通り越してだんだんウンザリしてきた頃……
「お、お詫びをするなら今にして!!…… 下さい…………」
「あ、なんだ、それが言いたかったのか。 って言ってもどうしよう?」
お詫びするとは言ったけど今日お詫びするつもりなかった俺は少し悩む。
何をしてあげればいいんだろう? 一ノ瀬が喜びそうな事ってなんだ?
そう思って一ノ瀬をジッと見る。 そんな俺の視線にまた一ノ瀬はビクッとする。
ん〜、なんだろう…… 一ノ瀬ってオタクっぽいしアニメイトでも連れて行けば良いのだろうか? いや、それは偏見だよなぁ。 見た目がそうだからってそうとは限らないし…… 大体アニメイトなんてないし。
俺が悩んでいるのを察したのか一ノ瀬はまた何か引っかかりながら口を開いた。
「つッ! つつつつつつつつッ!」
「え? どこか痛いの? 」
「つ、つつつ付き合って…… く、下さい…………」
「!?」
「つ、つつつ」から物凄く一ノ瀬の声が小さくなっていったので俺の聞き間違いじゃなければ付き合って下さいって言ったか? ウソだろ!?
一ノ瀬がよく見ると実はとても可愛いんじゃないかとわかっても今日初めて話したばかりじゃん。
「一ノ瀬、お前本気で言ってるの?」
「うう…… やっぱり私みたいなのと一緒だと恥ずかしいよね?」
「いや、そういう事じゃななくて」
「いいんだ、だって例え本屋に付き合って貰うのもこんな根暗な私と一緒じゃ渡井君は嫌だもんね…… 」
「え? 本屋?」
「へ? う、うん」
あれ? もしかして本屋に付き合って欲しいだけ? 確かに付き合って下さいの最後の方ゴニョゴニョ言ってたけど。 そういう事か。 変に勘違いしてた俺の方が恥ずかしい奴じゃないか……
「いいよ、わかった。 付き合うよ」
「え?」
「本屋行きたいんだろ?」
「いいの? 本当に本当!?」
俺がそう言うと一変していきなりテンションが高くなった。 一ノ瀬って自分が言うほど根暗ではないのかもしれない。




