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02


一ノ瀬と別れて昇降口へ行くと影からひょこっと人影が……



「渡井君!」


「え!? 吉原? なんでここに?」


「渡井君取り合ってくれなそうだから待ってたの…… 私ちゃんと渡井君に謝りたいなって」



俺があんまり吉原の奴と関わりたくない理由……



それは入学してから何週間か過ぎた頃、吉原はその見た目から当然すぐにみんなの話題になっていた。 同学年の奴らだけじゃなく先輩達にも。



そして偶然俺はある放課後階段で吉原が先輩と思しき2人の人から口説かれていた。吉原は物凄く迷惑そうな顔をしていたように思えたが先輩はそんなの御構い無しだ。 困ってる顔もやっぱり可愛いので余計にそそるのかな? なんにしてもやり過ごしたい。



そして階段を降りてきた俺に吉原が気付きあたかも助けてというような視線を送ってくる。



冗談じゃない、こんな面倒事に関わったら俺が先輩に目をつけられそうじゃないか、だけど…… それにしても間が悪い時に鉢合わせちゃったなぁ。 だって階段塞いでるんだもん、こんな所で口説くなよ。 吉原口説きたいんだったらもっと迷惑じゃない所で口説けよ。



だけど俺のそんな思いがこもった視線が先輩に喧嘩を売っていると勘違いされたのか……



「てめぇなんか文句ありそうな目付きだな?」


「えっと…… 俺は別に何も」


「ええと…… んーと」



吉原は何か言いたげだ。 そう、こいつは俺と同じクラスだけど俺の影が薄いのか日が浅いからなのかまだ俺の名前も覚えていない。



「俺、渡井だから……」


「あ、渡井君……」


「つーかてめぇ何ちゃっかり自己紹介してんだよ!? 」


「すいません、俺もう行っていいですか?」



そんな事を言ってももともと迷惑な場所で吉原が迷惑そうにしていても御構い無しな先輩はやっぱり俺の言い分も吉原が制止しても御構い無しでそのまま俺は先輩に首筋を掴まれどこかへ連れて行かれようとする。



「渡井君!」


「いいから。 吉原はもう帰れよ」


「何てめぇが決めてんだよ!?」



いてて…… 掴む力が先程よりも強くなり俺はそのまま連れていかれた。 そして思った通り人気のない場所へ連れていかれると首筋を掴んでいた先輩に乱暴に放られた。 だんだん俺もムカついてきた。



「やっぱ文句あんだな? 言ってみろよ」


「じゃあ言いますけど吉原を口説くのは別にどうでもいいですけど階段塞いで通せんぼしてたら邪魔だなって思いますよ」


「ああ!? だったらてめぇは別の階段から降りればいいだろ!」



その後はもう俺の態度も良くなかったのか売り言葉に買い言葉で先輩にボコボコにされてしまった。



時間にして数分くらいだったけど痛めつけられる時間はとても長く感じた。 そして先輩達が去って行くととても申し訳なさそうな顔をした吉原が走ってきた。



「帰れって言ったじゃん」


「でも…… だって……」



吉原はプルプルと震えていた。 あー、なんて気不味い…… こんなボコボコにされた顔を吉原に見られるし先輩達からも変に目をつけられたし。



散々な目に遭った俺はいい加減ここから消えようと制服に付いた土を払って帰ろうとした。



「待って渡井君! 怪我手当てしなきゃ!」



吉原に腕を掴まれ泣きそうな顔で俺の顔を見つめる。 だけどこいつと関わったせいで俺は今こんな目に遭ったわけで。 吉原は確かに可愛い。 可愛いけどこんな痛い思いをした俺はもういいやという思いが勝ち……



「離せよ、お前のせいで散々だわ」



そう言って吉原が掴んでいた腕を乱暴に振り払った。



「そ、そうだよね。 ごめんなさい」



そして次の日学校へ行くとボコボコにされた俺を見てクラスのみんなはドン引きしていたような気がする。 治るまで休めば良かったかな?



それから吉原は何度か俺に話し掛けようとしていたが俺はそんな雰囲気を察知するとひたすら避けていた。



そしてとうとう吉原に待ち伏せをされてしまって今に至る。 変に関わりたくないからとかで避けたりしたから吉原も待ち伏せする事になったんだし。 向こうは謝りたいって言ってくれてるんだけどこういう雰囲気ってなんか少し苦手かも……



「あの!」



吉原が何か言おうとした時後ろから誰かが来る足音がした。



「渡井君! 良かった、間に合った。 さっき教室に渡井君の生徒手帳落ちてたよ!ってあれ? 吉原さん?」


「え? 一ノ瀬さん?」


「あ! 俺今から一ノ瀬と用事あって一緒に帰る所だったんだ、な? 一ノ瀬!」


「え? ええ!?」



いきなりそう言われた一ノ瀬は驚愕する。 そして俺は一ノ瀬を掴んで強引に昇降口から出た。



「渡井君! 私の話はまだ……」


「わ、渡井君、私も部活が!」


「ごめん一ノ瀬、校舎から出たら離すから」



ポツンと1人残された吉原。 小さくなって行く2人を見て……



「私…… やっぱりそんなに嫌われてたんだ」



俺のこの時の対応のせいで更に拗れる事になるなんて少し考えればわかる事なのにこの時の俺にはわからなかった。




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