case6 探索編 2
「おらぁあ!ダイヤ置いてけやテメェッ!!」
「やめてよ!僕悪いミ=ゴじゃないよ!」
闇夜の深淵より、碧き河童がぬるりと迫る!
河童体術による忍者キックが突き刺さる正にその瞬間だった!
なんと、ターゲットであるミ=ゴが命乞いの言葉を発して来たのだった。
とん、とそれを聞いた倫太郎は月面宙返りを決め、そのミ=ゴから距離を取る。
「……あっ?テメェ何言ってやがんだ?」
「やめて、攻撃しないで!僕悪いミ=ゴじゃありません!」
そのミ=ゴは、地面に這いつくばり、尻尾を高く持ち上げるながら、そう懇願してくる。
見様によっては土下座にも見えない事も無くも無い事も無いそのポーズは、倫太郎からしてみれば、茹であがった等身大の海老の様に見えるが、彼?は必死になってそう泣きわめく。
「まぁ、取りあえず、事務所に来い。ここじゃ目立ってしょうがねぇ」
倫太郎はそう言って、ざわめき始めた街角から、ミ=ゴを連れ出したのだった。
「んでテメェは何なんだ、あそこで何してた」
「わっ、眩しいやめて下さい」
ミ=ゴを事務所に招き入れた倫太郎は、ドラマの尋問シーンを真似て卓上ライトを押し付ける様にして尋問を開始すると、そのミ=ゴは部屋の隅まで逃げ去って、ガタガタと震えはじめた。
光が苦手な種族なのか、若しくは、こいつがビビりなだけなのか。倫太郎が判断に困っていると、そのミ=ゴはおずおずとソファーに戻ってくる。
「そんで、お前は一体何してたんだ?」
「(ちっ、調子乗んなよ、未開部族の分際で)」
「な・に・か・い・っ・た・か・海・老・野・郎!?」
「なッ何でもないです!だからその光はやめてー!」
河童イヤーは地獄耳。ミ=ゴの小声を聞き逃さずに、ライトを浴びせかけると、先ほどと同じように、そのミ=ゴは、部屋の片隅に逃げていく。
そして、今度は部屋の隅で固まったまま動かない、ミ=ゴをソファーまで引きずって移動している時だ。
そのミ=ゴが何かに気付いた様に話し出した。
「あのー、ここって、最近僕たちの種族が訪れました?」
「……、ああ昼過ぎにな」
ぼそぼそと弱気な声でしゃべるミ=ゴに、比例するかのように高まる不穏な気配を感じ、倫太郎は慎重に答えを探す。
「やっぱりですね、そこのソファーから残滓を感じますし、何よりー」
「……何より?」
「……教えてほしいですか?」
「とっとと言えってんだこの海老野郎!」
ぴぎゃーと、悲鳴を漏らすも、今度の彼?はちょっと違った。必死になって光源から顔?を背けつつも、必死でソファーにしがみつくと、振り絞る様にこう言った。
「ひっ、人に、モノを訪ねる時は!相応の、言葉が、あるんじゃ、無いですかね、こっ、この、猿!」
「テメェ何様のつもりだ、この海老野郎!!!」
倫太郎が反射的に蹴りを放つも、そのミ=ゴはコートの下から突如冷気を噴出した!
「ちっ!鬱陶しいぞこの海老!」
倫太郎は、スーツの表面に霜を降らせながらも、素早く冷凍ガスから遠ざかる。
「えー、びー、じゃー、なー、いー、でー、すー。
全くモー、さっきはちょーーーーーーーーーっと不意を突かれちゃったから、下手に出てあげたのに。それを自分の実力だと勘違いしちゃった間抜けな原住民さんには、お仕置きですー!」
そう言って、ミ=ゴは冷凍ガス噴霧器をフル稼働させる。何たることか!室内は一瞬にして極寒の地となる、現在の地球の科学力ではありえないその威力、その科学力!
哀れ倫太郎も、一瞬にして凍結探偵になるかと思われたが――
「遅えよ海老」
――忍者の速度は、その科学力を優に上回る。
冷凍ガスにより一面純白に覆われた視界の中、倫太郎の姿を見失ったミ=ゴの背後を取っていた倫太郎は、ピンクのカタツムリ目がけて、河童体術、蹴速捔力による渾身のかかと落とし(ノックアウト攻撃)をお見舞いしたのだった。
「ほら!旦那!やっぱり、ここから発信機の信号が出てますでげすよ」
へこへことおかしな角度の頭部を何度も下げ、何対もの鉤爪着きの触手で揉み手をしたミ=ゴが、一番大きな触手で指し示したのは棚の奥。
そこには、ミ=ゴ次郎から報酬として預かったダイヤモンドを保管してある、金庫が隠してある場所だった。
「テメェら」と倫太郎が歯ぎしりをした瞬間だった。懐からスマートフォンの振動が聞こえる。
倫太郎がじれったくも、慌てながら通話ボタンを押したと同時に、悲鳴のような鈴子の声が入って来た。
「若さ、嫌 きゃ」
ブツリとそれは一瞬で切れる。間違いない、してやられたのだ。
「あの海老野郎」
くしゃりと、手に持ったスマートフォンを握り潰した倫太郎は、一瞬で室内から掻き消えた。
目指すはもちろん、博士の研究所だった。
探索編と言う名の決着編なのかもしれない……。




