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戦力の確保

「ここ、メルトディア城よ」


 ミュエルは俺の驚く顔を見て不思議そうにしていた。

 

「どうしたのよ? アナタのところの巫女から聞かなかったのかしら?」

 

 フィールからは何も聞かされていない、いや黙っていた……それはないだろう。


「どういうことだ?」

「何も教えてないなんてダメね、いいわ教えてあげる」


 呆れつつも素直に教えてくれるようだ。

 

神姫装束アフレイアドレスに選ばれた巫女は、皆神殿の場所くらい把握しているわ」

「フィールは一度もそんな素振りを見せなかったぞ」

「おかしいわね、そう言えばアナタ、巫女が神に神姫装束を授けられた時に一緒に付いていなかったのかしら?」

「そもそも神ではなく俺達が一時的に使わせてもらっていた村の村長に貰ったのだが」

「それなら尚更おかしいわ、選ばれた巫女にしか使えない力を使えていたわ、本来の適任者以外の人にはあんな力扱えないはずよ」

「フィールが選ばれていた可能性があるんじゃないのか?」

「それはないわ、巫女は必ず神に必要なことを教えてもらうのだけれど、アナタの所の巫女は何も知らなかったわ」


 つまりフィールはありえない存在であると、おそらくミュエルは言いたいのだろう。

 

「一体何者なのあの子は……」


 顎に手を当てミュエルは難しい顔で何かを考えている。

 ただ一向に答えが見えないのか難しい表情はいつまでも良くなることはなかった。



 +



 あれから数時間経って、一度俺はフィール達の所に戻っていた。

 さっきまでミュエルと話していた内容は口外してはならないということなので黙っておく。

 ただ今隣で美味しそうに若葉の作ったスープを飲んでいるフィール。

 こう見ると一見普通の少女に見えるが、ミュエル曰く本物以上の偽物らしい。


「宗一郎様、残すのは良くないですよ! 折角若葉さんが作ってくれたんですから食べなきゃダメですよ!」

「悪いな考え事をしていただけだ、今から食べるさ」


 すると後ろからスープを取り上げられた。


「もう冷めてるじゃない、温め直すから少し待ってて」


 若葉はスープを持ってキッチンに行く。

 それを見て蓮が……。


「宗一郎のお母さんみたいだな」

「蓮、冗談も程々にね?」


 若葉の手には包丁が握られている。

 刃先には野菜でも切っていたのか葉が付いている。


「わかった! 悪かったって!」

「わかればいいのよ」

 

 蓮は静かにスープを三度口にした。

 

「そういえばフール君とユンちゃんはどうしたんですか?」

「それならアイリ……」

「むっ!」


 フィールは不機嫌そうな顔で俺を見る。

 下手に名前を呼ぶことが出来ないようだ。

 渋々俺は言い直した。


「いやアインが村に帰らせてくれたみたいだぞ」

「そうですか、それは良かったです」


 どうやらこの部屋の中では男は肩身が狭いようだ。

 俺と蓮は二人揃って深く溜息を付いた。



 +



 

 翌朝――。


 再び俺はアインに起こされ城に来ていた。

 だが二日連続で早起きしたところで何も得はしないようだ。

 

「誰だよ早起きは三文の得って言ったやつ……」

「どうした? 顔色が悪いみたいだな」

「それはお前が朝早くに起こしに来るからだろう!」

「これは王女の命令なのだから仕方がない、それに見てみろ朝日が綺麗だろう!」


 白い雲の中から眩しい朝日が現れメルトディアを照らす。

 

「そうだな」

「やはり俺の目に間違いはなかったいい男だ」


 今のはおそらくアイリスの言葉だろう、しかし今はアインの姿で『いい男』なんて言われても気色が悪い。

 むしろ貞操の危機を感じてしまう。

 

「うげぇー」

「大丈夫か? あと少しで城だ持ち堪えろ!」

 

 そんな事言われても体が揺れてさらに気分が……。

 

「仕方ないでは魔弾装填――転送弾・バースト」


 空の上から一瞬にして城の中に移動した。

 ミュエルは俺達が突然に城の中に現れたのでかなり驚いていた。


「なんなのよもう!」

「申し訳ございません、大丈夫ですか王女?」


 アインはすぐに駆け寄り手を貸した。

 ミュエルは手を借り起き上がってすぐに埃を払ってから玉座へと戻っていった。


「宗一郎今日は話があるわ、神殿ダンジョンに私達も同行させてもらうのだけれどいいかしら?」


 俺は自分にルーンキュアエリクスを掛け何とか調子を取り戻した。

 そしてミュエルに返事をする。


「いいが戦えるのか?」

「もちろんですわ、私の神姫装束アフレイアドレスの能力は模造召喚、つまりそっくりに物を作り出すことができるのよ、例えばほら」


 ミュエルの手にはアインが使っている銃と同じ物が現れた。

 アインも同じく銃を出す。

 そこには全く同じ物が存在していた。


「そして模造召喚は召喚した物が武器なら本来の使い手と同じ位の扱えるのよ」

「つまり今俺の魔法銃を召喚している限りは、俺と同じ強さが王女にもあるという訳だ」


 アインがそこで補足する。

 

「そうかそれなら申し分ないな、アインが二人となれば戦力が跳ね上がる、よろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願い致しますわ」

「よろしくお願いする」


 戦力の確保がここに来て出来たお陰で、クリアに向けて可能性が少し上がった。

 

「では作戦開始は明日にしますわ、皆さんに伝えておいてくださると助かりますわ」

「わかった」


 ここに来て大きく事が進んだ、後は神殿ダンジョン攻略を成功させるのみだ。


 




 


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