17話 俺と上機嫌と不機嫌
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こんなにたくさん読んでもらえて、青空はとても嬉しいです。
そういえば…絵師のパートナー…今何してるのかな…?
しばらく音信不通だな。
青空は寂しいです。
しばらく猫子を抱きしめてから、俺は呟いた。
「俺、すぐには無理だけど…少しずつ猫子の事、知っていくから」
「うん…」
満足したのか猫子は上機嫌な表情だ。ずれた眼鏡から見える目はトロンとしていて、まさに夢見心地といったところだ。
猫子は軽く頷いて、ずれた眼鏡を直した。
俺はそんな顔を正面から見て思った。
「お前……かわ…」
「え?」
「な…なんでもねぇ…」
今、勢いで『可愛い』って言いそうになった…。
(そういえば…何度も猫子とは放してるけど、目を合わせて話したことは一度も無かったなぁ)
猫子の顔をしっかり見てみると、その顔立ちは凄く可愛かった。
いや、可愛いというより、綺麗だ。
すっきりした顔立ち、透き通るような白い肌に黒髪がよく映えている。
ふれたら壊れてしまいそうな華奢な体。なんだか見てると守ってあげたくなる。
変人と言われる原因でもあるネコミミも似合って…。
「アレ?」
(何か忘れてるような気が……)
「あっ…」
「え?」
「しまった…」
時計を見てみると時間はすでに6時を回っていた。
「ど…どうしたの?」
猫子が困惑しながら聞いてくる。
「もう6時過ぎ…」
「何か用事でもあるの?」
「いいや…文月のことだ…」
「文月…って…あのキツネの事よね?」
「あぁ…文月…怒ってるだろうなぁ」
「怒る?」
「アイツ、何でかわからんが時間に正確なんだよ…俺を起こしてくれた時もあるし、帰りが遅いと凄く怒るんだよ…」
「そ…そうなんだ…」
前にそれで凄いたくさん噛まれたし…。
とにかく…急いで帰らないとヤバイ。
でも…
「早く行ってあげて」
「え?」
猫子は俺の手を握ってから続けた。
「文月ちゃん、家で待ってるんでしょ?早く帰ってあげて」
「でも…お前はいいのか?」
猫子はさっき「私を見て」と言った…。
だけど今の猫子は自分の事より文月のことを気にかけているようだった。
「一人は寂しいでしょ…?だから、ね?」
「悪い、猫子。じゃぁ、また明日な!」
俺はカバンを担いで走った。
「そういう所…そこが好きなのかも…ね」
「この時間だと…バスは30分待ち…歩いて駅に向かうか…」
携帯で時間を確認して、俺は歩いて駅に向かった。
このまま走っても駅で電車を待っている時間があるため、結局家に着く時間は変わらない。
歩いてても、時間には余裕がある。
(余裕があるんなら、途中まで猫子と一緒に帰ってあげればよかったかな…)
俺は少し後悔しながらも歩き続けた。
(文月…怒ってるかなぁ…)
「た…ただいまぁ…」
家についてドアを開けると、そこには文月はいなかった。
どうやら居間にいるようだった。
「ただいま、文月」
「…」
文月は尻尾をたたきつけるように振りながらテレビを見ていた。
見るからに不機嫌だ…。
ってゆうかその前に、何勝手にテレビつけてるんだ。
(どうやってつけたんだか…)
最近学校から帰ってくると勝手にテレビがついてる事があったが、原因は文月か。
「ただいまぁ、文月ぃ~」
「クゥッ…!」
文月はプイッっとそっぽを向いた。
「う…ゴメンな、文月。許してくれよぉ」
「きゅっ…!」
やっぱり文月は機嫌を悪くしていた。どうしても俺の方を向いてはくれない。
「許してくれよ、な?」
「あう!」
撫でようとしたら逃げられた…。
「……」
「きゅん!」
完全に怒ってるみたいだ…。
しばらくは触らせてもくれないかもしれない…。
「ほ〜ら文月〜、ゴハンだよ〜〜」
「…」
「ほぉ〜ら文月ぃ〜、お前の大好きなオモチャだぞ〜」
「…」
「文月〜〜!悪かったぁ!許してくれぇ!!」
「…」
無視された…。
前に本で読んだシーンにこんなのあったな…『溺愛していた妹が反抗期になり無視される兄の気分』それがコレなのか…。
スゲェ切ねぇ…。
今ほど乱川兄妹が羨ましく思ったことはない…。
その後も文月はとことん俺を避け続けた。
天国のお婆ちゃん(生きてるけど)俺はどうしたらいいのかな。こんな時こそ、お婆ちゃんの知恵袋とか、ありがたい言葉とか…
(……そういえば…俺ってお婆ちゃん達とあんまり話してなかったな)
「とりあえず…もう寝るか…」
時間は夜の10時を回っていた。
まだ早いが、もう寝てしまおう。
(これ以上起きていても、文月の機嫌も戻らないだろうし…今夜はもう寝よう…)
俺が布団に入ると、文月が部屋に来た。
少し期待したが、文月は自分の寝床にそそくさと入ってしまった。
「おやすみ、文月」
「…」
電気を消して、目を閉じるが、なかなか寝付けない。
文月のことが気になってちっとも眠くならなかった。
しばらく布団の中でゴロゴロしていると、何かが布団に乗ってきた。
それは掛け布団の中に入ってきて、俺の顔元までやってきた。
「きゅぅ…」
「文月…!」
それは文月だった。
文月は今、俺と一緒の布団で寝ている。
俺は文月の顔に自分の顔を近づけた。
毛が鼻に当たってこそばゆい。
「ゴメンな…文月。今日も遅くなって…」
「…」
「ゴメン…」
「きゅうん」
………。
「ペロ…」
「うわ!?」
俺は驚いて顔を離した。
「……初めて…取られた…」
文月がいきなり俺の唇を舐めてきた。
俺の初めてを文月に取られた…。
なんだか恥かしいような嬉しいような…残念なような…。
動物にファーストキスを取られた…。
「きゅぅん」
文月は俺にすり寄ってきて、体を密着させたまま眠った。
蒸し暑くて、寝苦しくなると思ったが、悪い気はしない…むしろ、凄く幸せな気分だ。
「…」
俺も寝よう。
「おやすみ、文月」
「きゅん」
俺は文月を撫で、幸せに浸りながら眠りに落ちた。
続く。
最近台風やら低気圧やらでお天気悪い…しばらく快晴の青空を見ていない青空です。