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11話 俺と嫉妬と勘違い

最近、文月ちゃんの影が薄くなってる気がする…。


だが、この小説の主役はちゃんと丈君と文月ちゃんである。


今は「猫子ちゃん偏」と言う事で。

現在時刻、20時10分 (日曜日)


バイトと大鷹先輩のデッサンが終り、今は帰り道を歩いていところだ

俺の足元では文月がチョコチョコ歩いているが、首輪は付けず、リードなども付けていない。

何故か俺の近くから離れようとしないで、しっかり後を付いて来ている。


俺はその姿が可愛くて仕方がなかった。

今すぐにでも抱き上げて頭を撫でたりモフモフしたかったが…。


(我慢しよう)


いつ面識のあるヤツと出くわすか分からない。そんなところを見られたら、何か大変な誤解を受けそうだ。

それに文月もずっと抱かれていたらストレスが溜まるだろう。家に着くまで我慢しよう。そのままモフモフしたい衝動を抑えながら歩き、家に着いたのが20分後だった。


「ふぃ〜、ただいま〜」

「きゅ〜ん」


人間って自然とただいまって言ってしまうから不思議だ。


「さて、文月の足を拭いたら、飯食って風呂入って寝るかな〜」

「きゅ〜」


文月を抱き上げ(ちょっとモフモフしてから)洗面所に向かい、濡れタオルで文月の足を拭いた。そして今度はキッチンに立っている。


「今日も素麺でいいか。光熱費あんまり掛からないし、何より手間が少なくていい」


素麺が茹で上がる数分間、俺は文月の体に顔を押し付けモフモフしたり、頭や体を撫でたりしながら時間をつぶした。


「はう〜〜、文月ぃ〜〜〜」「きゅぅ~~」

「モゴモゴ…(モフモフ)」

「きゅきゅぅ…(ジタバタジタバタ)」

「ぷはぁ、文月~」

「くきゅぅ~~」


その後、数分間文月をモフモフした後、夕食と風呂を手早くすませ、今は寝るところだ。


「文月~♪(ナデナデ)」

「きゅふ~」


文月を膝に乗せ、頭を撫でながら俺は今後の事を考えていた。


(コイツ…怪我が治ったら山に帰さなきゃいけないのかな…コイツはここが幸せなんじゃないか?それに…俺も…)


「(ブンブン!)」

俺は勢い良く首を振った


(ダメだ!そんなのは俺の勝手な考えだ!文月は、自然に帰さなきゃいけないんだ…)


撫でていた文月床に下ろすと、文月はそのまま自分の寝床へ向かった。


「おやすみ、文月」

「きゅぅん」




翌日


結局、あの後は考えてばっかりでちっとも眠れなかった。

「文月、行ってきます」

「きゅう…」

「帰ったら遊んでやっから、大人しく待ってろよ」

「きゅん」

「んじゃ、行ってきます」


学校に行くのは、正直かなりイヤだ。

何故なら、この前あんな事があったんだ…気まずくなるだろ。


(でも、休むわけにもいかないしな)


俺は重い足取りのまま学校に向かった。



~しばらくして~



変に動揺するとロクな事がないと学習した俺は、平常心のまま校内に入った。

教室に入ると猫子がコッチを見たが、すぐに視線をはずした。


(よし、ちゃんと約束守ったか)


俺が席に着くと、猫子がまたコッチを見てきたが、特に気にしなかった。

変に目線を合わせたりしたら、色々と面倒な事になりそうだし。

そこに、乱川がやってきた。


「丈、おはよう」

「うん」


俺は頷くだけで答えた。

乱川はそれだけでも嬉しかったようで、ニコニコしながら自分の席に戻った。


(何の変わりも無い…これでいいんだ)


その後は特に何も無くHRホームルームが始まった。

俺はそれを特に気にせず、半分流すように聞いていた。



授業が始まってからも、猫子は時々コッチを見てきたが、ずっと気にしないようにした。

そして限界が来た俺は寝不足だった分、3時間目からの授業は睡眠学習で授業を受けた。





「しまった…ちゃんとHR聞いておけばよかった…」


どうやら今日の授業は昼までらしい。

寝ていたせいで30分くらい無駄になってしまった…。

俺はため息を出しながら帰る準備した。すると、隣に人の気配がした。

隣に目をやると、そこには猫子がいた。


「うわ!ビックリした…脅かすなよ」

「…………ゴメン……」


細くて消えてしまいそうな声で猫子は謝った。

回りを確認すると、残っている生徒はほとんどいなかった。

その残っていた生徒もすぐに出て行き、教室は俺と猫子の2人だけになった。


「はぁ…学校では話しかけるなって言っただろ…」

「ゴメン…でも、人が少ないなら大丈夫かと思って…それに……」

「それに?」

「今日…私の家に遊びに来ない?」

「家?」

「うん…今日はお昼までだから、だから暇だったら遊びに来ない?」


(う~ん…まぁ、一応付き合ってるわけだし、今時それくらい普通なのかな?)


「わかった。いいぜ」

「あは…!うん!じゃぁ行こう!」


行くと聞き、猫子は満面の笑みを見せた。



猫子の家は、学校から20くらい歩いたとこにあった…だが。


「お…おい……猫子…お前の家、デカくね?」

「うん、少し。川野君も見たことあるでしょ?」

(いやいやいや!これは少しじゃないだろ)


猫子の家は、作りや形は確かに見たことある感じの家だった。

けれど、それでも相当な大きさだった。

チラシとかモデルルームとかで見たことあるけど、値段の桁が物凄いヤツの筈だ。


(1千万円って所じゃないだろ…コレ)


確か、桁が後2つ~3つ上だった気がする…。


「上がって」

「お邪魔します」


廊下もかなり広かった。

大豪邸…とまでは行かないが、少なくともどっかの企業の社長くらいやってそうな雰囲気があった。


「猫子のお父さんって何やってるの?」

「え!?お父さんの事、知りたいの…?」

「え?あ、いや…話したくないなら別に…」


(しまった、聞いたらまずい事だったか?)


「ううん、大丈夫…お父さんはね、社長やってるの」


予想的中


「お前って一体…。何でそんなお嬢様が一般の高校に通ってるんだよ…」

「いや、社長っていっても、そこまで大きい会社じゃないよ」


まぁ確かに、このぐらいの家なら普通高校行ってても(ギリギリ)当たり前ぐらいか。


「コッチ来て、部屋は2階だから」

「お、おう」


俺は猫子の後を着いて行った。


「なぁ、外から見たときは、3階ぐらいまであるように見えたが、3階は何があるんだ?」

「書斎とお父さんの仕事部屋、ルームシアターに洋服用の物置…くらいよ」


うん、コイツは完全な金持ちだ。


「洋服用の物置?つまり、他にも物置があるのか?」

「うん。屋根裏は、色んな道具とか機材とか用の物置よ」


屋根裏まであったか。

そんな話をしていると、猫子が止まった。


「ここが私の部屋」


そう言って猫子は扉をあけて部屋に招きいれてくれた。


「やっぱ部屋も大きいんだな」

「そう?あ、ちょっと待っててね、今お茶持ってくるから」


そう言って猫子は部屋を出た。

周りを見回すと、何か色々気になる物とかあり、ちょっと楽しくなってきた。


(他の人の家に行くなんて、一生無いと思ってたからな~…ん?)


見回していると、クローゼットのドアに布が挟まってるのが見えた。


(このままじゃシワになっちまう)


俺は立ち上がり、クローゼットを開けて服を戻そうとした。

だが開けた瞬間、俺は固まった。


何故なら…


(黒いドレスみたいな服がいっぱいあるぅぅぅぅぅぅ!!!!!)


普通の一般人は滅多に着たりしないような服が沢山ハンガーに掛かっていた。

しかも、どれももっさりしているというか…装飾が多いというか、テレビで見るメイドみたいな服もあった。


(何だアイツは!?今時の女の子はこれが普通なのか!?それとも金持ちは皆こんな感じなのか!?)


わからない…とりあえず俺は引っ掛かっていた服を直し、クローゼットを閉じた。


(色々と凄いな、猫子は)


最近は驚いたりすることが多いが、コレは上位に入るくらい驚いた。

そして少し待ってると、猫子が紅茶とクッキーを持ってきてくれた。

さすがに、お手伝いさんらしい人は居ないみたいだ。


「ゴメンね、適当に座って大丈夫だよ」

「あ…あぁ……うん、ありがとう」


言われたとおり、俺は適当に座った。

正面には猫子が正座で座った。


「ねぇ、川野君」

「苗字で呼ばないでくれ。嫌いなんだ」

「じゃ…じゃぁ……じ・じじ・じ…丈君」

「何だ?」

「聞いてもいい?」

「答えられる事なら」

「うん…丈君は何で、私をあの不良から助けてくれたの?」

「あの不良?」

「ほら、1年生の夏休みに…私に絡んできた」

「あぁ、あの時か。前にも言ったと思うけど、俺はお前が優しそうだったから助けたんだ。それに…」

「それに?」


「…あそこでお前を見捨てたら、俺は俺を捨てた親と同じになる。自分の都合で誰かを見捨てるようなやつが…俺は大嫌いなんだ。だから…俺は傷ついてもいい、だけど他のヤツが俺の都合で傷つくのは絶対に止めたいんだ。だから助けた。自分が絡まれても、お前が逃げられるならそれでよかった」


「……そうなんだ。ありがとう」

「気にするな。放っておけなかっただけだ」



その後も他愛も無い会話や、趣味の話で盛り上がった。

俺は他人とここまで話すのは久しぶりで、つい楽しくなった。

以前は1言も喋らないで終った日も珍しくなかったぐらいで、半分信じられなかった。


(こんな気分になったのは、久しぶりだな。)


だが、楽しい時間というのは、あっという間に過ぎてしまうものだ。

時計を見ると、時刻は夜の6時だった。


「あ、ヤバイ。もうこんな時間か」

「まだ6時よ?」

「でも文月が待ってるから、ソロソロ帰らないと」

「え…?」

「じゃぁな、猫子。楽しかったぜ」

「………」


(ドン!!!)


だが、俺が帰るためにと立ち上がろうとした時、突然突き飛ばされ、ベットに押し倒された。


「うわ!え!?」

「……」


押し倒したのはもちろん猫子だ。

猫子は今、押し倒した俺に覆いかぶさる体制で体を押さえつけていた。


「何すんだよ!」


ポタポタ…と、顔に何か熱い物が落ちてきた。

それは猫子の涙だった。


「猫子…」

「…何でよ……」

「え?」


「何で私を見てくれないの!?私は丈が好き!!私と丈は付き合ってるのよ!なのに文月文月って…文月なんて女に丈は渡さない!丈は私だけを見ていればいいの!私は丈を見てる!私は丈を愛してる!!なのに丈は私を見ないで他の“女の人”を見てる!どうして私を見てくれないのよぉ…!」


「猫子…」

………ん?………

“女の人”?



「おい、猫子…お前もしかして勘違いしてないか?」

「何が…」

「文月はキツネだぞ」

「…………え?」


続く

後書きって誰も見ないの?

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