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25 ミラージュ大氷河から

ミラージュ大氷河の南端の山。


この吹雪の中では、

およそ似つかわしくない

薄い生地のドレスアーマーを着た

女が静かに村を見下ろす。


先日から村を襲った悪魔が

次々に村人をその凶刃にかけ、

いよいよ氷河南端の地に

生臭い死臭が立ち込めはじめた頃

土地からは不穏な気配が生まれつつ

あった。


看過出来ない気配の原因を探るべく

長老評議会から命を受け

氷河の遥か奥から偵察任務の為

私はゲートを通り人族の村の近くまで

やって来た。


ゲートを抜けた先

何者をも凍り尽かせる

死の冷気が支配する氷河奥

それよりは幾分穏やかな外気と共に

濃密な怨嗟の死臭が漂う土地の空気に

眉を顰める。

一歩踏み出した先で咄嗟に眉間に険しさが

浮かぶと共に鼻を押さえる。


「臭いな…」


思ったより悪い気配に

私は更に深い険しい表情になる。

整った顔の自覚はあるが、

こうも険しい顔では

少し強面に見えるかも知れない

色白で三白眼の瞳もそう言う印象を他者に

与えている事も分かっているが、

部隊を率いる職には最適だろう。


山の中腹から少し先に多数の人族の気配と

怨嗟を振り撒く元凶とは別に、

不穏な気配が二つ

ゾワリと首筋を撫ぜる感覚に

冷や汗が噴き出る。


高度な隠密の術式を起動している筈だが、

何故だかずっと何かに見つめられている様な感覚を覚える。

人族に聖霊の隠密を破れるはずも無いと

思い直し怨嗟の元凶に意識を向ける。


人族同士の争い事に介入はしないが

これ以上の土地への蛮行を

許す訳には行かないと

思い始め行動を起こそうと踏み出す瞬間

私は蒼く美しい深い泉の様な

魔力の青年に釘付けになった。



----------------


しばらく蒼く澄んだ魔力に

とても言い表せない心地よさを感じ

見つめていたが、

ふと私は覚えのある感覚をそこに見つける。


私達にとってもとても大きな意味を持つ

数100年ほど前に紛失した欠片がまさか

あの様な場所にあったとは思わず

息を飲んだが、あの者を主人として

選んだ姿を見た私はフッと

笑みが溢れる。


「そこを居場所と決めたのですね…」


長老評議会からは

接触を許可されてはいない。

蒼く深い水底の様な静寂で美しい魔力の

持ち主に抗い難い好奇心と

これは好意だろうか?

好ましいと思える感覚に

思わず眉をひそめる。


種族の中でも厳格な議会右派であり

きっての堅物と揶揄される私が、

忌まわしき人族であるはずの

あの少年にこの様な感覚をいだくなど

何か後ろめたい様な思いに

眉間に険しさを浮かべ、

さらに気難しい顔を隠しもしなかった。

あの幼馴染の少女が苦笑いする様を

思い浮かべて、一層険しい顔になる。


離し難い視線を無理やり振り切って、

任務を遂行する事に集中すると決めた時

あの少年から発せられる覇気の様な気迫に

行動を起こそうとした身体が

まるでその場に縫い付けられたかの様に、

ピタリと止まって

自分の意思では動かせない事に愕然となる。


ヒヤリとした感覚に私はゆっくりと少年の

方を振り返ると、戦士である私から見ても

危うさのあった少年から

凄まじい気配が発せられる。

隣にいた少女の姿をしたナニカも

聖霊やそれの類に思えるような

圧倒的な恐ろしさがあったが、

少年からは得体の知れない

気配を感じる。


圧倒的な剣戟を放つ剣士に対して

少年には片手が無く魔法主体の

術者だと思っていた為

剣戟を咄嗟には防げないと思った

瞬間

どこからか現れた黒い腕がその無いはずの

部分に現れるとスルリと兇刃をいなした。


「!」


素早く切り替えた剣士が

卑怯にも少女の背後をとり

喉元に湾曲した血生臭い剣を突きつける。

その刹那ゆっくりと目を開く少女


出鱈目な魔力を隠しもせず、

チラリとこちらを見たのだ。


「アレはいかん…すぐに評議会へ報告せねば!」


数百数千と言う歴史の中、

度々破壊と絶望をもたらす厄災


私はきびすを返してもと来た

ゲートをくぐる。

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