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第9話 付与技術

 俺は、武器を磨いたり運んだりしている間、たまにケスタの魔法付与のやり方を見ていた。

 俺は『速筆』で、素早く魔法を付与する事は出来るが、根本的な付与のコツをハッキリとは知らない。丁寧に書かなければならないことは分かっているが、どのような丁寧なのかも見て覚えなくてはならないと思ったのだ。


「……ヒイユ、何か聞きたい事があったら、聞いていいぞ……?」


 俺の視線があまりにもあからさますぎたのか、しばらくウロウロしているとケスタはそう俺に声をかけた。


「悪い、ちょっと魔法付与のコツが知りたくて……」


「……! ああ、コツは……」


 俺がそう聞くと、ケスタは嬉々としてコツを教えてくれた。字を出来るだけ小さく、ゆっくりと丁寧に書くのがコツらしい。しかし、あまりに遅く、小さく書きすぎると、字が滲んでしまい魔法が上手く発動出来なくなるらしい。ある程度のスピードを保ちつつ、スラスラと記入するのが一番魔法を付与できるらしい。


「……直接付与する場合も大体変わらない」


「……なるほど」


 一番練習すべきなのは、より小さく文字を書く事かもしれない。まあ沢山魔法を付与するには、字が小さい方が効率的ではあるよな……。


 ……字を小さく書くことで魔法の威力が落ちたりは……多分しないのだろう。

 今あまり思い出したくない気分だが、ライフィも魔法を撃つ時、小声で詠唱したりしていた事もあったが、威力が変わったというような事は多分なかった。

 よく分からないが大体同じ事だろう。


「ありがとうな」


「……おう」


 ……俺はケスタにお礼を言い、また武器磨きと運搬を再開した。取り敢えず今は一刻も早く文字を覚え、コツを覚えなくては。


「ん、よく働いてるわね。まあ、今日は説教、勘弁してあげるわ」


 武器を運んでいる時、レイーナがすれ違いざまにそう言った。そうだ説教は後とか言われていたんだった。


「はいっ……ありがとうございますっ!!

……えーと、フクシアは……?」


 俺は背筋をピンと伸ばし、レイーナにそう聞いた。


「ああ、えーっとね、まあ、フクシアも仕事があって、たまに馬車で別の町に行くのよ……」


 レイーナは、苦笑いしながら説明した。

 ……全てを察した。“フクシア”だな。


「でも、“フクシア”はいつもの事よ。私も昔、遠慮しないで……なんて言っちゃったし。それにフクシアは優しいから、毎回本当に仕事を紹介してもいいのかって確認を取ってくれるのよ。フクシアの両親のお陰で、面倒もだいぶ解決してもらっているし……」


「ん……?」


 フクシアの両親……!?

 面倒をだいぶ解決してもらっているとは、一体どういう事なんだろうか……。

 ……まあとにかく、“フクシア”は、同意の上で、面倒は……フクシアの両親に何とかしてもらっているみたいだし……大丈夫、という事か。


 ……本当に大丈夫なのかは深く聞かないでおこう。


「ほらほら、話は終わりよ、働いた働いた!」


「は、はい!」


 その話を気にしながら、俺は仕事に戻ったのだった。

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