第25話 ついにギルドへ
……今日は、運命の日だ。ついに、ギルドへ、行く事となったのだ。ティルムと一緒とはいえ……噂など全くされていないと分かったとはいえ……や、やっぱり、なんとなく苦手意識が芽生えてしまっている。
ティルムは、ギルドの外で待っていたが、こちらに気づくと、「こっちこっち!」とギルドへ入って行こうとしていた。
大丈夫、大丈夫、きっと入れる……。
……待ち合わせ場所がギルドなだけだ、この後移動するんだからきっと大丈夫。俺はそう自分に言い聞かせ、重たい足を動かした。
いや、でもやっぱり……。
「ちょっと、待たせちゃってるからさ」
俺が、ドキドキしながら少しずつギルドとの距離を縮めていると、さすがに待ちかねたのか、ティルムが戻って来て、俺の手を掴み、強制的にギルドへ連行された。
……ああっ、ま、まだ、心の準備が……。
「……っ!」
俺はギルドに入った瞬間、何となく息を止めてしまった。
「……? どうして息を止めてるの……?」
ティルムの反応で俺は正気を取り戻し、すぐに息を吐いた。
別に、息は関係なかったな……。
「……っ、はあ! い、いや、何となく……な、何でも?」
「……まあいいや。ああ、あの人が、依頼した人だよ」
ティルムは、ゼェゼェと息を吐く俺をスルーし、ギルドのイスに座っている、剣士のような装いの男性を指さした。
「じゃあ、話に……」
「ああ、ティルム!」
「おお、久しぶり」
ティルムと共に、その男性に話しかけに行こうとした時、何やら知り合いであろう人に、ティルムが話しかけられていた。
「ありがとう、付与の事を教えてくれて!」
「いやいや、私は教えただけだから……ね、ヒイユ君」
「えっ!? ま、まさかあなたが、ヒイユさん本人……!?」
ティルムの知り合いは、ティルムの話を聞くと、驚いたような表情で、こちらを見た。
そういえば、名前も出してギルドで広めたって言っていたもんな……。
「ありがとう、私、剣の扱いがあまり上手じゃなくて……だから、あまりにも難解な魔法が付与された武器は嫌だったんだけど、でも、やっぱり武器にはいっぱい魔法を付与して欲しくて……。私、結構注文が多かったのに、きちんと対応してくれて……嬉しかった」
俺と目が合うと、ティルムの知り合いは、笑顔で感謝を告げてくれた。
「ああ、いえ……」
その言葉を受けて、俺の心は何となく、温かくなった気がした。
……ちゃんと、俺の仕事には意味があった。……魔具職人として、活躍できているんだ、という思いが、溢れて来る。
ギルドを避けていたのは、間違いだったな。今日、ギルドに来れてよかった……。
「……何!? あんたがあの、噂のヒイユか?」
「え? あの武器屋の……」
……と、俺が言葉の温かさを噛み締めていると、ティルムの知り合いの言葉に反応して、周りの人がほとんど、俺の方を向いていた。
「ありがとな、ティルムに話を聞いた後、すぐにお願いしたんだが、半日で付与が終わるだなんて」
「私は武器を買ったのだけれど、そっちの付与もていねいにされていたわ!」
……ギルドにいる人のほとんどが、俺の方へ近づき、お礼を言ってくれた。
俺は、自分がこんなにも広く認識されていた、という事よりも、ティルムの知名度に驚いてしまった。……さすが、『怪力のティルム』は伊達じゃないって事か……。




