第19話 付与の評価
「付与する魔法は、これで合っていますか?」
「うむ」
「よし……『速筆』!」
俺は付与する魔法を確認して、武器の値段を一旦考えないようにして、無心でひたすら付与を行った。
「……おお! 私の時も、こんな風に付与をしていたんだね!」
「ふむ……」
二人の視線を感じたが、気にする事はない。とにかく付与をするんだ……多少難しい付与もあるが、出来ない付与は無いはずだ……。心を落ち着かせろ、平常心平常心……。
と、俺は付与する魔法の事と、心を落ち着かせる言葉で頭をいっぱいにし、無事、付与を終えたのだった。
「おお……やっぱり速い!」
「……」
ティルムは、俺の付与を賞賛していたが、友達の鍛冶師の方は黙ったままだった。こ、怖い……ふ、付与は上手くいったはずだよな……?
「……なるほど」
剣を持ち上げ、ティルムの友達の鍛冶師は意味深な事を呟いていた。
……頼むから良いならいい、ダメならダメとハッキリ言ってくれ……緊張が解けない……。
「確かにいい付与だ」
と、考えているとティルムの友達の鍛冶師はそう呟いた。よかった。やっぱり付与に問題はなかったか……。
「……なるほど。……名前は確か、ヒイユ、と聞いていた、合っているか?」
「あ……は、はい」
「……ヒイユ、時間があれば、少し話をしていきたいのだが……いいか?」
「えっ?」
移動しての付与という事で、道中何があっても良いように、時間は多めに取ってある。話す時間くらいはあるはずだ。
……でも……話ってなんだろう。
付与に問題はなかったはずだよな?
……ああもしかして、付与がとっても良かったよって言う話か?
……そんなのわざわざ話をしたいと振ってから話すような事か?
「……は、はい」
俺は色々なことを考えてしまったが、とりあえず話を聞いてみる事にした。
付与がいいとは言ってくれたんだから、きっとそんなに悪い話ではないだろう。
「じゃあ私は帰るね!」
「おう、じゃあなティルム」
俺が、はいと言った瞬間、ティルムは手を振りながら去っていった。えっ、ティルムは、居てくれないのか……。
「じゃあ、こっちへ」
「は、はいっ……」
こうして俺は緊張の中、ティルムの友達の鍛冶師と話をすることとなったのだった。