第1章 6 ……あ、親か
盛大にコケて突っ込んでいった光に包まれ空中に浮かんでいるような感覚が押し寄せる。
と、次の瞬間、光が収束し始め一つにまとまると……、
「……あぅ……?」
「……う、産まれました! 産まれましたよベスタ様!!」
「はぁ……はぁ……。私の、私の子供……」
「がんばったな……よく、がんばってくれたな……
ありがとう、ベスタ……うぅ……」
「はぁ、はぁ……、何故、泣くの……? あなた。喜ぶところでは、ないの……?」
「違うんだ。俺はただ嬉しくて嬉しくて……」
「はぁ、はぁ、そう……なら、よかったわ……」
「あぁ。お疲れ様、ベスタ。今はゆっくり休んで
いてくれ」
「えぇ……そう、するわ……」
そう言うとベスタと呼ばれた女性はスイッチが切れたロボットのようにパタリと動かなくなり、すぅすぅ寝息をたてて自らの赤ん坊を優しく抱きしめながら眠った。
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(ここは……どこだ……? いや、分かる。分かるんだけども、異世界でーすとかいう漠然としたものじゃなくてどういう土地、どういう地方、どういう国なのかが知りたい。てか、この女誰だよ、結構な美人さんだが、こんな女に覚えねぇしなぁ)
廉翔は光が収束していくのが見えて眩しかったので思わず目を閉じて次に目を開けたら急にメイドさん的な女の人が見えてその後に視界に入った男が泣き出し、なんか美人が台無しになるくらい疲れきった女が自分を抱いてパタリとスイッチが切れたように眠り始めたという訳の分からない状況に少し混乱していた。
(言ってることは理解出来るんだけども。なんか俺喋れないみたいだし。どうなって……あ……確か、赤ん坊に戻って人生やり直すんだったか。なるほど。
え? ……ってことはこの結構な美人さんは……!
まさか!! 俺の、俺の母親って事になるのか! うぉぉぉ、いきなりテンション上がってきたぜぇ!! っといけないいけない。赤ん坊でも俺は紳士だ。ジェントルベイビーだ。
対応を間違えちゃいけない。
まぁ、それは置いといて、この世界なら俺は、俺は頑張っていける気がする!!
あ、そう言えば母親の名前は確か……べ、ベスト? べセタ? なんだっけか……あ、そうそうベスタって言ってたなあの男の人が。てことはあの男の人が俺の父親ってことになんのか。なるほどなるほど。で、最初見たあのメイドさんっぽい感じの人が助産師的な感じの人ってわけか。それとも普通にこの家で雇われてるメイドさんなのかな?
まぁ、後々わかることか。とりあえずは俺はこの新しい世界の母上様と父上様のお名前を覚えるところから始めよう。あ、あの助産師メイドさんも雇われてるならしっかり覚えてあげよう。)
赤ん坊が考えるはずもないことを思考しつつ母上様の腕枕に身を任せる。
まぁ、俺はこの世界がどういう風になってるのか知らんがボチボチ生きていけるだろう。そう、平凡だ。平凡が一番なのだ。前世でよく知っている。変ないざこざに巻き込まれないように注意して生きていこう、などと明らかにフラグとしか思えないようなことを考えながら周囲を見渡してみる。
意外と質素な造りである。木造の建築、木のタンス、木の机、椅子、ライトスタンド? 的なもの。
そして、今寝ているベッド。
窓からは外が見渡せるっぽい。見た景色の感じからしてここは2階らしい、ということは2階建てなのか、果てさてもっと上に階層があるのか…色々思い浮かぶことはあるものの見た感じではいい部類に入る程度の家であった。
家具は少なく殺風景な感じがするが、木造建築の木目が程よく交錯し、そう感じさせない。
うん。この家の評価は☆4つは付くであろう。
ちなみに最大はもちろん☆5つである。
それよりも、俺の大事な大事な母上様をお1人にするなど父上様は何を考えているのだろうか。夫婦たるもの常に支え合うものなのではなかろうか。
まぁ、享年36歳DTニートにはわかるはずもないけども。自分の顔はあまり見たことはないが、悪くはなかった気がする。でも、良くもない。可もなく不可もなくという感じだ。太〇の達人ならパーフェクトなのに。
だが、前世では少し引き篭もり気味だったので下方修正がかかって悪い方に寄っていたのかもしれない。そう、だからモテなかったのだ。うん、そうだ、決して俺は悪くは無い! 多分。
っとそれよりも俺は今日からこの家の子だ。
あのクソみたいな世界とは違う異世界の違う家庭の子供だ。そう、それも赤ん坊なのだ!
名前はまだ呼ばれてない気もするが、あとあと呼ばれるであろう。気にすることは無い。
俺は、異世界に転生したのだ!
ここから俺は新たな1歩踏み出すであろう!
……まだ立てもしないんですがね。
名前とか皆様どうやって決めていらっしゃるのでしょうか…
パクリとかも気にしないといけないという胃が痛くなりそうな作業を皆様は上手い感じに名付けていらっしゃる…
私も名付けの能力が少し欲しい…