第2章 26 俺の運気はどうなってるんだ。
新たな可能性を信じて……!
俺があのトカゲに食われかけてから2日経ったが、未だに何も見えてこない。
見渡す限り一面の荒地。
所々大きな岩があったり、擬態したトカゲとかしかいない。
そして、2日も経てば少しはトカゲの倒し方を覚えてきた。
一応カントが怒られないように俺からベスタに頼んだ。だってまたああなったら、カントの何かが潰されるかもしれないからな。
何かは未だに知らない。知りたくはない。現実逃避をしている訳ではない。断じて。
で、話は戻るが、今もその狩りの最中である。
「水球!!」
「ぎゃうっ!!」
まず、水球をトカゲに目掛けて発射。トカゲが軽く避けるが、避けられるのは想定内だ。
そもそもあんまり当たらない。
「水球! 水球! 水球!」
「ぎゃぎゃっ! ぎゃうっ!」
トカゲは軽々と水の塊を避けていく。
……1発くらいは当たってもなぁ。ま、まぁ、当たらなくてもいいのだ。
俺の狙いは……
「氷結!!」
「んぎゃうっ?!」
そう、これだ。これで足まで固まれば儲けもの。
固まらなくても足場は滑るから避けづらいだろう。
ふっふっふ、どうだトカゲめ。散々逃げ回ってくれたな!
どれ、俺が引導を渡してやろう!!
「岩砲ぉ!!」
俺の渾身の岩砲がトカゲめがけて飛んでいって……!
……………………………いって、
「ぎゃうっ?!」
寸での所でヒョイっとトカゲが避ける。
「いや、当たれよぉぉぉ!!!」
くそぅ、足場悪いくせにギリギリで避けやがった!
ま、まぁ、そんな時もある。
カッコつけて当たらなかったからって俺はキレて冷静さを欠いたりはしない。
「ふっ、たまたま避けたか。次こそはっ!! 岩砲っ! 岩砲っ! 岩砲っ! 岩砲っっ!!」
岩砲四連発だっ! これなら当たるだろう! いけぇ!!
「ぎゃぎゃうぅ?! ぎゃぎゃっっ!!」
足場が悪いにも関わらず、トカゲがギリギリで、だがとても器用に避けていく。
「何でだよぉぉぉ!!!」
くそがっ! なんで避けきれるんだよぉぉぉ!!
もう怒ったぞ! こんなやつ……!
俺がそう思うと同時に俺の周りの魔力の流れが急に変わる。
「………白銀世界」
「ぎゃっ……!?」
……ふぅ、これでよし、と。やっと止まった。
「……この、くそやろーっ!! 岩砲! 岩砲! 岩砲っっ!!」
今度はトカゲが動くこともなく、脳天に三発の岩砲が突き刺さる。
……ふぅ! スッキリした! 流石に頭に3発当たれば死ぬだろう。
……ま、まぁ、人はカッとなる時もあるさ。冷静さを欠く時だって……
よ、よーし! 一応確かめに行くか! うん、持ち帰らなきゃいけないし、これは是非確かめにいかねば!
そう考えつつ俺は走って確かめに行こうとして……
……して、
「あっ……」
自分の張った氷で足が滑り、見事に宙へと舞った後。
「へぶっ?!」
勢いよく後頭部を強打した。
……どうしていつもこうなる……今更なんだが本当に運上がってるんですかね……?
俺はそんなことを思いながら勢いよく迫ってくる2つの足音を遠くに感じながら意識を手放した。
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う、うーん……何か周りが騒がしい。どうしたのだろうか……?
またカントがベスタにでも怒られてるのか? いや、今回ばかりは俺のただの不注意だしカントを怒ることはないと思うのだが……
「……が、どう……か?」
「………だ、……て……け」
……いや、違う。
カントとベスタじゃない。ついでにローナさんと師匠でもない。
え、誰だ? 俺の家族はすぐ近くにいたはずだ。これはどういうことだ……?
俺はうっすらと目を開ける。そこにはぼんやりと人影が2つ見えた。やけに騒がしく感じたのだが気の所為だったのだろうか?
それに、まだ目を覚ましたばかりだからか、頭を強打したからなのかは知らないが、ぼやけてよく見えない。
「……り……た。す…………び……す」
あ、1人近付いて来る。
抵抗出来ないだろうし、目を開けてたの気付かれたらなんかやばそう。
俺は咄嗟に目を閉じ、足音だけを聞く。さっきは聞こえづらかったが、今はハッキリと聞こえる。
「そいつは一応人質だ。まだ殺しちゃだめだ。生かしておけ。分かったか?」
「分かりました」
……え? 人質がなんだって?
いや、俺は難聴ではない。そんな鈍感系主人公が大体もってるスキルなんてない。
だが、今はそんなスキルでも欲しいと思ってしまう。
こ、殺しが、なんだって……?
……ちょ、これはやばい。何がどうとかじゃなく、とりあえずやばい。
どうしよう……いや、考えろ俺。弱気になるな。
多分今、俺の所に来ているやつとそいつと話をしていたやつは男だ。2人を動けなくさせるくらいなら容易い。
が、他にも人がいたら……?
今、むやみに魔法をぶっぱなす訳にはいかない。こっちに来てるやつは俺を何処かへ運ぶのか……?
それなら運んでる最中にこいつを気絶させよう!
よし、それでいこう。
もし、失敗したら、もう腹を括るしかない。そう、腹を括るしかないのだ。
人は出来るだけ殺めたくないが、やむを得ない場合も……!
……いや、落ち着け。殺すな、とさっき言われていた。なら、道中の安全は保証されている訳で。
そいつは俺が寝ていると思って油断しているだろう。
ということは────
そうこう考えているうちに1人が寄ってきて俺を軽々とだき抱えると、
「では、運んできます」
そう言って何処かへ俺を運ぼうと……
……って、あれ? この人、男じゃない……? 透き通るような綺麗な声をしている。
なのに俺を軽々とだき抱えている……? あ、ありゃ? さっきは男の声に聞こえた気がしたんだが……
「……っ?!」
俺は好奇心に負け、薄く目を開けてみた。
──が、その姿を見て絶句した。
「あぁ。くれぐれも逃がすにゃよ?」
そこには、毛並みの整ったネコ耳があった。
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「おーい、レントー? おっかしいなぁ。さっきまでそこにいたはずなんだが……」
カントはレントを呼ぶが返事がない。まず、見渡す限り何も無い所なのに姿が見当たらない。
「……まさか、だよな」
カントの顔が少し引き攣るが、あるものを見て少し和らぐ。
「……これは……っ?! 氷漬けのミミックコドラ、か……?」
頭が無い全身氷漬けの状態のものを中心に辺り一面が真っ白の場所を見つけ、レントがやったのだとすぐに分かる。
だが、そこにいるべきものがいない。
「……って、レントがいねぇって事じゃねぇか!!
おい! ベスタ! ベスタぁっ! こっち来てくれ!」
カントは焦り気味に叫ぶ。そして、ベスタがこっちに向かって走ってくる。
「……ハァ、ハァ……どうしたの? 急に……」
カントの呼ぶ声が必死だったので急いで駆けつけたベスタ。
そして、状況を見るなり、
「……凄いわ! これはレントがやったの?!
さすが私達の子ね! やれば出来るんだわ!
凄いわねぇ〜、レン……?
……ねぇ、あなた。レントはどこかしら?」
「それなんだ! レントがいないんだ!!」
カントの泣きそうな叫びにベスタは最初、意味が分からず、聞き返す。
「……? レントが、どうかした、の……?」
カントはもう一度、ベスタに言おうとして、気付く。
……ベスタの視線が、おかしい事に。
「だから……いや、ベスタ、落ち着いて聞けよ?
レントが、ここから居なくなったんだ。いや、ベスタ、多分あいつの事だから……」
「……え……? レントが、いな……く……?」
ベスタはどうにも思考が追いつかなくなる。どういうことなのかが理解できない。
あれ? レントが……いない……?
カントが言った、レントがいないってどういう……
視点が定まらず、挙動が不自然になり、そして次第に意識が遠くなって────
「お、おい! ベスタ?!ベスタっ!!」
カントの叫ぶ声が遠くに聞こえる。その叫び声を聞きながらベスタは倒れ込んだ。
おっかしいなぁ。
運気上げたはずなんだけど……?




