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大嫌いなあの世界から異世界に転生したはずなんだが。  作者: 銅爆
第2章 冒険のはじまり……?
29/72

第2章 7 あれから5年……。

ちょっとだけ、描写がきついところがあります。

苦手な方は避けて頂くと幸いです。

気分を害したら申し訳ないです。

 時というのは早いものだ。あれはキツかったなぁ。今でも昨日のことのように覚えている。

 だが、今となっては昔の事だ。

 そう、もうあれから5年──。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






 俺は既に暗くなった外を部屋の窓からベットに座って眺めながら感慨に耽っていた。


 そう、あれから5年……目の春が訪れようとしていた。

 俺は春に生まれたからな。言ってなかったっけ。

 ん? 何がキツかったって? キツかったってのは……ね? ほらベスタの……。

 ま、まぁ! そんなことより!

 お外だ! そう、5歳からお外解禁なのだ!

 お外(仮)ではなく、本当にお外なのだ! これは嫌でもテンションあがる!

 いや、でも俺って春のどれ位に生まれたんだっけ。誕生日、そろそろだろうと思ってはいるのだが。

 あぁこんな事なら4歳のときに覚えておくんだった。自分の誕生日分からんとかいつぞの昔の人だよ。

 確かあっちでの昔の兄弟、姉妹は皆誕生日一緒にしてたとか聞いた事がある。

 例えば、5人兄弟、姉妹で皆誕生日一緒。

 ……なんか嫌だな。色々と凄そうだ。誕生日になる度に家の中がたちまち修羅場に……。

 …………これ以上考えないでおこう。想像以上にカオスだ。

 で、お外の話に戻すのだが、お外=上級魔法ということにもなるのだ! そう、俺も遂に上級魔法が……!

 うおぉぉぉぉぉぉぉ!!! これはもう、すんごい楽しみだ! やる気スイッチオンだ!

 俺はやるぞ! やればできる子なのだ!

 上級だろうが超級だろうが滅級だろうがなんでもこいや!!

 ……あ、滅級はやめとこう。俺も死にそうで怖い。自爆だけはやりたくないし。

 とりあえず、お外まであと少しなのだ。 楽しみにしておこう。

 あ、でも、その分危なくもなるな。森の近くは魔物が出るっていうし……。

 ……あれ? これって本当に危険なんじゃ……?

 ……まじか。これじゃ不安で朝も起きれなくなるじゃないか。あ、失敬、逆でした。

 夜も起きれない? あれ? あ、眠れないか。

 まぁ、なるようになるか。そうそう、襲われることはないだろう。

 そういう話をあんまり聞かないし。

 刺激しなければそこまで危険はないだろう。多分。

 あ、そういえば、新しい日課が3ヶ月継続中なのだが、キャリルは読み聞かせって言ってたが、普通に教科書読んで説明してる感じだ。

 これが、なかなかに面白い。

 混成魔法は、同じ階級の魔法同士じゃないと組み合わせられないとか、混ぜても、上の階級の魔法にはならないとか。

 他にも、砂地の場所で風属性を使うと目眩しできるとか、土属性の魔法で壁を作ってバリケードに出来るとか、導火線に安全に火を着けられるとか、水溜りを氷で凍らして歩くと滑ると……か…………。

 ……………………。

 ……コホン、最後の2つはともかく。とりあえず、勉強になっている。

 ……なっていると言ったらなっているんだ!

 まぁ、それはそうと、キャリルの授業はとてもいいものだ。親に感謝だな。ありがとうございます、お父様、お母様。あ、それとローナも。

 そういえば、最近は妙な視線を感じなくなった気がするな。

 ローナも見守るのぞくのをやめたのだろうか。

 実はまた知らぬ間に覗かれたりして……。

 ………………。

 ……ないよな? なんか不安になってきた。

 俺はそっと後ろを振り返る。そしてドアの所を確かめる。

 ……よかった。誰もいなかった。

 そこまで覗かれてるともう過保護が過ぎると思う。まぁ、いなかったから良かったけども。


 ところで、話は変わってキャリルなのだが。

 大人気無いのはもう変わらないらしい。もう、あれはDNAに刻み込まれているレベルなのだろうか。

 というか、俺に言い返されるの分かっててやってる気がするのだが……。

 ……まさか、Mなのか? 真性のMっ子なのか?

 ……いやまさかな。流石に性癖がおかしい事はないだろ。……ないよね? うん。ないんだ、きっと。

 まぁ、大人気無いところは治らないと思っておこう。そこもまたいいんだし。あとはいい人が見つかるかどうかだろう。見つからなくても俺が貰ってあげよう。

 ……あ、そういえば、日課繋がりなのだが、ベスタが読み聞かせしてくれる、『マイカス伝記』。

 あれ、終わりそうで終わらない。でも、そろそろ終わりそうってことは分かる。

 しかし、未だにベスタが読み聞かせしてくれてる。まぁ、面白いからいいのだが。

 リンたんにネタバレされるから知ってるところもあったのだが、知らないところも沢山あった。

 知ってたところは、マイカスコンビが女だったとか、古代魔術を使えたとか。

 ……スリーサイズ、リンたんが教えてくれたしな。なんでそんなの知ってたのかは俺も知らん。

 伝えた人に聞いてくれ。まぁ、聞いたところなかなかボンキュッボンだったけどな。

 それはおいといて、知らなかったことだ。

 なんか、100年くらい前から人族と魔族が対立し始めているらしい。まぁ、何度か戦争してるっぽいしな。

 なんだっけか、人族魔族なんたら大戦だったな。

 略して人魔大戦じんまたいせんって言ってたな。もう最初の長いヤツ要らなくね? って思った。

 あ、思い出した。人族魔族大陸無双大戦だ。

 ……なんだよ、大陸無双って。中〇病患者かよ。まぁ、人魔大戦って呼べばいいか。

 しかも、これ第3次ぐらいまであったし。

 ……俺絶対に略して言う。痛いヤツにはなりたくない。まぁ、中〇病戦争はおいといて。

 他には、実は滅級の上の魔法があるとか、治癒魔法の最高の魔法は蘇生だとか。

 ……もう滅茶苦茶だろ。なんだよ、滅級で最後じゃねーのかよ。蘇生とか、もうチートだろ。使えるなら使いたいわ。

 そもそも滅級でも厄災クラスって話らしいのに、その上とか、この世界滅ぶわ!

 厄災どころじゃないだろ。もう原子崩壊のレベル。人1人が撃つ魔法じゃない。

 ……突っ込むところが多すぎて追いつかない。もう無駄なのだろう。突っ込んだら負けだ。

 受け入れなければこの世界でやっていけないしな。

 俺はもうあんなクソみたいな所なんか思い出したくもない。この世界でやっていくと決めたのだ!

 よし、見聞きしたものを全部吸収して面白おかしく、楽してこの世界を楽しむのだ!

 そのために運気も上げてもらったのだ。きっと楽しいことが待ってるに違いない……!

 待っててくれ! 俺のビバ異世か──。


「レント、そろそろ眠る時間だぞー。

明日も魔法の訓練なんだろ? 早く眠れよー」


 心の中で叫ぼうとした時、部屋の前をカントが通りがかり早く寝るよう言ってきた。


「あ、はい。お父様。

そろそろ寝ようとしてました。おやすみなさい」


「そうか。おやすみ」


 そう言ってスタスタと歩いていった。

 ……カントはいい所でいつもなんか邪魔するんだよな。なんでだろう? 読んでいるのか?

 まさか、タイミングを見極めて来ているのか?

 そんな特殊能力があるなんて……。

 いやいや、それはないか。というか、今日はベスタ来ないんだなぁ。

 まぁ、来ない日もあるし、気にする事はないか。

 というわけで、さっきの続きを言わせて欲しい。

 待っててくれ!俺のビバ異世界ライフ!!!

 ふぅ……決まったぜ……!

 んじゃ、明日に備えて今日は寝るか。

 皆さん、おやすみなさーい。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※








 一人の男が不意に俺を見ながら俺の宝物を持ち上げる。


「ふん、なんだよお前。気に食わねぇ」


 男、それは高校生くらいだろうか。その男は複数名いて俺を囲んでいた。


「や、やめろよ! それは俺の大事な……」


「うるせぇ! 黙ってろ!」


「うぐっ……!」


 目の前にいた気の強そうながたいのいい男子が首を絞め、俺を持ち上げる。


(く、苦しい……! やめろ。離せ。離してくれ……!)


 声を出そうとするも、首を強く押さえつけられて声にならない。

 そしてだんだんと息が苦しくなってくる。


「こんなもんこうしてやる!」


「や……やめ……!」


 辛うじて出した掠れた声は届かず、周りにいた他の男子が俺の大切な宝物、もといフィギュアを振りかぶってから思い切り地面に叩きつけ、バキャッというプラスチックの軽い音をさせながらバラバラに破壊した。

 あぁ……俺がせっかく小遣いをコツコツ貯めてかった大事なフィギュアが……。

 販売を楽しみにしてて、やっと手に入った限定版のレアなフィギュアなのに……!


「ははっ、こんなボロいもん価値もねぇだろ。金の無駄遣いだろ、これ。

ゴミ箱がお似合いのガラクタだな!」


 そう言って俺の首を絞め上げていた男子が俺を無造作に離し、バラバラになったフィギュアをゴミ箱に投げ捨てる。

 俺は息苦しさからやっと解放され激しく咳き込む。

 それを見て周りにいる奴らもケタケタ笑っている。


「おい、お前。こんだけで済むと思うなよ?」


「な……何が……」


 首を絞め上げられ、苦しい思いをした上に大切なフィギュアまで壊されたってのにこれ以上何をするん──。


 そう思った瞬間、お腹に強く、重たい痛みを感じる。


「うごぉっ!?」


 先程俺の首を絞め上げていたやつがお腹を思い切り蹴ったらしい。

 それを皮切りにほかの奴らも加わる。

 べキッ、ドゴッ、と自分ですら耳を塞ぎたくなるような鈍く重く響いたような音が辺りに漏れる。

 一人自分を守るように蹲る俺に対し、男達は寄ってたかって殴る蹴る殴る蹴る──。


「ぐぉ……お、う……おぇぇ……」


 びちゃびちゃと音を立て胃の中のものが勢いよく喉を登り、口から吐き出される。

 それにうっすらと赤く、血のようなものが混じっている。


(……え、これ、俺、血吐いて……うぐぅ……)


 痛みで朦朧とする意識の中、吐瀉物の赤く滲んだ部分が何故か鮮明に映る。


「うっわ、きったねぇ。こいつ吐きやがった。お前らもう行こうぜ。

おい、てめぇ、今度自慢でもしてみろ。今回の比じゃないくらいに痛めつけてやる」


 そう言って、がたいのいい男子が他の男子を引き連れて立ち去っていく。


(ま……待てよ……俺の大事なもの壊しておいて……俺が、俺が何したって言うんだよ……)


「そうだ、そうだ! 社会のクズ!」


「ははっ、吐きながら泣いてらぁ!」


 去り際に皆口々に文句を吐いていく。


(やめろ。聞きたくない)


「気持ち悪いゴミだな!生ゴミの方がマシだわ」


「そりゃ、言えてる! ハハハハハハっ!」


(やめろ。それ以上言うなよ)


「おい、クズ! お前──」


(黙れ。それ以上、聞きたくない)


 一度、区切ってからニヤリと気持ちの悪い笑みを浮かべ、次に言う言葉をわざと強調するようにして。


「──もう死んだ方がマシじゃね?」


 耳に残る粘着質な、ねっとりと気持ちの悪くなる声音でそう言った。


(もう、やめてくれ……! やめてくれよ! やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ──)


 周りからケタケタ、ゲラゲラと笑う声がする。

 皆が、惨めな一人の少年を見ている。皆が皆、彼を、俺を、蔑んだ表情で見つめ──。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※













「ぅぅうああっ!!」


 俺は勢いよく飛び起きる。


「はぁ……はぁ……!」


 ……夢か。嫌な夢だ。今でもこうしてたまにこんな夢を見る。あのクソみたいな世界の。

 あぁ、胸糞悪ぃ。何なんだよ。俺が、俺が何したってんだよぉ……。


 汗でグッショリと濡れた服がより気持ち悪く感じる。


「……クソっ」


 まだあの日のアレが脳裏に焼き付いてはなれない。

 ……怖い。人が、人じゃなく見える。皆が俺を蔑んだような目で見ている。聞こえよがしに周りから陰口が聞こえる。

 皆が、俺を貶し、辱め、罵詈雑言の限りを尽くして……。


 そうだ。あれから俺は引きこもるようになったのだ。対人恐怖症が収まるまでかなり時間がかかった。

 10年くらいかかっただろうか。カウンセラーやセラピストの方が取っかえ引っかえ俺のもとを訪れた。

 それでも、完璧には治りきらなかった。

 あれ以来学生服を着てる男子を見るとあの映像がフラッシュバックするのだ。

 そして、あの罵詈雑言が頭の中で響いて吐き気を催す。もう、あれは嫌だ。忘れたい。

 なんで俺だけなんだよ。引き合わねぇ。

 俺は苦労してやっと人と話せる程度になったってのに、なんであいつらはのうのうと生きてるんだよ。


「クソッ! クソッ! クソッ……」


 俺は拳を握りしめ、ベッドに叩きつける。だが、それは弱々しく、ベットを軋ませるだけだった。


「はぁ……はぁ……」


 とりあえず、落ち着こう。

 ここはあそこの世界とは違う、剣と魔法の異世界なのだ。大丈夫。

 あんな悲惨な事には絶対に……絶対に……!



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※







「レント! 朝よ! そろそろ起きなさい!」


「……んぁ……」


 ……いつの間にか寝てたか。

 またうなされる事はなかったらしいが……。

 ……あぁ、まだチラついてやがる。クソッ、どっか行けよ。もう付いてくんな。

 朝から嫌な気分だ。最悪だよ、全く。


「……今行きます、お母様」


 はぁ……。

 今日はもう何もしたくないな……。


 俺は倦怠感に苛まれながらも何とかベッドから出る。そのまま階段を降りて、いつものように顔を洗う。

 そして皆がいる所へ行ってとりあえず挨拶を……。


 ……しようとして、それは叶わなかった。

 目の前の光景が、いつもとあまりにも違いすぎて。


 


「……え?」


「「「「レント(様)! 5歳の誕生日おめでとう(ございます) !!」」」」


 皆の揃った声が部屋中に響く。

 何が起こっているのか分からない俺は辛うじて口を開く。


「これ、は……?」


 テーブルの上に豪華な食べ物が置いてあり、皆が拍手をして出迎えている。

 頭が、理解が追いつかない。


 え……ナニコレ?



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