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共同作業をする女

 ゆき達4人が地下室から出ると、既に20時になっていたが、暖炉のある居間には誰もいなかった。

 その代わりに居間の前の廊下に人が集まっていた。


「なんだこれー?なんで、ここにあるわけ?」という真山の声が聞こえた。


「意外に重いな。何が入ってるんだ?」と盛岡の声も聞こえてきた。


「あ、本当に重いですね。開けてみましょうか?」と樋田の声。


「何が入ってるかわかんないから、そのまま運んだほうがいいんじゃない?」と和田の声。


「そうですね。じゃあ、一旦、食堂に持って行きます」と樋田が言った。


 ゆき達は、その場に行く。

 居間の前の廊下には、聞こえた声の人物達がいた。真山、盛岡、樋田、和田だ。

 そして、樋田は何かを持って、食堂に向かおうとしていた。


「どうした?」怜が廊下にいた4人に声をかける。


「居間の入り口に、鍋が置いてあってさー」


 真山がいつもの調子で答えた。


 鍋!?

 ゆきはギョッとして、樋田の持つ物を見た。

 真山の言うとおり、鍋だった。

 しかし、正確に言うと・・・


「圧力鍋・・・」怜が呟いた。


「まさか・・・」


 圧力鍋爆弾?


 ゆきがそう呟くと空気が凍りつき、皆が固まった。

 その中、唯一動けたのは怜だった。

 怜が、樋田の持つ圧力鍋を奪い取り、「扉を開けろ!」と叫んだ。


 ゆきはハッとして、慌てて動き出し、怜の言った通りに玄関の扉を開けた。

 勢い良く、冷気が室内に入り込む。

 外は、相変わらず雪で荒れている。


 怜が圧力鍋を外に放り投げる。

 ゆきは、急いで玄関の扉を閉める。


「扉から離れろ!」


 叫ぶ怜に手を引っ張られて、ゆきは扉から離れる。

 他の人間達は、状況を把握出来ないのかポカンと口を開けている。


 バァーンと近くで爆発音がした。

 空気が揺れた。

 玄関の扉もカタカタと揺れている。

 扉にドスッドスッと刺さる音が聞こえた。


 その爆発音に、皆、動揺し始めた。

 圧力鍋を持っていた樋田は、腰が抜けたのか、尻もちをついて後ろに転び、震えていた。

 マナと健一は悲鳴を上げてしゃがんだ。

 和田と真山、盛岡は目を見開いて、固まっていた。


 ゆきも微かに手を震わせていたが、その手を掴んでいた怜がギュッと握った。


 ロイを起こしに行っていたマルガリューテとソールディスがバタバタと階段を降りてきた。


「何の音!?ダイナマイトが爆発した!?」


 マルガリューテが青ざめながら、そう言った。





















 他の爆発物が屋敷にないことを皆で確認して、また居間に集まった。


「な、なんだよ。まじで怖いわ・・・。なんでダイナマイトがあんの?」真山が怯えた様子でそう言った。

 マルガリューテが話し始めた。


 ロイとエドナは、このコテージに住んでいる。雪が降らない時期は畑で農作物を育てながら、自給自足の生活をしている。

 ロングバケーションの時期になったら、契約している旅行会社の旅行客をこのコテージに呼び、使用人として働くのだ。その時期は忙しいので、マルガリューテやソールディスが手伝いにくることになっている。


 このコテージの周辺一帯は、ロイの土地だ。コテージから少し離れた小さい山もロイの所有地である。ダイナマイトはこの山に使うものだった。

 何に使うかというと、“雪崩”を起こす為だ。

 この地域では、雪崩に巻き込まれて死ぬ人も少なくない。だから、自然の雪崩が起きるのを防ぐために、“人工雪崩”を起こすためにダイナマイトを使う。


 ロイはそれを知られてはいけないと思い、ダイナマイトを置いていた地下室の存在を隠していていたのだと言う。

 結局、犯人が見つけてしまい、今回のようなことが起きてしまったわけだが。


「じゃ、じゃあ、爆弾で人を殺そうとしたわけ・・・?」顔を引きつらせながら、和田が言った。


「わからない。だが、もしあのまま爆発していたら、全員死んでいたか、重症を負っていたな」


 怜の言葉に皆、沈黙した。


「何故、鍋に入れてたんだ?ダイナマイトを隠すためか?」盛岡が疑問を投げかけてきた。それに怜が答える。


「いや、密閉力が高い容器ほど、破壊力が大きくなるからだ。あと、軽油と肥料で作ったアンホ爆薬と、ダイナマイトを合わせることで、普通のダイナマイトより威力はさらに増す。それを合わせて入れるには、鍋は適している。さらに、これが扉に突き刺さっていた」


 怜が皆に、あるものを見せた。


(くぎ)?」健一が呟いた。

 怜が持っていたものは、確かに釘だった。


「そうだ。大量の釘が玄関の扉に突き刺さっていた。おそらく、圧力鍋にはダイナマイトとアンホ爆薬以外に釘を入れていたんだ」


「なんで?」マナが首を傾げて言う。


「圧力鍋爆弾と釘の組み合わせは、殺傷力が高い。爆発したと同時に大量の釘が、銃の弾丸のように周りに飛び出すからだ」

 怜の物騒な言葉に、また皆が沈黙した。


「皆殺しする気満々じゃない・・・」

 疲れたように和田が呟いた。


「俺たち、どうしたらいいんだろう・・・」

 健一も不安そうに言った。


「犯人を捕まえようよ。っていうか、犯人もう分かってるじゃん!」

 マナが憤りながら言った。


「え?分かったの?すげーな」と真山。


「だって、あの場所にいなかったのって、ロイさんとエドナさんとマルガリューテさんとソールディスさん、あと橋爪さんだよ!

 だから、犯人は橋爪さんしか考えられないじゃん!」興奮した様子でマナが言った。


「確かにそうだな」盛岡がマナの意見に頷いた。


「私、橋爪さんに辞めて下さいって言ってくる!」そう言ってマナは、立ち上がった。


「証拠もないから、橋爪さんとは限らない」怜が言う。


「そうだよ。もし犯人だったとしても、そんなことを言いに行ったら、殺されちゃうかもよ?」和田が、マナを宥めるように言った。


 マナは「そっか。そうだよね」と、少し落ち着いて、またソファに座った。


 そして、今後はどうするか、全員で話し合うことになった。






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