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コンプレックスな反逆者たち  作者: ゾンビ―鈴木
第四章・神と人間の世界編
103/114

再戦 その参

となると最後に戦うのは……

それでは、どうぞ

―――――――――――――――断章―――――――――――――――


  Side:三人称


「ルージュ! どこにいるのですか、ルージュ!!」


 反逆から七年以上前。

 神の存在する空間にて、四輝天使ブルーはなにか辛そうな表情でルージュを探していた。

 その様子をみたヴェールがなぜか可笑しそうに訊く。


「うふふ、あらどうしたのブルー。珍しく血相なんか抱えっちゃって、またジョヌがなにかやらかしたの?」

「違います! ヴェール、あなたルージュを見かけませんでしたか? あの方に言いたいことが多くあるのですが……!」

「ルージュ? あいつなら確か、どっかの地域で悪さした罪人クズを裁いている時だと思うけど……」

「またですか……!」


 罪人を裁くという所を聴いた瞬間ブルーの渋い顔がますます渋くなっていく。

 なにかルージュに言いたいことがあるようだが……


「いいえ、それはもうおわったわ。わたくしは今ここにいるわ」

「あらルージュ。お帰りなさい。うふふふふ……♪」


 何が可笑しいのかヴェールは含み笑いをするが構わずにブルーはルージュを責めたてる。


「ルージュ! あなた昨晩のこと、いったいどういうつもりですか!!」

「なんのこと、ブルー」

「なんのことではありません!! 何の罪もない子供に刃を向け、それどころかその子の親を切り殺したなど、やっていいことではないでしょう!!」


 ブルーの言っていることは、かつて両親を亡くした幼いころのマゼンタを殺そうとし、しかしマゼンタは殺せずに代わりに拾ってくれた第二の親……もとい自分たちを作り上げたディースを殺したことだ。

 いくら罪人に対して厳しすぎるルージュもこればっかりは許されることではない。

 しかしルージュは大してなんとも思わない様子で言う。


「何の罪もない? いいえ、あの人間の子供は神様を殺すなど背信な言葉をいったのよ。おそらくはあの事件による逆恨みの事かと」

「……! 逆恨みとはなんですか! それはあなたが強硬手段に出て起こした事件でしょう!! 自分は悪くないみたいに言わないでください!!」


 ルージュは知っている。

 かつて自分が起こした、反逆者たちを一掃に焼き討ちする事件に何の罪もない一般人がまぎれていたという事に。


「そうね。まさか自分から進んで背信者に関わる罪のない一般人(・・・・・・・)などいない故に、そのものも背信者かと思い……」

「あなたは命をなんだと思っているのですか!!」


 怒る、ではなく辛そうにブルーはルージュに詰め寄って大声で叫んだ。

 どうしてこうも考えが合わないのだろうか。


「どうして……あなたはあの事件だけではなく、残された子供の命まで奪おうとしているのですか……!」


 とうとうこらえきれず、自分と同じ天使の所業にブルーは涙を流してしまった。

 それなのにルージュはなんとも思わずに言う。


「簡単よ。あの子供はいずれ背信者となる。だからそうなる前に殺そうと思ったの」

「!? あなたは……あなたは……!」


 ルージュは知っている。

 自分が起こした事件に巻き込んだ一般人は夫婦であり、その残された子供が、今になって復讐心で神を殺すと言ったことをルージュは知ってしまったのだ。

 それからは危険の芽を早く摘むという意味で、ルージュは夜マゼンタを殺そうと乗り込んだのだがそれをディースに止められてしまい、逆にディースを殺してしまった。


「あなたはマゼンタを殺そうとし、結果ディースを殺してしまいました!」

「あれはわたくしたちが作り上げた冒涜的な屑人形。人間ではない」

「違います! ディースはマゼンタの新しい親でした! それをまたあなたは奪ったのですよ!! わかっているのですか!!」

「くだらない。あんな人形、ただ自己欺瞞の為にしか作られていない者、それを作ろうと思ったおのれは悪くないと?」

「!?」


 突如予想外の方向からの嘲弄にブルーは思わず黙り込んでしまった。

 ルージュはさらに詰る。


「どちらにしても、己に目をつけられた以上、余計なつぶし合いはしない。己の顔を立てて、あの背信者になろうとする子供は殺さないでおく」

「ルージュ、どこへ……!」

「しかし背信者を裁くことに変わりはない。わたくしは行く」

「待ってください! ルージュ!!」


 しかしブルーの声など聞こえないように、ルージュは火が消えるようにどこかへと消えてしまった。


「…………!」

「あらあら、行ってしまったね。うふふふふ……」

「…………うぅ!!」


 残されたのは、なお笑い続けるヴェールと、静かに嘆くブルーのみであった。



―――――――――――――――時は遡って―――――――――――――――

―――――――――――――――竜と狩猟の世界で―――――――――――――――



  Side:藍


「少年、ここで一つ、僕からお願いがあります。聴いてもらえないのでしょうか?」


 竜の住む世界であいつは敵であるはずのオレにお願いをした。


「なんだ? お願いって?」

「はい、簡単なことです」


 真剣な表情で、こいつは言った。


「彼を……マゼンタのことをお願いしたいのです」

「?」


 そう聴いた時オレは疑問に思った。

 こいつの口からあいつの名前が出てくることに、なにか不思議な感じがした。


「マゼンタ……彼がいったいどういう想いで神様に刃を向けたのかわかりますか?」

「ああ……ほんの少しだけだがわかる」


 あいつは、オレ達反逆者が出来上がるきっかけとなったあの事件で、父と母が殺された。

 あいつは、そのことに強い恨みをもっていた。

 こいつはもしやそれを知っているという事なのか?


「この後、彼は僕の元まで来ます。そして僕と戦うことになるでしょう」

「!」

「その時はどうか、僕と彼の戦いを止めないでいただきたい」

「…………」


 ……いくらオレでもこいつがなんなのかを察した。

 その上でオレはこいつに訊く。


「……オレからも訊いていいか?」

「……なんでしょうか?」

「マゼンタの両親を殺したのはお前か?」


 その瞬間こいつはなぜだか、哀しそうな表情になった。


「いいえ、違います。ですが……あいつを止められず、彼の涙を見ていなかった僕も、同罪です」


 ……その答えはオレにとって意外な回答だった。


「同罪、か。天使からそんな言葉が聴けるとはよ」


 だが、ブルーの哀しそうな表情からは、哀しい気持ちが痛いほどに伝わっていた。

 天使のくせに、まったくこいつはよくわからない。


「……わかったよ。なにか思い至ることがあるし、お前の頼みを聴くわ」


 こいつはどうやらマゼンタに何か思い入れがあるのだろう。

 おそらくその逆もまた然り、か?


「だがな! マゼンタはオレの大事な仲間だ。もしあいつが命を落とすようなことになったら、オレは必ずお前の元まで駆けていくからな」

「……わかりました」


 本当に不思議だ。

 敵とこんな会話をしているなんて……


「少年。ついでにもう一ついいでしょうか?」

「ああ? なんだ」

「もしも万が一、僕が彼に負けてしまった場合は、彼のことをよろしくお願いします」

「…………?」


 ブルーの言う彼がマゼンタのことだと理解するには時間がかかった。

 そして、理解してなおこいつの言っていることがますますわからなかった。


「あなた方のようなかけがえない仲間が、彼の居場所になるように……」

「…………」


 本当にオレは、こいつのことがよくわからない。

 しかし、どうもオレは否定の言葉が返せなかった。


「では、道を教えますので聴いてください」

「あ、ああ……」


 この時オレはこいつに対していろいろと訊きたいことができたが、いろいろと急いでいることもあるため、後回しにしてしまった。

 次にこいつに会うときは、必ず訊こう。

 オレはそう心に強く思った。



―――――――――――――――――――――――――――――――



  Side:藍


「うおおおおおおおおおおおおおおお!」


 オレは、凍って滑る足元に注意しつつも【音速移動クイックムーブ】でブルーに急接近し、音叉刀を思いっきり振り下ろす。

 が、


「…………!」


 早く攻撃したつもりだが、どうもオレの一刀じゃあブルーの二刀に阻まれてしまう。


「どうしました少年。いくら速くても動きが直線的では簡単に読まれますよ」

「くっ……!」


 だいたいこいつ……天使のくせになに剣なんか使っちゃってるの?

 ヴェールみたいに素手で戦わないのか?

 まったくお前も厄介な相手だ。

 だが!


「もう一度!」


 オレはもう一度走り、多少牽制も交えてブルーに攻撃をするが、


 キィン!


「くっ……!」


 だめだ、やはり受け止められる!


「残念ですが、あなたの剣技では僕に一太刀も浴びせられませんよ」

「…………!」


 そうか、音叉刀じゃあ無理か。

 なら、


「こいつでどう『だ!』」

「!」


 ブルーのサーベルとオレの音叉刀が打ち合っている最中、オレは【音声砲ソニックキャノン】でブルーの顔目がけて放つ!

 これならどうだ!


「(ヒュ!)…………!」


 ちっ……外したか。

 だが、


「隙あり!」

「!?」


オレの【音声砲ソニックキャノン】から生じた隙に、オレは音叉刀でさらにブルーに追撃する。

 その後防がれても再び【音声砲ソニックキャノン】でさらに追撃する!


「はぁ!」

「なにを!」


 キィン!


「喰らうか『よ!』」

「!?」

「てあああああああああ!!」


 追撃する!

 しかしまだブルーに一太刀も浴びせないまま、ブルーはオレから大きく距離をとった。


「まだだ。まだ!」


 再び俺は【音速移動クイックムーブ】でブルーのもとへと駆け抜ける。

 しかし、


「そこ……までです!!」

「!」

「【飛水刃フェイ・ラム・ドゥ】!」


 ブルーのサーベルに纏っていた水が、こちらに向かって飛んでくる。

 突然の攻撃にオレはなんとか紙一重で水の刃をかわす。


「うおっ、危なっ!!」

「まだです!」


 しかしブルーも躱されることを想定していたのか、水の刃を連続でこちらに飛ばしてくる。

 それだけじゃない。


「【尖氷の連山センデュモータニュ・グラス】!」

「!?」


 さきほどマゼンタが防いだ地面からのつららが水の刃と共にこちらへと向かう。

 だったら……!


「【高速移動クイックムーブ二重奏デュエット】!」

「!?」


 オレは【音速移動クイックムーブ】の分身により、飛んでくる水の刃とつららをかわしながら自らを増やしてブルーに迫る。

 人数を増やして攪乱すれば……!


「「はあああああああああああああああ!!」」

「一人増えたからなんですか! 【氷刃ラムデ・グラス】!」

「「!?」」


 すると、


「「がっ!?」」


 背後の地面……いや、凍った水面から氷の刃が背部に……!


「どうですか。さすがに下からの攻撃は予想外でしたでしょう?」

「「そ、それは……」」


 ブルー……

 残念ながら!


「「「どうかな!!」」」

「!? 三人目!?」

「「「ご名答!」」」


 オレは最初の分身二体を身代りにして三人目の分身をブルーの背後に回り込ませた。

 さすがに三人目は予想してなかったのか、若干動きが戸惑いがちだ。

 構わずにオレは音叉刀でブルーを背後から切りかかった。


「はああああああああああああああああああ!!」

「! この……!」


 キィン!!


「! 防がれた!」

「まだです! まだまだ通せません!」

「【超絶崩壊音声砲(ハウリングボイス)】!」

「!?」


 それはこっちの台詞だ!

 今度こそ決める!


「『うわあああああああああああああああああああああ!!』」

「しまっ……!」


 さすがのブルーも近距離からの大技には対処しきれない。

 どうだ!!


「ぐあああああああああああああああああああああ!!」

「……よしっ!」


 近距離からの【超絶崩壊音声砲(ハウリングボイス)】はさすがに避けきれなかったようであり、ブルーは回避行動に移るも、右肩を中心に巻き込み片腕を失う事となった。

 ブルーは片膝をついた状態になり、オレを見上げて言う。


「……やりますね、少年。正直侮ってはいませんがしてやられました」

「どうだ。これでオレの勝ちだろ」

「……それはどうでしょうかね」


 ……まだ何かあるのか?

 いや、いくらなんでも片腕なくしちゃ戦闘は続けられんだろう。

 だったらここで……


「なあ、ブルー」

「……なんでしょうか?」

「教えてほしいことがある」


 オレはこいつに……

 訊きたいことがある!


「お前はこの世界や人類を管理する神についていったいどう思っているんだ?」

「……神様のことですか」


 ヴェールは……あいつは何が何でも神の言う事に賛成しそうだ。

 ジョヌは……よくわからない。

 だが、こいつはどうなんだろうか?


「あなたは神様が人類を管理する本当の理由を知っていますか?」

「ああ。時間をかけて甦ったこの世界に、人類が生きていられるか、だな」

「…………そうです」


 ……ん?

 何だ今の間は?


「……そして五十年前と同じ過ちを繰り返さないかどうかです」

「同じ過ち……」


 神が人類管理をするのは初めが世界を滅ぼされた憎しみから。

 そして今は、甦った世界にどうすればいいのか。


「僕は……神様がそう思うのも無理はないかと思います」

「…………」


 ブルー……

 お前もか…………


「ヒトも神様も、みんな哀しいことがあれば同じことを繰り返さないために努力をします。もうこんなことにはなりたくない。もう失わせたくはない、と」


 もう失わせたくない、か…………

 そのために人類は管理される結果となった。

 管理されるから……


「神様は愛する世界をかつて破壊されました。その時のつらい気持ちは僕には痛いほどわかります」

「だとしてもお前は人類を管理なんてことをする神様を何とも……いや、否定しようとは思わないのか?」

「悲劇に対して臆病になるのは生ける者の本質です。ましてや愛するものに再び人類を解き放つことなど、何を確信しなくてはいけないのですか?」

「…………」


 ブルーが……

 ここにきてブルーの目から涙が流れ出した。

こいつの訴えから叫びのようなものが響いてくる。

 悲しさを織り交ぜた声で言っている。


「あなたはまだ人類を信じることができますか! 信じられるならなにを根拠に信じているのですか! 信じればもう怯えなくてもいいというのですか!」

「…………」


 ……信じる、か。

 それも人類と壮大なものがきた。

 信じられる、と確信しては言えない。

 けど……!


「ブルー。オレは所詮戦後生まれだからよ。五十年前、人類は何を思って争ったのかわからねえ。だからもう戦うことはないなんて確信はできない。だけど……」


 弟のような悲劇は繰り返してはいけない。

 マゼンタのような悲劇は繰り返してはいけない!

 そして……


「このまま人類が何もしないで生きられる時代は続けてはいけない! 生きる努力を忘れられてはならない!!」

「!」


 ブルー……お前は言っただろ?

 神様のことを知らずして反逆ができるものかって。


「……自らの行いを過ちとは思わないのですか」

「……思わない。かつての仲間たちは、みんなみんな自ら道を選んで、そして死んでいった。しかしオレ達はまだここにいる」


 ノワールを呼んだ者、失われた技術の武器を残していた者、都市の各地で四輝天使を引き付けてくれた者。

 みんなみんな、オレたちと志を同じくした仲間たち。

 だけど、もう皆はいない……

 けど、反逆自体に後悔はない。ただ……いや、今更言ったところでなにもならないか。


「オレも、マゼンタも、イエローも、神の気持ち一つで生かされた身だ。仲間たちが死んでいったというのに、オレたちはまだ生きている!」


 なんてことない、他と大して違わないのに、オレ達だけ生かされている。

 だったら……


「だったらこの命、無為に失うわけにはいかない! 今までオレ達に力を貸してくれた人のために、共に戦った仲間の為に、そして……!」


 神はなにを思ってオレ達を殺さなかったのか。

 同じ反逆者で人間に変わりないオレ達を、

 わからない。神はなにを思っていたのかわからない。

 だから……


「オレ達を生かした神の為にも、敗けるわけにはいかない……!」

「…………!」


 だからオレは……死ぬわけにはいかない。

 生きて……やらねばならないことがあるから……!


「それは……償いですか?」

「……そうとも言うし……それ以外にもある」

「……わかりました」


 するとブルーは涙を拭わないまま立ち上がり、残った左腕に握ったサーベルをこっちに向けた。

 ……まだ戦う気か!


「おい、どうする気だ。さすがに片腕のみではいろいろと……」

「甘く見ないでください。僕ら四輝天使は生体ではなく概念という存在です。故に……」


 ブルーは左手のサーベルを、なぜか腰の鞘にしまった?

 何をするつもりだ?


「……小手調べはここまで。これ以上だらだらと長引く戦いは無用です。僕は僕なりの本気であなたを止めます」


 小手調べ、だと?

 するとブルーは空に向かって何かを呟くと、突然大きく手を広げだした。

 そして、


「【神の涙ディ・ラフム・デ・デュウ】」

「!?」


 ブルーの言葉と同時に、空から何かが降り注いできた。

 これは……


「雨……?」


 おかしい。さっきまで晴れていたくせになんで急に……

 これはブルーがやったってこと…………

 …………ん!?


「……おいおい、なんなんだよそれ……!?」


 傷が……

 ブルーの傷が目に見えるほどみるみるふさがっていく……


「水とは、全ての生命が生まれるために必要なもの。故に海とは全生命の母ともいえる存在」


 無くなった右腕がまるで生えてくるかのように気持ち悪く再生していく。

 いや、右腕だけじゃない。所々負傷したところがどんどんなくなっていく……


「そして慈悲とは、苦痛を取り除き快楽を与えるもの」


 いや、傷がなくなるどころじゃない。

 なにか……ブルーがどんどん強くなっていくような……


「こんどこそ、あなたを倒します」


 今度はブルーがどこからともなく、二本の剣を取り出した。

 二つとも同じ長さで、先ほどのサーベルよりもほんの少し短い。

 だが、新しい剣なんか出していったいどうする気だ……


「行きます」


 すると、ブルーは特に何かをしようとするわけなく、ただこちらに向かって走り……


「どこを見ていますか」

「! 後ろ!?」


 は、速い!?

 一瞬にして背後を……!


「喰らいなさい!」

「なにを!?」


 なんとか回避……いや! 音叉刀で防がないと……


「はぁ!!」

「ぐっ!」


 キィン!


 危ねぇ……何とか防げ……


「まだですよ」

「!?」


 また後ろ!?

 と言うよりいつの間に!?


「はぁ!!」

「!?」


 やばい……

 なんか知らないけどやばい!!


「【音速移動クイックムーブ】!」


 とにかく、まずはブルーからいったん距離を取らなくては!!

 とにかくブルーから離れて、立ち止まらずに走り続ければ……


「無駄です!」

「!」


 え……

 なんで、【音速移動クイックムーブ】で走っているオレの目の前に……


 ゴッ!!


「がっ!?」


 しまった……!

 腹部を蹴られ……!


「…………がはっ!!」

「どうしました少年。そのままですと僕は倒せませんよ」


 結構遠くまで蹴り飛ばされたぞ……

 なんて脚力だ……!

 つーかこいつ……


「オレよりも速い……!?」


 あり得ない……!

音速移動クイックムーブ】に追いつくなんて、ヴェールぐらいしかいないと思っていたのに……!

 こいつ、明らかにさっきより強くなっている……!


「少年。立ち止まってばかりだと狙われますよ」

「!?」


 ブルーがまたも急接近して、二本の剣で追い打ちをかける。


「危ねぇ!!」


 キィン!


 何とか、音叉刀で受け止めたが……


「さっきよりも重くなっている……!」


 間違いない。原因はこの雨か……!

 この雨がブルーの傷を治しているだけじゃなく、さらに強くしているというのか……!

 今、音叉刀とブルーの剣が鍔迫り合いをしているがこのままじゃ……!


「無駄です!」

「!」


 押し切られる!


「てぇあ!!」

「!?」


 なんとかブルーの剣を受け流すことはできた。

 こうなったら、


「【音速移動クイックムーブ三重奏トリオ】!」


 分身で数を増やして、無理やり押し切る!


「はああああああああああああ!!」

「!」


 一刀目、防がれる。


「「まだまだぁ!!」」


 二刀目、防がれる!


「「「うらあぁ!?」」」

「無駄ですよ!!」


 三刀目まで……!

 全部防がれてる……!?


「残念です!」


 分身とはいえ、三刀を同時に受け止めたブルーの返しにより三人とも、斬られる!


「「「ぐあぁ!!」」」

「これだけですか?」


 こいつ……!


「「「「「まだまだぁ!!!」」」」」

「!? 五人……!」


 こうなったら手加減無用!

 五人一斉に攻撃する!


「「「「「うおおおおおおおおおおおおらぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」」」」」

「…………!」


 これで……!


「「「おわりだぁ!!」」」

「!」


 まずは五人中三人が同時にブルーに斬りかかる!

 もっとも


「無駄です!」


 キィン!!


「「「くっ…………!!」」」


 やっぱり防御されるか。

 それも三方向から攻めているのってのによ!

 だがな!


「「「かかったなブルー!! これでお前の動きは封じたぞ!!」」」

「!?」


 残念だが、ブルー。

 今の三人は押さえつけだ!

 本命は残り二人!!


「しまった…………!」

「「「いくぞぉ!!」」」

「【超絶崩壊音声砲(ハウリングボイス)】!」

「【攪乱不快音波(ブラックノイズ)】!」

「「【複合唱アンサンブル】!!」」


 ブルーは危機を察知したか動こうとするが、そんなことはさせない!


「『――――――――――!!』」

「『うわああああああああああああああああああああああ!!!』」

「これは…………!」


 聴くだけで不快になる音波と、攻撃性の音声が同時に襲いかかる!!

 これで……!


「「「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

「ぐっ…………!」


 ブルーが【超絶崩壊音声砲(ハウリングボイス)】をオレごとまともに受けて大けがする。

 だが、それだけじゃない!


「「「いけええええええええええええええええええええ!!」」」

「!」


 怯んだところでオレたち残った三人の分身で、音叉刀で追い打ちをかける!!

 とにかくブルーの身体を切り刻む!


 これで…………!


「はぁ……はぁ……はぁ……ゲホッ、ゲホッ……はぁ…………!」


 やった……か……?

 ……【超絶崩壊音声砲(ハウリングボイス)】をまともに喰らい、さらには音叉刀で斬りまくったから、傷だらけで倒れてやがる。


「……ぐ……ぅ……」


 けど、こっちだってただじゃない……

 いくらブルーを押さえつけるためとはいえ、技に巻き込まれて怪我するとはよ……

 だが……


「これで終わってくれるといいが…………」


 これで……これでもういいだろ……

 頼む……これでもう、終わってくれ…………









「……いいえ、終わりません」

「!?」









 ………………!


「まだ……終わっていません……!」


 傷ついた状態からまだブルーが立ち上がっている。

 いや、傷ついた状態じゃない。


「傷が……また治っていく…………」

「神様の慈悲がある限り、僕は負けません」

「そんな……」


 そうだった……こいつの怪我は雨で治るんだったんじゃないか……

 けど、さっきよりもまともに受けて大怪我だというのに……!


「それに、自身を犠牲にしての攻撃、僕は感心しませんね」

「…………!」


 ……もう、だめか?

 だめなのか……!


「けど、あなたはよく戦ってくれました。ですからこれで仕舞いです!」

「!?」


 なんだ……!

 ブルーの背中の翼が大きく広がって、そこから大量の水が溢れ出てくる……!

 そして、ブルーの持つ二刀にその大量の水が集まって、凝縮されていく……!?

 これは……!


「【大海刃ラム・オセアン】。もはや防ぎきることさえ不可能な大きな海のごとき刃により、あなたの身体は最期を迎えます」

「…………」


 もう、やるしかないようだな。

 ああ、ここで死ぬよりはやってみろだ!


「…………!」

「もう立ち上がらないでください。あなたはやれることを全てやり遂げました。ここで終わりを迎えても誰も文句は言いません」

「……ふざ、けるな……!」


 ここで死んでもいいだと?

 いいわけないに決まってるだろうが……!


「あのさぁブルー……オレは……いや、オレ達には……絶対に負けられない理由ってのがあるんだ。妥協なんか許さない、敗けられない理由が……!」


 神の事も、人類の事も、仲間の事も、そして……

 あいつのことも……!


「……そうですか。では、あなたの活躍をたたえ、誰にも文句を言わせないようにした上で、ここであなたを終わらせます」

「…………へっ!」


 見てろよ……

 対ヴェール戦用に開発した、分身走りとはもう一つの、危険な技を!

 正直使用回数が結構少ないから成功するかはわからないが……!


「【畜音サウンドストア】!」

「?」


 イメージしろ!

 吐き出すことではなく、自らにとどめるように!

 大きく息を吸い、そして声を外へ出さないように出す!!


「『~~~~~~~~~~~~~~~~~………………!!』」

「…………」


 自らを震わせろ、終わらせず、常に震わせ続けろ!!


「『―――――――――――――――――――――――!!』」

「……何をするつもりですか?」


 答えるつもりはない。

 そして震えを抑えろ。抑え続けろ!

 吐き出すな! 決して無為に吐き出すな!


「…………!」


 痛い……!

 体内が……器官のなかに、何かが暴れ出しているようだ……!

 早く……吐き出さないと……!


「最後の抵抗、のようですね。いいでしょう。存分に力を出し切って、そしてこの大いなる海の剣に断ち切られなさい!!」

「…………!」


 チャンスはほんの一瞬!

 来い!


「【大海刃ラム・オセアン】!」

「!」


 でかい!

 オレ一人を切るには大げさすぎるほどの巨大な水の刃が迫ってくる。

 それに速い。どう見ても回避は不可能!


 オレが思考中にも巨大な水の刃は眼前に迫る。

 だが!


「…………」


 オレの体内に畜音された音は、【超絶崩壊音声砲(ハウリングボイス)】を上回る音量で、なおかつ無駄な破壊は起こさない!

 すべてを一点に集中し、蓄えた音を解き放て!!


多重崩壊音声砲(マルチフルボイス)】!


「『『『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』』』』』」

「!?」


 近距離、集中、膨大な音量。

 この三点で大水の刃を破壊する!!


「……なんですと!?」

「…………!」


 いけるか……

 いけるか…………!


「『『『『『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』』』』』』』」


 いけえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!


「なにを……!」


 パアアアアァァァァ…………ン………………!


「…………!」

「…………!?」


 大水の刃…………

 破れたり!


「壊された!? 僕の【大海刃ラム・オセアン】が!?」

「まだだ!!」

「!」


 まだ終わっていない!

 大水の刃を破壊してもなお、放たれた音声砲がブルーに向かって飛んでいく!


「しまっ……ぐあああああああああああああああああああああああああ!!」

「…………!」


 悪いがこの技は暴れまわる音を解放する技だからよ。

 結構速いんだわ。

 おかげで、攻撃をまともに受けたブルーは体の大部分を欠損し仰向けに倒れだした。


「はぁ……はぁ……はぁ……くっ!」


 痛い……音を放出した後でもまだ痛い……!

 けど、もがいている場合じゃない。

 雨を浴びて再生するってんなら……!

 急がないと……


「無駄……ですよ……」


 やばい、再生が始まった。

 けど……!


「この治癒能力がある限り……僕は……」

「もう終わりだ」

「え?」


 こいつの治癒はこの雨が元凶。

 だったら!


「【超絶崩壊音声砲(ハウリングボイス)】! 『うわああああああああああああああああああああ!!』」

「!?」


 痛む体をこらえ、元凶である雨を降らす雲に向かって【超絶崩壊音声砲(ハウリングボイス)】を放つ!

 それにより!


「…………!」


 ブルーのところだけ、雨を降らす雲を払った。

 これでもう治癒はつかえまい。

 あと!


 ドスッ!!


「!?」

「これ以上は動かさせねぇ……」


 オレはブルーが再生直後に起き上がる前に、ブルーの腹部に音叉刀を刺し、地面……いや、凍った水面に縫い詰めるように刺した。

 もちろん、この程度じゃ無理やりブルーは起き上がるだろうから……


「なにを……」

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!


「!?」


 声と音叉刀の共振作用により刀身は震え、ブルーの体内を直接振動させる。


「…………ぁ………………!」

「…………」


 もう声は出ることはないか……

 こいつも結構無茶してやがるな。


「これでもう、お前は戦えない。起き上がるたびに内部揺すってやる」

「…………参り……ました、ね………………」


 ……まだ、喋れるのか。

 この雨……結構すげーな……


「まったく、あのような切り札があるとは……初耳ですよ」

「ああそうだ。なにせ試したのは前からだが、あんなに強くはなったのは今回が初めてだ」

「え…………?」


 声を蓄えること自体はずっと前から考えていた。

 けど、タメは長いわ、そうしている間は無防備だが、痛いわで

 まあ、本格的なのは一回試してみたが、今回みたいな威力は初めてなんでね。

 おかげでまだお腹とか胸とかが痛い……


「あなたは……あなたは結構無茶なことをしていたという事ですね」

「確実に安全な方法なんてないだろ?」

「それも……そうですね……ふふふ…………」

「!」


 ブルーが笑い出すところ……初めて見た…………

 ……いったい何が可笑しいんだ?


「少年、多くは言いませんが二つだけ」

「なんだ?」

「マゼンタと、神様の事、どうかお願いします」

「…………」


 こいつ……なんでそこまであいつのことを思っているんだ……?

それに、天使だからだけかもしれないが、そこまで神のことを……


「あなたなら……間違った答えを出さないと、信じていますので……」

「……わかった」


 この期に及んで敵であるはずのオレにそんなことを言うなんて……

 やっぱりこいつはよくわからない。


「それでは、あなたを神様のもとへ向かわせます。どうかお気をつけて」

「ああ」


 そして、オレの足元に次元の穴が出現し、オレを飲み込んだのだった。









 イエロー……マゼンタ……

 二人は無事だろうか。

 ちゃんと先へ進めたのだろうか。

 神………………

 今そこへ行くからな!


決着!

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