21、依頼内容と実技試験
少年が差し出した依頼票には、村の子供を攫う誘拐犯の特定と行方不明の子供の捜索と書かれていた。依頼のランクはCだ。
「お願い! 受けてくれよ!」
必死に頼み込む少年にフランツたちが困惑していると、ギルドの入り口付近から一人の男性が慌てて少年に駆け寄った。
「クルト! 突然話しかけて依頼を受けてくれだなんて、迷惑だろう? 皆さん申し訳ございません」
「父ちゃん、でも早く強い冒険者に依頼を受けてもらわないと、ミーアが……」
泣きそうな表情で唇をギュッと引き結んだ少年――改めクルトに、フランツは声を掛けた。
「詳しい話を聞かせてくれないか? 誘拐犯とはどういうことだ?」
「一週間前に、妹のミーアと友達の女の子が突然いなくなったんだ! そしたら三日前にもう一人俺の友達がいなくなって、二日前にも友達がいなくなって……」
「突然四人も子供たちが行方不明となったことで、村長の息子である私と、その息子であるクルトで近くの街であるここハイゼに来ました」
四人も続けて子供がいなくなるという事態に、フランツは厳しい表情を浮かべる。
「ハイゼ警備隊は捜索をしているのだろうか」
「いえ、一応ここに来てすぐ向かったのですが、田舎の村に対応できるほど警備兵に余裕はないと……」
「ほう」
クルトの父親の言葉に、フランツは怒りを湛えた笑みを浮かべた。
(自らが治める領地の管理もできぬなど、信じられない怠慢だ。すぐイザークに情報を送らねば)
「だから冒険者ギルドに来たのね」
突然黙ったフランツの代わりにマリーアが口を開くと、クルトが答えた。
「そうだ。でも相手の強さも分かんないし、魔物なのか人なのかも分からなくて……受けてくれる人がいなかったんだ。そこで兄ちゃんの強さを聞いて、頼みに来た!」
フランツの瞳を真っ直ぐ見上げるクルトに、フランツは安心させるような笑みを浮かべてクルトの頭に手を置く。
「分かった。その依頼、私たちが受けよう。マリーア良いか?」
「いいわよ。子供たちが攫われてるだなんて心配だもの」
即答したマリーアにフランツは少しだけ視線を向けると、すぐクルトに戻して楽しげに口端を持ち上げた。
「クルト、私たちが行くからにはもう大丈夫だ。なぜなら私たちは――冒険者だからな!」
フランツのその言葉にクルト父は首を傾げたが、クルトは瞳を輝かせた。
そうして急に依頼を受けることになったフランツは、待たせてしまっていた受付の女性に詫びを入れる。
「話を中断してしまい申し訳なかった。しかし依頼を受けることにしたため、実技試験はまた今度に……」
「いえ、それには及びません。冒険者ギルドの実技試験は現在のランクと同等か一つ上の依頼を、試験員の監視の下で受けていただくというものです。したがって、そちらの依頼を実技試験とすることが可能です」
その説明に瞳を少しだけ見開いたフランツは、少し考えてからマリーアに視線を向けた。
「私は実技試験も兼ねるので良いと思うのだが、どうだろうか」
「わたしもそれでいいわよ。クルトと……あなたがいいなら」
「私は村長の息子でダミアンと申します。そしてもちろん、私たちは依頼を受けていただけるのであれば構いません」
ダミアンのその言葉にフランツとマリーアは感謝を伝え、受付の女性に視線を戻した。
「では実技試験も兼ねることにする」
「かしこまりました。ではそちらの依頼票をいただけますか?」
そうして依頼受注と実技試験の受験手続きも済ませたところで、フランツたちは冒険者ギルドを後にした。
冒険者ギルドを出たところで、フランツはダミアンとクルトに声を掛ける前に、エルマーに視線を向けた。
「エルマー、私たちは依頼を受けることになったので、調査の手伝いはできなくなってしまった。すまないな」
「ううん、気にしないで。第二騎士団に頼んでみるよ」
「そうだな、その方が良いだろう。また会える時を楽しみにしている」
「うん! 今度は一緒にご飯でも食べようね〜」
ニコニコと人好きのする笑みを浮かべながら、たくさんの荷物を肩に下げたエルマーは、大きく手を振ると街の雑踏に消えていった。
それを見送ったフランツは、近くで待っていたダミアンとクルトに声を掛ける。
「本日はここで別れるので構わないか?」
「はい、大丈夫です。明日からよろしくお願いします。私たちは街まで乗ってきた馬車で、ここの冒険者ギルドに来ればいいんですよね」
「そうだ。明日の早朝にギルドで試験員と合流し、二人の馬車で村に向かう」
フランツの言葉にダミアンが頷き、明日の確認が終わったところで、四人はそれぞれの宿に戻った。
そして次の日の早朝。ギルド前にはフランツとマリーア、さらにはダミアンとクルト、そして試験員であるギルド職員がいた。
「皆様おはようございます。私は此度の依頼に同行させていただきます、レオナと申します。今回はよろしくお願いいたします」
ギルド職員の制服をビシッと着こなして真面目に挨拶をしたのは、今回の試験員を務める若い女性だ。茶髪を短く切りそろえていて、眼鏡をかけているその女性は――
密かにフランツへと探るような視線を向けていた。




