2人の誓い
薄明かりの中、時計塔の書庫は静寂に包まれていた。埃の舞う空間に、シルヴィアの手が一冊の古びた本をそっと開く。ページをめくる音が、静かな空気を切り裂くように響く。
ベンはその背後で、腕を組んで黙って立っていた。彼の視線は、シルヴィアの動きに注がれている。
「何か見つかったか?」
シルヴィアは振り返らずに答える。
「まだ、わからない。でも、何か手がかりがあるかもしれない。」
ベンは軽くため息をつき、手元の砂時計に目を向けた。シルヴィアが大切にしているその時計は、いつも彼女の手元にあった。
「これ、私の大切なもの。時間を少しだけ戻す力があるの。」
ベンは驚きの表情を浮かべた。砂時計がそんな力を持つなんて、想像もしていなかった。
「でも、使いすぎると体に負担がかかる。だから、もう使わないようにしてたの。」
シルヴィアの目には、過去の記憶が浮かんでいるようだった。ベンはその手をそっと握りしめた。彼女の痛みを少しでも和らげたかった。
「シルヴィア、俺も手伝うよ。」
彼女は驚いたように顔を上げた。
「でも、あなたは――」
「俺はこの世界のこと、何も知らない。でも、お前が辛い思いをしているのを見ているのは辛いんだ。」
ベンの言葉に、シルヴィアはしばらく黙っていた。やがて、彼女は小さく頷いた。
「ありがとう。でも、私は――」
「俺がついていく。お前が一人で抱え込む必要はない。」
シルヴィアはベンの言葉に、少しだけ安心したような表情を浮かべた。
「わかった。じゃあ、一緒に行こう。」
二人は静かに、時計塔を後にした。新たな旅路が、今、始まろうとしていた。