廃棄された城
ギルド団の城は、ツリーの木の上に空中に浮かぶように存在していた。魔法と錬金術によって作り上げられたその壮大な城は、無数の奇怪な構造物と煌びやかな装飾で彩られていた。その外観は、まるで神話に登場する古代の神殿のようだが、実際にはそれ以上のものを感じさせる。魔法の力で空に浮かぶこの城は、どこまでも人々の目を引きつける。しかし、その中にいる者たちにとって、浮遊するこの城は決して安寧なものではなかった。
現在、この城で頂点立っているのはパウルとベンが作り上げたギルド団の団長、アマノテルシエとヤミノミコタマの2人。ギルド団のプレイヤーたちは、突然姿を消してしまい、その役職も放棄された。城内には、指導者を待ち続ける2万体のNPCたちがいるが、彼らは自らの判断で行動することができない。正確に言えば、自らの判断で行動することはできるのだが、指導者がいない現状でどうすれば良いのか考えることを放棄しているようだった。これまでに与えられていた仕事。例えば給仕たちであればその仕事をし続ける。鍛冶職であれば、武器の管理ぐらいしかやらなかった。調理人はNPCたちに食事を提供するが食べものを必要としない彼らNPCに飯を提供するのはやりがいを感じられずにいた。また知能を持たず、命令通りに動くのみのモンスターたちが100万体、城の庁舎で待機している。
こんな状況であっても、団長であるアマノテルシエとヤミノミコタマは、今や城を守るためにあらゆる方法を模索していた。と同時に自分たちだけではどうにもならないことも痛感している。
アマノテルシエは、天使型のNPCであり、その外見はどこか神々しさを漂わせている。彼女の身長は180cm近く、長い白金色の髪が美しく、背中には輝く羽が広がっている。その羽根は繊細で優雅だが、その美しさの中には冷徹さも隠れている。彼女の顔はきりっと引き締まっており、どこか知性と威厳を感じさせる。しかし、その目に映るのは、責任感からくる焦燥感と、ギルド団が直面している困難への懸念だった。
アマノテルシエは、城のホログラムに映し出された現状をじっと見つめ、思案していた。彼女の心中では、今すぐにでも何らかの手段を講じなければならないという焦りが渦巻いていた。
「このままでは、すぐに城を攻撃される。」アマノテルシエは冷静に言った。「王2人、パウル様とベン様が戻るまで、我々が何とかしなければ。」
隣に立つヤミノミコタマは、少し疲れた様子でその様子を見守っていた。彼女は黒い髪を肩まで伸ばし、その髪がまるで闇の中に溶け込むような印象を与える。小柄でありながらも、彼女の身体は引き締まっていて、非常に魅力的だ。彼女の背中にも小さな黒い翼が生えており、その羽は強さを感じさせる一方で、しなやかに動く。
ヤミノミコタマは、アマノテルシエと比べると少し小さな身長だが、彼女の存在感は圧倒的だ。その可愛らしさの裏には冷徹な頭脳が隠れており、常に戦略的に物事を考えている。彼女は長い黒いドレスを身にまとい、優雅さと冷徹さを併せ持つその外見で、空気を支配していた。
「敵がダンジョンだと誤解して攻撃を仕掛けてくる可能性も高い。」ヤミノミコタマは静かに言った。彼女の声は穏やかだが、その裏には鋭い洞察力が感じられる。「だが、私たちには知恵と魔法がある。今はその力を最大限に引き出す時だ。」
2人の団長は、どちらも強い意志を持ちながらも、この状況に対しては無力感を感じていた。なぜなら、彼らはプレイヤーがいない現状では、ただの指導者に過ぎないからだ。モンスターたちの群れは、指示なしでは無力であり、動くことができない。何よりも、指示を与えられるはずのプレイヤーが突然いなくなり、NPCたちだけでは解決策を見出せない状況が続いていた。
「我々だけでは、どうにもならない。」アマノテルシエはため息をついた。「モンスターたちが動き出す前に、何とか手を打たねば。」
ヤミノミコタマは、冷静にアマノテルシエを見つめ、その美しい黒い瞳の奥に沈黙の決意を感じさせた。「我々にはまだ残された時間がある。まずは城の防衛体制を強化し、外部からの攻撃を迎え撃つ準備をしなければならない。」
そして、会議が続く中で、アマノテルシエはモンスターたちの配置を再確認し、ヤミノミコタマは監視と防衛の強化を提案した。
その他のNPCたちが何もできない中で、ただ静かに彼女たちの命令を待つしかないのだ。
城内のモンスターたちは命令通りにしか動けない。それらはただの道具であり、何千年もの歴史を持つ人間の知恵を知らない。だが、彼らの物理的な強さと、徹底した忠誠心はアマノテルシエとヤミノミコタマの計画において大いに役立つはずだった。
「我々が果たさねばならない責任は重い。」アマノテルシエは冷徹に言った。「だが、我々にはこの城を守る力がある。そして、パウルとベンが戻るまで、このギルド団を維持する方法を見つけ出すのだ。」
ヤミノミコタマは頷き、再び周囲に目を向けた。城の外の状況も、ホログラムで確認しながら、最終的な計画を練り始める彼女の姿は、まるで次の一手を打つべく冷徹に決断を下す戦士のようだった。
しかし、どこかで彼女たちも理解していた。どれだけ冷徹であろうとも、どれだけ準備を整えようとも、ギルド団が再び復活するためには、何かが足りない。それは、今、目の前にいない、2人の王たちの力であることを。




