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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
81/114

上書きする未来 1

「自分がこんな気持ちになるとは思っていなかった。これが好きになるってことかと思えばなにをしていいのかわからなくなった」

 自分が好かれることにはいやというほどに慣れていたこの男は、自分の気持ちのコントロールはできないみたいだった。


 「それで、なんで愛に嫌がらせになったの」

 「俺だけを、見てくれると思ったんだ」

 懺悔のように手を祈るように組んだ様子の桐谷は吐き出した。

 「嫌がらせをして。それで優しくするのが俺だけなら俺だけにすがってくれると思ったんだ。それなら彼女の笑みもほかのやつらがみることないとおもったんだ」

 その言葉は重くて、そして痛いものだった。独占欲、というものか。下手に周りの人間を動かせる能力を持っていたから余計にたちが悪い。

 「そしたら、彼女の世界は俺だけになると思ったんだ」

 「だから、嫌がらせをしたの?」

 桐谷は薄く笑う。

 「俺は、何もしていない」

 「は?」

 「俺自身は何もしていないよ。たとえ目的のためとはいえ、藤吉さんになにかをするなんてできないからな」

 自分で自分をあざけるように笑う桐谷の表情ははじめてみるものだった。

 「俺は少しだけ、そういう風に動くように誘導しただけ。俺自身は何もしていない。だから、ここまでなるとは思ってもいなかった」

 ばかだよなぁとつぶやいた言葉に顔がゆがむのがわかる。

 「馬鹿な上に最低だ」

 思っているよりもずいぶんと低い声が出た。桐谷の顔は情けないようにゆがんでいた。

 「そんなことをしないといけないほどあんたは自分に自信がない男だった?しかも手を汚すのはほかの人って?自分じゃ何もできないんじゃない」

 馬鹿にするように出た言葉に桐谷はぐっと唇をかみしめていた。

 「あぁ、そうだよ!」

 叫ぶように言った桐谷の言葉は泣いているようだった。

 「そうだよ!俺は自分に自信なんてもとからねぇよ!俺はそこまで何もかもできる人間じゃない!特別だと思えば思うほどに、どうしていいのかわからなくなるんだ!そういう相手にだけは計算でなんて接することができなくなる」

 くっそ、言わせんなとつぶやいた桐谷が顔をうつむかせる。

 「俺に自信なんてもんはもとからねぇよ」


 吐き出した言葉に落ち込む桐谷に溜息をもらした。

 「ねぇ、桐谷。どんなに愛を好きでいても、愛から愛らしさを奪ったのは桐谷だし、愛から自信もなにもかも消した原因は桐谷だよ。そんな自分が選ばれるなんて、都合のいいことを考えていたらだめなんじゃない」

 「そうだよ。わかっているよ。だからとめたじゃないか」

 くしゃりと前髪をにぎっていったその言い訳のような言葉にイラつきが生まれる。

 「止めたからいいってわけじゃないでしょう。桐谷が傷つけたのは愛だけじゃない。いろんな人の気持ちを踏みにじったのだといい加減、気が付きなよ!」

 「わかっている!そんなことは言われなくても、わかってるよ」

 だから。と告げたその目は光をなくしていてゾッとした。

 「だからお前がいてよかったよ」

 「どういうこと?」

 「俺がいなくてもお前という友人はいるだろ」

 不穏さを感じる言葉に桐谷の腕をつかむ。消えてしまいそうだと感じたその腕は思いのほか熱を持っていた。

 「お前も知っての通り、俺は最低な人間だ」

 「誰もそこまで言っていない」

 そういうとそうか?と悲しそうに笑う。

 「俺の最低な性格も、この物事を損得で考えてしまうところも全部、もうなおしようがない」

 「それも含めて桐谷でしょう?」

 「なぁ志乃」

 あきらめたような声が聞こえた。

 「なに?」

 「たとえば自分のこの性格で誰かも死に追いやったとしても、それも含めて俺だといえるか?」


 その言葉は後悔と絶望を感じさせた。


■桐谷

情緒不安定

■志乃

何言っているのだ



ストックが切れて直接入力しました。ここまでこじれるはずはなかったのに、桐谷ぃ。

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